関東圏で長年にわたって繰り広げられている戦いがある。それは「千葉県と埼玉県、どちらが上か」というものだ。ともに首都・東京のベッドタウンである両県。人口、教育レベル、所得レベル、地域の魅力、幸福度を比べながら、どちらの県が上なのか考えていこう。
人口で比較:埼玉県に軍配
まず、分かりやすい比較項目として「人口」を比べてみよう。千葉県によると、2021年6月1日時点の総人口は627万8,933人だという。一方で埼玉県はどうだろうか。埼玉県の公式サイトによれば、2021年6月1日時点の総人口は734万3,791人とある。
<人口の比較>
つまり、埼玉県の方が人口は106万4,858人多い。人口では埼玉県に軍配が上がった。
教育レベルで比較:埼玉県に軍配
続いて、教育レベルで比較してみよう。教育レベルに関してはさまざまな調査結果があるが、この記事では2019年度に実施された全国学力テストの正答率で比較してみる。ちなみに全国学力テストは、小学校6年生と中学校3年生を対象に文部科学省が実施しているものだ。
2019年度に実施された全国学力テストの正答率は、千葉県は63.25%、埼玉県が63.83%となっている。
<全国学力テストの正答率>
結果、わずかであるが埼玉県が千葉県を上回った。ただし、全国的にみれば、埼玉県は全国20位、千葉県は全国31位と、ともに順位は決して良くなく、正答率が70%に近い秋田県や石川県などと比べると、どんぐりの背比べと言ったところだ。
所得レベルで比較:埼玉県に軍配
人口、教育レベルの次は、「所得レベル」で比較してみよう。ともに、東京のベッドタウンであるため所得はある程度高そうだが、実際にはどちらが上なのだろうか。
比較する際のデータとして、企業口コミ・給与明細サイト「キャリコネ」が2019年4月に発表した「年収が高い都道府県ランキング」を参考にする。その結果、千葉県は382万円、埼玉県は392万円となっている。
<平均年収>
所得レベルの比較でも埼玉県に軍配が上がった。平均年収は、千葉県よりも10万円多い。全国的にみると、埼玉県が9位タイ、千葉県が13位タイとなっている。意外に感じるかもしれないが、首都圏ではない静岡県や長野県などよりも低い数字となっている。
地域の魅力で比較:千葉県に軍配
続いては、地域の魅力で両県を比較してみよう。参考にする調査は、民間調査会社のブランド総合研究所による「地域ブランド調査2020」だ。この調査の中で「都道府県魅力度ランキング」がまとめられており、両県の魅力の比較に役立つ。
<都道府県魅力度ランキング>
その結果、千葉県は21位(前年18位)、埼玉県は38位(前年41位)で、今回の記事における比較で初めて千葉県に軍配が上がった。ちなみに、千葉県は「居住意欲度」では全国9位と高い。
幸福度で比較:千葉県に軍配
最後に比較するのは「幸福度」だ。実際のところ、人口の多さや所得の多さ、教育レベルなどよりも、いかに幸福かということの方が人間にとっては重要なことかもしれない。
幸福度の比較で参考にするのは、先ほどと同じくブランド総合研究所によるデータだ。「第3回地域版SDGs調査2021」の中で「都道府県の幸福度ランキング」がまとめられている。調査では「あなたは幸せですか」と住民に聞き、5段階で評価してもらった結果を比較している。
<都道府県の幸福度ランキング>
千葉県は30位(前年42位)、埼玉県は41位タイ(前年29位)という結果で、「魅力度」に続いて千葉県に軍配が上がった。ただし、両県とも全国的には決して順位は高くない。
結論は「ほぼ引き分け」
この記事では5項目で千葉県と埼玉県を比較してみた。以下が結果だ。
結果を眺めてみると、数字で弾き出される項目については埼玉県が勝っているものの、目には見えにくい「魅力度」や「幸福度」では千葉県が上という結果となっている。いずれにしても千葉県も埼玉県も一長一短あり、実際には甲乙付けるのは非常に難しい。
もちろん、どちらの県に住むかを考える際にさまざまな項目を比較することは重要だが、どちらが上かという問題でお互いが批判合戦を繰り広げても不毛だ。大事なのは、相手の良い部分をお互いが認め合うことではないだろうか。
と、最後に堅苦しく書いてしまったが、結論は「ほぼ引き分け」と言って良さそうな結果だ。千葉県民の皆さん、埼玉県民の皆さん、納得していただけるだろうか?
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)