旭酒造 桜井一宏社長
(画像=旭酒造 桜井一宏社長)

山口県の旭酒造は1月23日、オンラインで「最高を超える山田錦プロジェクト2020」の表彰式を開催した。今回は全国127名からエントリーがあり、そのうち63点を審査した。グランプリはウイング甘木(福岡県朝倉市)の北嶋将治氏が、準グランプリは山田錦栽培研究所(栃木県下野市)の紙本進氏が獲得した。グランプリを獲得した北嶋氏は「7月は長雨、その後2回の台風上陸と苦しいことは多くあったがどうにか頑張った。胸を張れる賞を頂くことができてうれしい」と今回の受賞についてコメントした。

「最高を超える山田錦プロジェクト2020」は山田錦を栽培する個人生産者及び農事組合法人や酒米部会等グループを対象とし「今までの最高を超える、“獺祭”に使用する山田錦」を目指して米作りに挑戦してもらうもの。応募された山田錦を審査し、グランプリを獲得した生産者の山田錦は60俵で3,000万円、準グランプリのものは1,000万円で旭酒造が買い取る。また、それ以外で品質目標を満たした山田錦については1俵あたり5万円で購入される。

品質目標
(画像=品質目標)

旭酒造の桜井一宏社長は会の冒頭、「最高を超える山田錦プロジェクト2020」の目的について「当社の“獺祭”は世界中に輸出をしているが、それぞれの市場でワインやウイスキーなど、他の酒類と勝負していかなければならない。まさに“異種格闘技戦”だ。その中でも日本酒は後発組。元々ある市場の中に入り、時には壊していかなければならない。その際に“おいしい”という武器が絶対に必要となる」としたうえで、「山田錦は最高の酒米とされているが、よりよいものができればさらに可能性は広がる。2020年、実際に同プロジェクトでグランプリを獲得した山田錦を用いた“獺祭”を、香港のサザビーズに出品したところ84万円という日本酒としては信じられない値が付き、風穴を開けることができた」と話した。

今年度の審査については「審査員にお願いしたのは“良いものがなければグランプリは無くてもよい。厳しく見て最高のものを選んでほしい”とお願いした。その中で今回グランプリと準グランプリを発表できるのは、出品していただいた皆様が本気で取り組み、最高を超えるための努力をしていただいたからである」と述べ、グランプリを獲得した北嶋氏の山田錦については「予審から審査員が注目する抜群の品質だった。結審でもその勢いそのままにグランプリを獲得した。素人目に見ても、パっとわかるすごさがあった」とコメントした。

なお、グランプリ、準グランプリを受賞した山田錦は2月中には使用されるとのこと。出来上がったお酒の出荷先については「未定」としつつも「有意義に使いたい」と桜井社長。

また、桜井博志会長は「当社はコロナ禍にあえいだ2020年でも約8,000tの山田錦を使用した。一方、35年前を振り返ってみると当社の使用数量はゼロ。山口県内全体でも3~4tだった。ここまで数量を増やしていく中で仲たがいしたり、厳しい話をすることもあったが、多くの方にご協力を頂きここまでたどり着いた。また、山田錦を作るには技術や経験はもちろんのこと、それを支える熱が大切だとこのコンテストを通じて改めて感じた。今後も“熱”の入った山田錦と共に“獺祭”を造り、世界中でおいしい日本酒を待っている方に届けていきたい」と締めくくった。

〈酒類飲料日報2021年1月26日付〉