日本政策金融公庫,制度融資
(写真=ベンチャーサポート税理士法人編集部)

今回の記事では創業融資について、日本政策金融公庫と制度融資のどちらが良いかを検証します。

創業の強い味方!公的融資

ベンチャーキャピタルが定着しているアメリカと異なり、日本の場合、外部から資金を調達しようとすれば金融機関による融資に頼らざるを得ません。

しかしながら、まだ実績を挙げていない起業家が銀行から融資を受けるのも簡単ではありません。

実際、起業の8割以上が銀行融資に頼ることができず、自分で貯めたお金や親戚縁者からの借金で事業を立ち上げています。

日本政策金融公庫の起業調査レポートによると、充分な起業資金を調達できた起業家ほど売上が伸びる傾向にあるようです。

つまり起業成功のカギを資金調達が握っている、充分な設備資金や運転資金が確保できれば事業も軌道に乗りやすいというわけです。

そこで、頼みの綱となるのが公的な創業融資です。

日本の開業率は5%を下回る水準で低迷しており、2桁に達している欧米先進国(アメリカ・イギリス・フランス)と比べても大きく見劣りします。

成長戦略を掲げる安倍政権は、活発な起業を経済活性化のモメンタムと位置付けており、さまざまな促進施策を展開しています。

その一環が資金調達面での支援であり、政府系金融機関や地方自治体を通じて、創業前や創業後間もない起業家に対し有利な条件での融資を提供しています。

地方自治体によるによる制度融資とは

地方自治体による制度融資とは、地方自治体・指定金融機関※・信用保証協会の提携により展開している融資です。

融資条件は自治体によって異なりますがここでは大阪府の事例を取り上げます。

※公金の収納および支出を取り扱うものとして自治体が指定した金融機関

大阪府では中小企業向けにさまざまな融資制度を提供していますが、その中の「開業サポート資金」は、主に起業家を融資対象としています。

融資対象者

事業開始前または事業開始後5年以内の個人事業主または法人が融資対象です。

基本的に全業種が融資対象ですが、金融業・風俗業・宗教法人・学校法人等は対象外です。

その他、事業開始前または事業開始後2か月以内の起業家に対しては自己資金要件(1/5以上)を満たさなければいけません。

ここでの自己資金とは、事業のための準備資金から借入金等の残高を差し引いた金額です。

なお差し引く借入金とは、住宅ローンや設備資金融資の2年分です。

融資限度額

開業資金A 2,000万円+開業資金B 1,500万円=合計3,500万円です。

ただし事業開始前または事業開始後2か月以内の起業家に対しては、開業資金Bは自己資金額を上限とします

担保および保証

担保は不要です。

融資対象者が個人の場合は保証が不要ですが、法人の場合は代表者の保証が必要です。

融資期間・金利・保証料

融資期間は7年以内(据置期間1年以内)、利率は年1.4%(固定金利)、保証料は年1.0%です。

利率については、女性・若者・シニア・UIターンなどの条件に合致すれば年1.2%まで減免されます。

融資条件の緩和要件

産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業による支援につき市町村長の証明を受けた者など、大阪府の定める「地域支援ネットワーク」要件に該当する場合には、自己資金要件や金利など融資条件が緩和されます。

日本政策金融公庫による融資

日本政策金融公庫は、特別法に基づき設立された財務省所管の特殊会社であり、政府系金融機関として、国民の生活支援・中小企業支援・農林水産業の資金調達支援の3事業を展開しています。

新創業融資制度は国民生活事業の一環として、起業前または起業後間もない事業を支援する無担保・無保証の融資制度です。

融資対象者

創業前または創業後2年を経過していない個人・法人を対象とし、自己資金要件(起業資金総額の1/10以上)や雇用創出等要件が課されます。

融資限度額

3,000万円(うち運転資金分は1,500万円)

返済期間

20年以内(運転資金は7年以内)

担保・保証人

担保は不要、代表者の保証は任意です。

代表者の保証を付けた場合は0.1%金利が減免されます

金利

基準金利2.51%~2.90%です。

雇用創出等の要件を満たせば優遇金利が適用され、最優遇金利は1.11%~1.50%です(2019年5月現在)。

まとめ

代表者による保証が不要な点、借入期間の長さ、さらには要件を満たせば金利が大幅に優遇される点など、融資条件では明らかに日本政策金融公庫に軍配が上がります。

一方で審査の緩さという点では、地方自治体による制度融資は魅力的です。

貸倒リスクの一部を地方自治体が補填することもあり、比較的審査は甘くなるようです。

公庫の融資は、融資条件が良いこともあって、審査に当たっては事業の先進性や公益性がきっちりレビューされます。

自らが立ち上げる事業のノウハウ・ビジネスモデルなどに自信があり、事業計画書にしっかり落とし込めるなら日本政策金融公庫の融資にチャレンジ、そうでなければ地方自治体の制度融資に頼るのが得策のようです。(提供:ベンチャーサポート税理士法人