資金調達,クラウドファンディング,ポイント
(写真=ベンチャーサポート税理士法人編集部)

「クラウドファンディング」は、国内でも徐々に市民権を得つつある、今までとは全く違った形の資金手段です。

最近は、経済新聞や雑誌などで取り上げられることも増えた「クラウドファンディング」、名前は知っているという方は少なくないでしょう。

最近ではお笑い芸人キングコングの西野亮廣さんがローンチしたクラウドファンディングが2億円を上回る資金を集め、NY原画展など8件に及ぶエンターテイメント活動を実現し話題となっています。

ちなみにクラウドファンディングの調達手法は、返済義務や対価提供の有無によって3つのタイプにわかれます。

企業の資金調達といえば金融機関による融資という固定観念に縛られていることもあり、金融機関を介さない資金調達に抵抗感を覚える人も少なくないでしょう。

実際に試してみようと思っても、クラウドファンディング事業者や調達ノウハウに関する信頼できる情報も乏しく、二の足を踏んでしまう方も多いのかもしれません。

また、思い切って試してみたのに思うようにコンタクトが集まらない、そんなケースも想定されます。

今回の記事では、起業の資金調達手段として最近注目を浴びているクラウドファンディングの概念を紹介すると同時に、3つの調達タイプとそれぞれの特徴、選択にあたってのポイントを解説します。

クラウドファンディングとは?

クラウドファンディングの起源

クラウドファンディングは、クラウドファンディング事業者の提供するWEBプラットフォームを介した、金融機関によるコミットメントを介さない、金融史上全く新しい形の資金調達および出資方法です。

クラウドファンディングは「群衆」Crowd、「資金調達」Fundingを組み合わせた造語です(インターネットのコンピューターサービスを意味するCloudとは綴り違いです)。

現代ではWEBを通じた資金募集的な使われ方をしますが、その歴史は古く17世紀まで遡ります。

諸説ありますが、書籍編集者のジョン・テイラー氏が出版への資金募集に当たり、出資者に本へ署名する権利を提供したことが起源とする説が有力です。

クラウドファンディングで起業のハードルが低くなる

優れた技術ノウハウ・独自性の高いビジネスモデル・有望な販路や商圏など明るい展望が見込めるのに踏み切れない、そんな起業予備軍を思いとどまらせているのは何でしょう。

ボトルネックとして挙げられるナンバーワンが「資金」です。

実際、起業家の8割は自己資金のみでスタートを切っています。

いくら金余りで貸出先に困っている金融機関と言えど、何の実績もないスタートアップ企業においそれと融資はしてくれません。

さまざまな公的補助金や、ベンチャーキャピタルからの出資はさらにハードルが上がります。

かなりハイレベルの強み、たとえばIT・バイオ・創薬など先端技術ノウハウでも持っていれば別ですが、そうでなければまず門前払いです。

そんな起業家予備軍にとって、期待の資金調達手段がクラウドファンディングです。

最初のファンディング事業者「アーティストシェア」が運営を開始したのが2001年、15年の年月を経て世界市場規模は1兆円超まで膨らみました。

日本国内においても300億円程度まで伸びました。

地銀だけでも20兆円を超える融資残高から見れば規模は小さいですが、将来の成長性に期待をつなぎたいところです。

出資者との絆づくりが結果として資金調達につながる

資金調達の面ばかり注目を浴びがちなクラウドファンディングですが、もっと大切な側面を忘れてはいけません。

クラウドファンディングのプラットフォームを通じて出資を募る場合には、プロジェクトの理念や戦略そして持続可能性などをアピールし、多くの共感を集めなければいけません。

それは、自らのビジネスに対するファンや顧客を増やすマーケティング活動でもあります。

出資者側の動機はさまざまですが、出資者の多くはプロジェクトに「ビジョン」や「意義」を感じたいのです。

そしてプロジェクト起案者と一緒に、事業の実現と成功をともに喜びたい、そんな風に考えているのです。

それはもう、お金を儲けるだけの領域を超えています。

資金調達手法の3種類

クラウドファンディングの調達手法は、下記の3種類です。

①寄付型
最大の魅力は、償還義務が課されない点です。

できれば寄付型を選びたいところですが、プロジェクトに高い公益性(海外の貧困農村に井戸を掘る・マイクロプラスチックのリサイクル・再生可能エネルギーの普及など)が認められない限りは難しいでしょう。

②金融型
金融型にも出資タイプと融資タイプの2種類あり、融資タイプには償還義務が課されます。

出資タイプの場合は、償還義務の代わりに利益の分配や議決権の問題が生じてくるので、その辺りのコントロールが過大になってきます。

③購入型
ファンディングの対価を財貨やサービスの形で提供するのが購入型です。

資金を調達するだけでなく、同時にファンを増やしていくマーケティング施策としても有効です。

金融型の場合は、充分なキャッシュフローが得られるビジネスモデルなのかよくよく検証を重ねなければいけません。

購入型の場合は、対価として提供する財貨やサービスの魅力度がキーポイントになります。

クラウドファンディング事業者の業界動向等

上場企業も事業者として参入中

シェアとしては、業界最古参・最大手の「Readyfor」が実績的にも頭1つ抜けた存在です。

新興プロジェクト数は8,000近く、支援金は60億円近くに達しています。

代表の米良はるか代表は東大卒でありかつスタンフォード大も修了、箔としては申し分ありません。

ソーシャルレンディング事業では複数の地方銀行や県庁さらには大手旅行代理店と提携、事業者としての信頼感を醸成しています。

こうしたブランドを、マスコミが放っておくはずもありません。

テレビ東京「カンブリア宮殿」・NHK「アサイチ」・テレビ朝日「ナニコレ珍百景」といった人気メディアや、日経ビジネスといった著名媒体への露出も盛んです。

大手メディアも、食指を動かしています。

日本経済新聞が主催する購入型クラウドファンディングの「未来ショッピング」は、経済メディアの情報力・ネットワークに支えられた信頼性の高い掲載コンテンツが人気です。

さらには日用品大手のライオンがクラウドファンディング「マクケア」を立ち上げ、次世代型製品の研究開発に必要な資金調達に活用するなど、大手企業の参入も活発になってきています。

事業者をどこにするか迷うところですが、各事業者のサイトポリシーやコンテンツで提供しているサービスやキャンペーン企画、プロジェクト起案者へのサポート体制(情報拡散支援や適切なアドバイス)など、自分と相性が合うところを選べばそれでよいのです。

忘れてはいけないネガティブチェック

ただし、忘れてはいけないのがクラウドファンディング事業者に対するネガティブチェックです。

成長著しいクラウドファンディング業界ですが、一部には問題を起こしている、あるいは既に撤退してしまった事業者も少なくありません。

例えば、資金の不正流用疑惑や虚偽の貸し付け勧誘を引き起こし、2度の行政勧告処分を受けたうえに最終的には関東財務局より免許を取り上げられた運営会社もありました。

その他、虚偽説明や償還金の延滞と集団訴訟騒ぎ(関東財務局より行政勧告処分)、クラウドリースによる延滞・貸し倒れと、クラウドファンディング事業者によるトラブルも起こっています。

出資者にしても出資を募る側にしても、こうしたリスクを十分に認識して、事業者選定には慎重を期すことをおすすめします。

まとめ

新しいタイプの資金調達手段クラウドファンディングの登場は、起業の促進とベンチャービジネスの活性化につながる起爆剤として大いに期待されています。

一方で、金融機関による審査を介さないので、資金を融資する側に個人が一切の責任を負うことになります。

クラウドファンディング事業者も、近年は不適切運営を引き起こしたり、閉鎖に追い込まれたりと今一つ信頼が置けないのが実情です。

クラウドファンディングを通じてレンディングするにしても、資金を募るにしても、相手との信頼関係をいかに築くかが成功のポイントになりそうです。

とくに出資を募る側としては、いかに魅力あるビジネスプランを描けるか、それをWEBに巧みに発信できるかが大切になってきます。

そのためにはビジネスプランそのものも磨き上げ、説得力のあるものに育て上げなければいけません。

そういった意味で、クラウドファンディングによる資金調達は、ビジネスプランをブラッシュアップする良い機会なのかもしれません。(提供:ベンチャーサポート税理士法人