「外資系企業」に働きがいランキングで「日本企業」がボロ負けの理由
(画像=aijiro/stock.adobe.com)

調査機関の「Great Place to Work Institute Japan」(GPTWジャパン)は2021年2月、「日本における『働きがいのある会社』ランキング」の2021年版を発表した。上位企業は外資企業ばかりで、働きがいの面で日本企業は歯が立たない状況となっている。なぜだろうか。

2021年版ランキングの結果は?

「日本における『働きがいのある会社』ランキング」は毎年実施されているもので、従業員1,000人以上の「大規模部門」、従業員100〜999人の「中規模部門」、従業員25〜99人の「小規模部門」で、それぞれ企業が順位付けされている。

この記事ではこのうち、従業員1,000人以上の「大規模部門」の結果を参照してみる。以下がランキングだ。

<大規模部門ランキング>

1位シスコシステムズアメリカ系
2位セールスフォース・ドットコムアメリカ系
3位ディスコ日本企業
4位プルデンシャル生命保険アメリカ系
5位モルガン・スタンレーアメリカ系
6位アメリカン・エキスプレスアメリカ系
7位レバレジーズグループ日本企業
8位Works Human Intelligence日本企業
9位DHLジャパンドイツ系
10位日本アイ・ビー・エムアメリカ系

※出典:「日本における『働きがいのある会社』ランキング」

トップ10の外資系企業は実に7社に上り、1位と2位にはネットワーク機器大手の米シスコシステムズと企業向けソフトウェア大手の米セールスフォース・ドットコムがそれぞれランクインしている。ともにアメリカ系の外資企業だ。

つまり、外資系企業で働く人の方が日本企業よりもやりがいを持って働けているという結果だ。なぜこのような結果になってしまっているのか。

働きがいが高い企業と低い企業で異なっている点は?

GPTWジャパンはランキングの発表に合わせ、「総合的な働きがい」が高い企業と低い企業において、どのような点が特に異なっているかを紹介している。項目は「『環境』に関すること」と「『経営・管理者層』に関すること」に分類でき、具体的には以下の通りだ。

<「環境」に関すること>
・働く環境の整備が整っている
・安心して働ける環境がある
・仕事に必要なものが与えられている

<「経営・管理者層」に関すること>
・経営・管理者層の言行が一致している
・経営・管理者層は適切に採用している
・経営・管理者層は従業員の仕事ぶりを信頼している
・経営・管理者層は従業員の提案・意見を聞いている
・経営・管理者層は適切に人材配置をしている
・経営・管理者層は誠実で倫理的

つまり、上記のような項目において外資系企業よりも日本企業の方が至らない点が多いことから、結果としてやりがいランキングの上位に外資系企業がずらりと並ぶ結果となっているということだ。

上位企業への評価コメントの中にヒントが

先ほど挙げた「環境」に関することと「経営・管理者層」に関することに加え、上位企業に対するGPTWジャパンの評価コメントの中には、日本企業が学ぶべきヒントが多く隠されている。

目指すべき方向性・ビジョンの共有が重要

例えば、1位のシスコシステムズに対する評価コメントとしては、「ミッションや価値観が明確に定められ、それに基づきさまざまな制度や施策が設けられている」などとされている。確かに、企業においては目指すべき方向性が社内で共有されていれば、全社員が一丸となって連帯感を高めやすくなることから、社員一人ひとりがやりがいを持ってプロジェクトに邁進しやすい。

ちなみに、4位のプルデンシャル生命保険に対する評価コメントとしては「従業員は深い理念への共感によって、相互に信頼しあい強い絆で結ばれています」とあり、多くの社員が共感する「理念」を掲げることの重要性も改めて感じさせる。

従業員の不安を取り除く経営者の努力が必要

5位のモルガン・スタンレーに対する評価コメントは、「コロナ禍において、経営が素早く感染対策や従業員の業務継続への対応を行い、感謝のメッセージを発信したことで信頼が高まりました」といった内容だ。

これは、先ほどの「『環境』に関すること」の項目の1つである「働く環境の整備が整っている」に通じるものである。経営陣は自社で働く社員が不安を抱えないよう、不安に思っていることを把握し、早期に対処することが求められる。

また10位の日本アイ・ビー・エムは、「社員が輝ける働く環境の実現」に向けた取り組みを強化しており、「女性」「障害者」「LGBT+」「ワークライフ」「インクルージョン」の各カテゴリーで多様性の受容を推進している。

これらの取り組みを日本アイ・ビー・エムが推進していることは、「経営・管理者層は誠実で倫理的」である証左であると言えそうだ。

日本企業は外資系企業から学ぶ姿勢を

社員がやりがいを感じて働けなければ、離職率の向上にもつながる。企業にとっていいことはひとつもない。日本企業には日本企業の企業風土があるが、外資系企業がやりがい面で評価されているいま、日本企業も外資系企業から学ぶ姿勢が求められている。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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