最近では金融機関も貸出先を見つけるのに苦労しているような状況で貸し出し競争も激しく、以前より融資を受けやすくなったのは間違いありません。
それでも、まだ業績面で目立った成果を上げていないまたは創業したばかりの企業が融資を引き出すのは、相変わらずハードルが高いのが実情です。
そんな悩める経営者にとって、政府系金融機関や地方自治体が後押しする融資は頼もしい味方です。
今回の記事では、「中小企業経営力強化資金」と「制度融資」について両者のメリット・デメリットを徹底比較します。
中小企業経営力強化資金とは
中小企業経営力強化資金とは、5つある政府系金融機関(政府が過半以上を出資している金融機関)の1つである日本政策金融公庫が展開している融資制度です。
ちなみに政府系金融機関は、政策的優先順位が高い(中小企業の活性化・創業の促進・地方の新興等)ものの、融資先の実績・業績面から民間金融機関が融資し難い案件に融資を実行しています。
その原資は、財務省所管の財政投融資制度により担保されています。
融資先
新規開業を含め、異分野との提携に基づく新分野の開拓、または経営革新をめざす事業者が対象とされます。
つまり起業だけでなく既存事業者も申し込みが可能です。
申し込みに当たっては、事業計画策定および認定経営革新等支援機関(根拠法規:中小企業等経営強化法)の支援を受けることが条件となります。
融資限度額・返済期間
7,200万円・20年以内(ただし運転資金は4,800万円・7年以内)
なお、据え置き期間は2年です。
担保・保証人
2,000万円以内なら、無担保・無保証人による融資が可能です。
2,000万円超でも経営者保証免除特例制度等を利用すれば、金利が0.2%上乗せされた上で代表者による個人保証を外せます。
ただし法人と代表者の分離(代表者の恣意性排除)を求められるなどハードルは高めです。
金利
そのときどきの金利動向によって変化しますが、担保を提供する場合の基準利率が1.16%~2.15%、前述の無担保・無保証人による融資の場合で2.26%~2.45%です(2019年5月現在)
中小企業庁の定める会計指針を遵守すれば、金利は0.1%減免されます。
制度融資とは
制度融資とは、各地方自治体が信用保証協会や指定金融機関との提携による融資制度で、中小企業への融資提供促進をその目的としています。
融資条件は自治体によって微妙に異なりますが、ここでは東京都の事例を紹介します。
融資先
中小企業者のうち都内に事業所を有していること、信用保証協会が定める業種であること(農林水産業・金融業などは対象外)、許認可が必要な場合にはすでに受けていること、反社会的勢力とかかわりがないことが条件とされます。
中小企業者の条件は、業種によって資本金・従業員数の上限が定められています。
なお、企業だけでなく商店街組合や協同組合なども融資を受けることができます。
融資限度額・返済期間
3,500万円・10年以内(運転資金は7年以内)
なお、据え置き期間は1年です
金利
返済期間により1.9%~2.5%(責任共有制度の対象の場合は1.5~2.0%)です。
保証人・担保
代表者による個人保証の免除も認められますが、法人経営から代表者の恣意性が排除されている、債務超過でない、充分な担保が提供されている、提携金融機関が認めているなど、条件はハードです。
なお、原則として担保は求められません。
まとめ
中小企業経営力強化資金の方が、(2,000万円までなら)代表者保証を外せる点で有利ですし、据え置き期間も長めに設定されてます。
ただし、認定機関による指導が必要な点・事業内容に革新性・新規性が求められる点など、審査のハードルが高めです。
営む事業内容を見極めたうえで、間口の広い制度融資を選ぶか、中小企業経営力強化資金にチャレンジするかを見極めるのが得策です。(提供:ベンチャーサポート税理士法人)