食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

〈相場は前月並みを維持し、月間平均で450円前後か〉
2月は月間を通じて11都府県で緊急事態宣言が発令されていたこともあり、引続き堅調な内食需要に支えられ、量販店を中心に末端の国産豚肉のニーズは底堅く推移した。

2月の東京市場の豚枝肉相場は、前半までは400円台前半と弱気で推移していたが、「建国記念の日」の祝日を前に一段上げて以降、その後は400円台後半を維持した。結果、月間平均相場は、上物税抜きで462円(税込み499円)と前年同月比で60円高となった。ただ、前年同月は新型コロナウイルスの影響があまり現れていなかったことから大幅な上昇となったが、前月比では3円高とほぼ横ばいで推移した。

3月は6府県で緊急事態宣言が解除され、時短営業の緩和などによって外食需要の回復が期待される。当初、首都圏では3月7日に解除が見込まれていたものの、感染者数の下げ止まり傾向が指摘され、宣言延長や飲食店の時短営業要請の継続など、見通しは不透明な状況だ。例年、3月はこれといった需要を押し上げるイベントはなく、春休みで学校給食も止まることから相場の上げ要因は少ない。しかし、不透明な環境下において首都圏を中心に家庭内需要が継続することが予想されるため、概ね前月相場を引き継ぎ、月間平均では上物税抜きで450円(税込み485円)前後になるものとみられる。

〈供給動向〉
農水省が2月24日に発表した肉豚生産出荷予測によると、3月の出荷頭数は140.5万頭と前年同月比で2%減少すると予測している。ただ、これは前年同月のと畜頭数が143.5万頭(7.1%増)と多かった反動もあり、過去5年平均比では1%減と概ね例年並みの出荷を維持する見通しだ。一方、農畜産業振興機構の需給予測では、3月のチルド輸入は前年同月比3.3%減の3万4,300tと前年割れを予測している。新型コロナの影響による北米からの入船遅れが発生していることなどから、3月も引続き締まった展開が予想される。

〈需要見通し〉
前述の通り、量販店など小売業態では、ある程度堅調な需要が継続することが予想される。ただ、3月は新生活に向けて出費がかさむ時期でもあり、新型コロナウイルスによる経済不安なども相まって、消費者の節約志向は一段と高まりそうだ。このため、荷動きの中心はウデやモモといったスソ物など、比較的安価な部位の引合いが強い。また、気温上昇に伴って鍋物需要は一服したものの、バラやカタロースの動きも悪くはない。その半面、中旬以降は春休みで学校給食が止まる時期となることから、スソ物への引合いが弱まることに加え、ことしは花見や歓送迎会などによる需要への期待は薄い。

さらに、首都圏では緊急事態宣言が延長される可能性があり、外食向けの手当てなどは慎重にならざるを得ないことから、凍結品はしばらく静かな商いが続くものとみられる。3月は決算期となる企業も多いが、モノによってはある程度、在庫を抱える状況になりそうだ。

〈価格見通し〉
量販店など需要動向は決して悪くはないものの、1回目の緊急事態宣言時ほどの消費には至っておらず、外食需要の減退も踏まえると、豚肉全体の消費は落ち込んでいることは間違いない。さらに、3月は出荷頭数も例年並みとなることから、相場の上げ要因は乏しい。一方で、輸入品が入船スケジュールの遅延や新型コロナによる影響で供給が不安定な状況にあるなかで、国産は引続き底堅いニーズに支えられることが予想される。

これらを勘案すると、基本的には前月相場から大きく上昇、下降する可能性は考え難く、概ね横ばいで推移するとみられる。首都圏での宣言解除のタイミングで強含む可能性もあるが、最終週にかけては各社、決算期であることから、弱含むことが考えられる。このため、月間平均では上物税抜きで450円(税込み485円)前後と予想する。

〈畜産日報2021年3月4日付〉