コロナで激変する世界の常識 未来の価値基準、「ニューノーマル」とは?
(画像=Rawpixel.com/stock.adobe.com)

感染症によって大きな打撃を受けた経済と社会を、サステナビリティ(持続可能性)の取り組みでもって立て直そうという動きが広がっている。今回からスタートする連載「日本企業のニューノーマル」の初回は、企業を取り巻く社会の変化をとらえ、危機を変革のチャンスに変える新しい価値の創造を提案する。

新海美保
新海美保(しんかい みほ)
ライター・エディター。愛知生まれ。大学卒業後、2004−05年インド在住。出版社で専門書や雑誌の編集・執筆に携わり、2009-10年『国際協力ガイド(現国際協力キャリアガイド)』編集長。PR・CSRコンサル企業の出版部門を経て、2011年から災害時の緊急支援団体の広報・渉外担当。2014年京都移住を機にフリーランスに。新聞、雑誌、書籍、ウェブなどの企画・編集・執筆・校正・撮影等に従事。共著『グローバル化のなかの日本再考』(葦書房)ほか。2021年春からフィジー滞在(予定)
日本の企業のニューノーマル 〜サステナブルを推し進める企業の挑戦〜
  • 【第1回】コロナで激変する世界の常識 未来の価値基準、「ニューノーマル」とは?
  • 【第2回】LINE Fukuokaの「スマートシティ」構想。東京出身の立役者が福岡の行政を変えるまで
  • 【第3回】福岡からLINE Fukuokaが目指す「Life on LINE」。市民の当事者意識を高める街づくり
  • 【第4回】逆境の地から生まれるイノベーション 東日本大震災から10年
  • 【第5回】化粧品の老舗・ハリウッド株式会社の社長が語る「環境問題」の重要性
  • 【第6回】96年前の創業時からESG経営に取り組むハリウッド株式会社 化粧品会社が目指すべき未来とは
  • 【第7回】無印良品で話題の『コオロギせんべい』 良品計画が昆虫食を開発した裏側に迫る
  • 【第8回】株式会社SoooooS.カンパニー「“サステナブル”は理屈っぽい?いえ、もう当たり前です」
  • 【第9回】株式会社SoooooS.カンパニー「急速に変わる企業評価の尺度 本業にソーシャルプロダクツを」
  • 【第10回】「たった5%の行動で世の中は変わる」――Yahoo! JAPAN SDGs編集長が語るSDGsの未来
  • 【第11回】日本企業のグローバル展開を支える、高精度国産自動翻訳エンジン「翻訳バンク」とは
  • 【第13回】女性の活躍は企業の存続にかかわる重要事項 今、企業に求められていることとは?
  • 【第15回】地熱モデル地区に学ぶビジネスチャンス。広がる地熱ビジネスで注意すべき点とは?
  • 【第12回】企業にとっての本質的メリットとは?「新技術等実証制度(規制のサンドボックス制度)」が目指す産業の進化
  • 【第14回】今急成長を遂げる地域を60年以上に渡り調査。ジェトロ・アジア経済研究所がこれからの社会で果たす役割
  • 開く

     

    コロナ禍の新しい”ニューノーマル”

    新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が始まってから、間もなく1年が経つ。この間、世界中で長期の外出禁止や自粛が余儀なくされ、感染拡大と医療崩壊を防ぐために、テレワークや在宅勤務が広がった。一人一人の働き方や生活の仕方が大きく変わり、「新しい生活様式」「ニューノーマル」という言葉が日常的に使われるようになった。

    では、経営者や組織にとってのニューノーマルとは、なんだろうか。「新たな常識」「新状態」などと訳されるこの言葉は、新型コロナウイルスが広がり始めた当初は、オンライン会議設備の導入や社員のリモートワーク、感染抑止のための新しい生活やビジネスマナーの推進といった応急的な対処の「常態化」を指していた。しかし、今やニューノーマルとはもっと深い次元にある言葉としてとらえるべき段階にきている。

    危機こそ変革のチャンス

    長く続くコロナ禍において、私たちは目に見えない未知のウイルスの存在に大きな脅威を感じている。他方、それ以上に怖いのは、目の前の危機が収束したとき、まるでこの脅威がなかったかのように既存社会に立ち戻ってしまうことだ。新型コロナウイルスは、コロナが起きる前からあった貧富の格差や社会の分断を浮き彫りにした。仕事や家を失った人、家庭内ストレスの増大、加えて子どもたちの教育格差も顕著となった。世界に目を向ければ、貧困や飢餓、水不足、医療アクセスの課題などがコロナ禍でより深刻化している。

    困難に満ちた2020年から一歩抜け出し、新しい年を「変革のチャンス」とするために、今、一人一人が思考のパラダイム転換を目指すタイミングがきている。これまでの社会の矛盾や格差が明らかになり、私たちの日常を支える経済活動の前提としてあった「個々が自由かつ無限に利益を享受できる」という考えを改める必要性に迫られている。そして、その変革の波はもう始まっている。