税理士が作った経営者の教科書,節税編,社用車,年払い
(写真=Dmitry Kalinovsky/Shutterstock.com)

社用車

まず、「自家用車を社用車にする節税」について紹介します。

名義が個人名義の車両でも、事業で使うことがあれば、社用車にすることができます。

社用車にすれば、減価償却をして車の取得価格を経費にしたり、保険料やガソリン代、高速代なども経費で落とせるようになります。

場合によっては、かなり大きい経費が計上できるでしょう。

ただし、そのためには何点か注意しなければいけないことがあります。

まず名義についてですが、できれば名義も法人名義で登録し直すことが望ましいです。

ただ実際の税務調査では税務調査官によりますが、起業直後の1台目の車についてはあまり名義にうるさくないのが現状です。

法人名義にすると自動車保険(任意保険)の保険料が高くなることが多いですので、名義を変えるかどうかはベンチャーサポートの担当と話合って決めてください。

また、できれば個人と法人の間で、「売買契約書」を作成することも必要です。

「売買契約書」があれば税務調査の現場で「名義が個人だから認めない」と言われたときに、「社用車」という事実を認めされる武器になります。

一番注意しなければいけないのが、法人の車両の受入価額です。

個人で購入したときの金額ではなく、個人での取得後に減価償却をして、その償却後の金額を法人に計上してください。

なお、個人で減価償却する場合の耐用年数は、通常の耐用年数の1.5倍として計算します。

ちなみによくいただく質問で、「社用車は4ドアでなければダメなんですか?」というのがあります。
たしかに4ドアにしておけば無難ですが、絶対に4ドアしかダメ、というわけではありません。

あくまで「社用車」ですので、2ドアで営業に行ってもおかしくないような業種の社長ならば問題有りません。

服飾デザイナーさんや芸能プロダクションの経営をされている方なんかは、社用車としても税務署と戦えます。

最後に車関係の節税をもう一つ。

今から車を買うのであれば新車よりも中古車、それも4年落ち以上の中古車が節税上は有利です。

理由は減価償却のスピードの違いです。

新車であれば、6年間かけて経費で落としていきます。

ですので、新車を買っても、全額を経費で落とせるのは6年後なので、今すぐの節税にはあまり効果がないということになります。

しかし、中古車の場合は扱いが変わります。

もともと、「6年」という法定耐用年数は、国が「6年くらいは使えるだろう」ということで設定したものです。

しかし中古車は購入時点である程度使っているはずなので、その先6年間も使えないかもしれません。

そこで、中古車には、「耐用年数の特例」が認められています。

この特例を使った場合に、一番節税に有利なのが「4年落ち」の車なのです。

4年落ちの車なら、1年で全額が経費になります。

ただし、事業年度の中途で購入した場合、購入日から事業年度の終わりまでの月分しか経費にならないため、決算間近に購入した場合は(その年度の)節税効果は薄くなります。

「今期は絶対に利益が残る」ということがわかり、節税のために中古車を購入しようと思われるのであれば、できるだけ早めに買うのが得策です。

今回は社用車を使った節税についてご紹介をしました。

社用車は少し専門的な処理も必要になりますが、節税効果も大きい方法です。

年払い

ここからご紹介するのは、「年払いを利用した節税」についてお伝えします。

年払いの節税は、将来の投資につながるような節税の一つです。

家賃や保険料、サーバー代、リース料など、毎月の支払いが継続することが契約書で決まっている経費は、期末に「翌1年分を一括で前払いする」ことで、全額を経費にできます。

つまり、その事業年度内に、今期分と来期分の2年分を経費にできるということです。

この節税の優れた点は、事前の準備が不要だということです。

つまり、利益が出そうなことが期末ギリギリにわかった場合でも、その段階からすぐに対応できる、数少ない節税なのです。

ただし、注意すべき点が2つあります。

まずは、実際に、1年分のお金を一括で支払わなければいけないということです。

これは当然のことのようですが、しっかりと意識しなければいけません。

1年分の経費を前払いするのですから、大きな資金の流出になります。

節税に有効だという側面ばかりを意識していると、逆に、思わぬ資金繰りの悪化に陥る可能性もあるのです。

もう1点は、それ以降も毎年、1年分の前払いを継続しなければいけないということです。

つまり、翌年は利益が出ていなかったり資金繰りが苦しかったりしたとしても、同じ時期に1年分を前払いしないといけないのです。

税法では「何年続けないといけないか」は規定されていませんが、少なくとも3年は続けておきたいところです。

もし1年で年払いを止めてしまった場合、税務調査で年払い分の経費を「前払費用」ということにされてしまい、翌年の経費にするように指摘されます。

ですのでこの利益が今年1年だけで、翌年はどうなるかわからないのであれば、十分に検討しないと翌年に苦しむことになるのでご注意下さい。

もしどうしても1年前払いが不安なときは「半年前払い」も可能です。

この場合も「半年前払い」を毎回続けていかなければいけませんが、一時のキャッシュアウトは抑えることができます。

あと税務調査では「年払いをした証拠」を求められます。

通帳を通して支払うのは基本ですが、できれば年払いをする旨を謳った契約書があればベターです。

すくなくとも年払がわかる請求書は発行してもらうようにしましょう。

年払はキャッシュアウトを伴うというデメリットもありますが、「いずれ支払わなければいけない経費を先に払うだけで節税になる」という点で、ムダのない優れた節税方法と言えるでしょう。

投資型の節税の基本ですので、利益が出たときには、まず検討してみてください。(提供:ベンチャーサポート税理士法人