2018年度の国内受託臨床検査市場は前年度比1.6%増の5,650億円
~微増推移傾向の受託臨床検査市場、予防医療観点での検査需要が拡大~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、2018年度の国内受託臨床検査市場を調査し、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
1.市場概況
主要臨床検査センター各社の決算状況や中小センターの経営状況などから、2018年度の国内受託臨床検査市場規模(受託事業者売上高ベース)を前年度比1.6%増の5,650億円と推計した。市場拡大は、診療報酬改定を背景とした受託単価下落の影響はあるものの、それを上回る医療機関等からの外部委託検査数増、需要増加に因る。
2.注目トピック
健診、各種感染症検査、個別化医療進展に伴うヒト遺伝子検査などが成長要因
受託臨床検査市場を検査分野別にみると、医療機関および健診施設等からの検体検査需要の安定増加、各種の感染症検査、個別化医療進展に伴うヒト遺伝子検査などが成長を支えている。予防医療の重要性が問われる中で、疾病の早期発見等につながる検体検査に目を向ける傾向は強まっており、感染症関連では風疹ワクチン接種に伴う抗体検査需要などが新たに発生しており、がん治療分野では個別化医療のためのヒト遺伝子検査などが増加し、大手の受託臨床検査事業者の中核事業となってきている。
3.将来展望
予防医療面を意識した臨床検査が安定的に行われていることなどから、受託臨床検査市場はここ数年、微増推移を予測する。しかし、今後、国内における人口動態や医療費抑制の影響を鑑みると、中長期的には飽和感のある市場になる見込みである。
また、受託臨床検査市場では上位企業への集約化は進んでいるものの、企業数の多さ、過剰設備、集荷面の非効率性などを指摘する向きはあり、今後もう一段の企業再編が進む可能性はある。その他、受託臨床検査事業者では人材採用なども課題となっており、業務効率化のための情報システム投資、企業ブランド力向上などが勝ち残りのポイントになると見る。病理診断支援分野等では、特にAI(人工知能)の活用が進展する見通しである。