食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

2021年3月2日、味の素冷凍食品が国内自社工場のすべてのフリーザー(凍結機)の自然冷媒への転換を、同月末に完了すると発表した。味の素冷凍食品は2000年に脱フロン化の取り組みを開始し、20年かけて転換を進めてきた。

味の素冷凍食品ではフロン保有量の96%がフリーザーだったという。保管倉庫の対応も必要だが、冷食メーカーにとっては凍結機の転換が中心課題といえる。同社の例から自然冷媒への転換における課題について見てみよう。

第1の課題は「費用」だ。味の素冷凍食品では2000年当時、9工場47基のフリーザーを保有していたが、すべて自然冷媒に切り替えるには約140億円の費用が見込まれたという。同社ではラインの再編や設備能力の向上によって、7工場27基に集約、政府補助金なども活用して、総投資額を90億円まで圧縮した。

第2の課題は「冷媒漏洩による環境リスク」だった。当初の凍結機はアンモニア冷媒を循環させる装置だったため、アンモニアの使用量が多かった。アンモニアの漏洩による地域環境や作業員の安全を守るため、警報器を設置し、施設内で漏洩した場合の浄化放出の仕組みを備えたという。もっとも自然冷媒機器も当初のアンモニア単独から、アンモニアと二酸化炭素の併用型に、さらに空気冷媒による省エネ機器へと進展がある。味の素冷凍食品では現在、空気冷媒型が全体の10%ほど、アンモニア・二酸化炭素の併用型が75%を占める。

第3の課題が「安定供給」。供給を続けながら設備を更新する必要がある。同一商品を複数工場で生産できるようにしたほか、施工ラインにおいて隣接ラインのフリーザーを共用したり、既存フリーザー横に新規フリーザーの設置場所を確保するなど、工夫した。

日本冷凍食品協会では「冷凍食品業界における第二次環境自主行動計画」において、フロン問題については「2020年までにHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン・フロンの一種)の比率を50%程度まで引き下げる。2030年までに全廃する」と目標を設定している。

日本冷凍食品協会が公表している追跡結果によれば、2019年度はフロンのHCFCの割合は55.6%で前年度より2.4ポイント減少した。一方で自然冷媒も17.9%で0.3ポイント減少しており、増えたのは代替フロンHFC(ハイドロフルオロカーボン)で、26.2%、2.5ポイント増だった。協会ではHFCが増えたのは、コスト面から自然冷媒への転換が難しいためだと見ている。

ただ、自然冷媒の比率が減少したのは、日本冷凍食品協会が凍結機・冷蔵庫の出力=kW数を基準に比較していることにも原因がある。

日本冷凍食品協会によれば、自然冷媒を導入台数で見ると2019年度は6,732台で、前年度よりも475台増加している。にもかかわらず、なぜ構成比が減少したのか。「脱フロン省エネ型自然冷媒機器」と言われるように、自然冷媒機器は冷却効率が高い。自然冷媒1基で2ライン分の凍結を行うこともあるという。つまり、自然冷媒ではkW数は相対的に小さくなり、切り替える際の導入台数も減少する傾向がある。この点がHFCへの切り替えとは異なり、相対的に自然冷媒の構成比が減少するという結果になった。

一般的には出力が大きければ使用するガスも多いと推測できる。工場によって凍結機の規模もさまざまであることから、台数ではなく、出力で比較することに合理性は見出せる。ただし、上記のような自然冷媒機器の特性を念頭に置いておく必要はあるだろう。

他社の状況はどうか。ニチレイフーズは2019年度に約50%を転換しており、2021年度に75%を目指すとしている。また2017年に工場再編を発表したテーブルマークは再編の一環として設備を更新する中で、自然冷媒の構成比は高まっている状況だ。

〈冷食日報2021年3月22日付〉