【第24回】中小企業で大卒者を採用することが困難な場合に打つべき施策とは?
(画像=THE OWNER編集部)

THE OWNER特別連載「経営者のお悩み相談所 〜経営コンサルタントが一問一答!〜」第24回目は「社員数が20名弱の中小企業で、大卒者を採用することが困難な場合、どのような施策を打つべきでしょうか?」という経営者のお悩みについてお答えします。

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【今回のご質問】
社員数が20名弱の中小企業で、大卒者を採用することが困難な場合、どのような施策を打つべきでしょうか?

2020年の大学進学率が54.4%(文部科学省による令和2年度学校基本調査より)となり、大学卒が「普通」になってきている現代において、大卒者を採用することは最低限優秀な学生を採るために必要な戦略だと考える向きもあります。では、大卒者に選ばれるための施策にはどんなものがあるのでしょうか。

岩下 廉(株式会社ポムスタディ 代表取締役社長)
岩下 廉(株式会社ポムスタディ 代表取締役社長)
【略歴】製薬会社、国家公務員総合職での勤務を経て、ITベンチャー企業でディレクターを務める。20年1月より株式会社ポムスタディを設立して独立。
【学歴】東京大学 農学部 国際開発農学専修 卒
【資格】TOEIC970、将棋アマチュア参段
【株式会社ポムスタディ】マーケティングを中心としたコンサルティング事業および教育学習支援事業を推進。コロナ禍の状況下でも、増益増収を達成中。
HP:https://pom-study.com
Mail:info@pom-study.com

大学生(新卒)の就活事情とは?

大卒者を採用するという目線で考えるとき、まずはその対象となっている大学生の就職活動を理解せねばなりません。さて、最近の大学生がどのようなことを考えて、どのような方法で就職活動をしているかご存知でしょうか。

厚生労働省が公開している「大卒者等のインターネットを通じた就職活動に関する調査」結果は、新卒の大卒者の採用に対する考え方を知る上で手がかりになる資料です。上記資料によれば、就職先の企業を知ったきっかけとして「昔から知っていた」が約43%、「説明会等で見つけた」が約35%、「サイトで見つけた」が約32%と上位を占め、次に「友人、先生、親などの勧め」が続いています。

つまり大学生は、自分が知っている企業か、説明会で接点があった企業、ネット検索や就活サイトで見つかる企業を就職先として選ぶ可能性が高いということがわかります。しかしよく考えてみると、学生が知っている企業というのはコマーシャル等を豊富に打つことのできる大企業である可能性が高いです。また就職説明会はブースを借りるだけでも最低およそ100万円はかかりますので、説明会で見つけられる企業の中にも中小企業は少ないと言わざるを得ないでしょう。サイトで見つけたというのは新卒生用のネット媒体での話であり、わざわざ会社の採用ホームページを一つ一つ検索して見つけるわけではないことに注意しましょう。

多くの大卒者は、すでに自分が知っていたり、信頼の持てる就職説明会や就活サイトで見つけて魅力的だと感じた会社を最終的な就職先として選んでいることがわかります。

新卒の大学生を狙うための施策を考える

新卒の大学生は大企業を含めて多くの企業が狙っており、また大学生側もできれば大企業に就職したいという潜在的な希望を持っているので、一般的に中小企業がターゲットとするには向いていないかもしれません。また新卒生は高校生であっても大学生であっても、社会での経験がありませんので、教育コストが大きくなります。これも即戦力が欲しい中小企業にとってはマイナスになりえる点です。以上のようなデメリットを承知の上で、それでも新卒の大学生が欲しいということであれば以下のような方法を試してみることをおすすめします。

(1)地域の合同説明会に出展する

大手の人材紹介会社が開催する合同説明会は一般的に費用が高く、また知名度の高い大企業が多く参加するため、中小企業が戦うには不利な状況となります。一方で、地方自治体が主催・共催していて、UターンやIターンを意識させることが念頭にある合同説明会の場合、企業の負担する費用も比較的安価であることが多いです。また参加する学生側も、都会の大企業だけではなく、地元の小さな企業を見てみようという意志があるので、中小企業にも目が向けられやすいという特性もあります。

(2)リファラル採用に挑戦する

リファラル採用というのは、いわゆる縁故採用のことです。日本語で縁故採用と言ってしまうとどうしても不正や不公平などのマイナスなイメージがくっついてきがちですが、リファラル採用は既に自社に馴染み、企業のビジョンを理解している従業員から、適切だと思う人材を紹介してもらうことを指します。そうすることで採用コストが削減でき、またミスマッチを減らすことができ、企業にプラスの効果をもたらします。小さな企業ほどまずはリファラルで採用をできないか考えるべきだと思います。

(3)就活サイトへの掲載に挑戦する

広く様々な層の学生を候補者として集めたいということであれば、就活サイトへの掲載を考えるのも一つの手でしょう。ただし、掲載には一般的に100万円〜300万円程度の費用がかかりますので、社内で欲しい人材特徴などを精査して適切な掲載媒体を選ぶようにしましょう。

既卒者の転職活動事情とは?

一言で大学卒と言っても、新卒生と既卒者(※)を採るのでは意味合いが全く異なります。(※既卒者は一般的には就活浪人をしている者を指すことが多いですが、今回は新卒と区別するために文字通り大学卒業者をすべて既卒者として考えます。)企業ごとの方針にも依りますが、私は中小企業であれば社会人経験のある既卒者を採用したほうがリスクが少ないのではないかと考えています。なぜなら既に社会人経験がある彼らは即戦力になり、ある程度どのようなことをするのか目星を付けた状態で入ってくるので、就職後のミスマッチも起こりにくいと考えられるからです。

実は既卒者の中にも様々な種類があります。新卒から3年未満に退職して転職活動を行う「第二新卒」と呼ばれる層や、キャリアアップを目指して転職する層、より良い労働環境や福利厚生を目指す層などが存在し、目的も様々です。共通しているのは既に社会人経験をしており、何らかの動機で今の仕事を辞めて新たな環境にチャレンジしたいと考えているという点です。

既卒の大学卒を狙う施策を考える

一般的に転職を行う際に多くの人が気にするのは年収面です。大卒でもそれは同じで、多くの人ができれば現職よりも給料が下がらない環境で働きたいと考えています。中小企業が既卒者を相手に採用活動する際にネックになるのは年収面であることが多く、やはり条件だけで比べられると大手の方が高い給与を提示できるために、分が悪くなりがちです。

これに対して中小企業側としては、やりたい仕事に対する裁量や、経験を身につけられる環境を保証してあげることで、単純な給与・福利厚生勝負とならないようにしなければなりません。また現在以上の年収や待遇を求める層は、最初から相手にしないというのも1つの戦略です。相手と求めていることが違えば、仮に入社までこぎつけたとしてもミスマッチですぐに辞めてしまうリスクが高いです。中小企業としては、やりがいや経験を求めており、比較的安価で採用できる若手の人材を採用するべきでしょう。

また意外なところですが、採用のスピード感を高めていくということも既卒者の採用においては重要です。既卒者の中には、前職の有給期間など限られた期間で転職活動を行う人も多くいます。そのため、ベストでなくともある程度希望に近い会社から採用の内定が出ればそれに応じる人も少なくありません。採用決定は企業側にとっては非常に悩ましい選択ですが、採用業務の優先度を高めて、できるだけ早く転職者へのレスポンスを行いましょう。

まとめると以下のようになります。

(1)転職者に年収対比だけで判断されないように、仕事の内容や裁量、環境などをアピールする。同時に転職者側が年収についてのこだわりが強い場合は、採用は難しいと考えて諦める。

(2)経験豊富なベテランではなく、チャレンジ精神のある若手を採用する。

(3)転職はスピード勝負です。レスポンスはできる限り早く行いましょう。

入社後の育成制度も充実を図ろう

上記に記載したような施策を実施して、大卒の社員が採用できたとしても会社としてはそこから働いてもらうことから関係性がスタートします。やっぱり入ってみたら全然だったと思われないように、入社後の育成制度や、入社時に交わした約束事などを守れる環境も同時進行で整備しておきましょう。

今回の話を整理します。新卒・既卒の区分もありますが、大卒者を採用する戦略は大まかに以下の6つです。

(1)地域の合同説明会に出展する。

(2)リファラル採用に挑戦する。

(3)就活サイトへの掲載に挑戦する。

(4)仕事内容や裁量、環境などをアピールする。

(5)チャレンジ精神のある若手を採用する。

(6)転職者へのレスポンスはできる限り早く行う。

以上です。最後までお読み頂きありがとうございました。

文・岩下 廉(株式会社ポムスタディ 代表取締役社長)

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