帝国データバンク(TDB)の「事業承継に関する企業の意識調査」(2021年5月)において、事業承継を「経営上の問題」と認識する企業が7割近く(67.4%)に上る結果が公表されました。調査はTDBの景気動向調査に合わせて、2021年5月に実施されました。全国2万3724社のうち、有効回答となった1万1242社(回答率47.4%)の数値を基にしています。
「最優先の経営上の問題」が1割超え
事業承継への考え方で「最優先の経営上の問題と認識している」が11.9%で、「経営上の問題のひとつと認識している」(55.5%)と合わせると、計67.4%が事業承継を経営上の問題として認識していました。一方で「経営上の問題として認識していない」が21.6%、「分からない」は11.0%でした。
業界別では建設、製造、卸売が7割前後、規模別では中小企業も7割台
業界別の割合でみると、経営上の問題として考えている業界は「建設」が71.7%と最も高く、「製造」(70.0%)、「卸売」(68.2%)が続きました。また従業員数別の割合では、「6~20人」が72.9%で、「21~50人」も70.9%と7割を超えました。「1000人超」は33.6%と3割台にとどまり、従業員数が少ないほど、事業承継を経営上の問題と捉える傾向となりました。
事業承継の円滑化には意識共有と早期の準備が必要
複数回答で求めた事業承継を円滑に行うために必要なことについて、「現代表(社長)と後継候補者との意識の共有」が最多の43.5%で、「早期・計画的な事業承継の準備」が36.2%、「早めに後継者を決定」が33.9%となりました。
税制改革も不可欠
自由回答では「株の引継ぎなど相続が発生した際の税金納付が大きな経営課題となる」(ごみ収集運搬、北海道)のように、贈与税や相続税といった税負担が事業承継のハードルになっているとの意見が多数寄せられたそうです。帝国データバンクは調査結果から、日本企業を支える中小企業を中心に事業承継は喫緊の課題となっており、円滑な事業承継には、承継に向けた意識共有や事前準備に加えて、より使い勝手のよい税制へのさらなる見直しが不可欠とまとめています。