後継者
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少子高齢化や働き方の多様化などを理由に、事業承継における親族内承継が困難となり、外部から後継者を募集することが必要な企業も増加している。今回は、事業承継で後継者を募集する際のポイントや、後継者募集で活用すべきマッチングプラットフォームサービスについて解説する。

目次

  1. 中小企業が後継者を募集する理由
    1. 中小企業の127万社が「後継者不在」の状況
    2. ニーズが親族内承継から第三者承継へ移っている
  2. 事業承継で後継者を募集する際のポイント
    1. 1.後継者のスキルや年齢は適切か
    2. 2.自社の事業内容や理念に共感しているか
    3. 3.経営者の能力を差し引いて自社の強みを可視化する
    4. 4.後継者の募集に使う媒体は適切か
  3. 後継者を募集する手法や利用すべきプラットフォーム
    1. 後継者募集から承継へのステップ
  4. 後継者募集におすすめのプラットフォーム
  5. 事業承継は未来を作る作業

中小企業が後継者を募集する理由

中小企業の事業承継については、後継者候補を外部から探さなければならない事態に陥っている。その理由は、大きく以下の2点に集約される。

・127万社が「後継者不在」の状況に陥っている
・ニーズが親族内承継から第三者承継へ移っている

それぞれの論点について紐解いていこう。

中小企業の127万社が「後継者不在」の状況

中小企業庁が報告した『中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題』によると、「国内に籍を置く中小企業のうち127万社が後継者を見つけられていない」という事実が記載されていた。この127万社という数値は、日本のすべての中小企業の1/3を占める膨大な数である。

法人の99%が中小企業のわが国において、中小企業や小規模事業者は地方経済を担う要だ。地方の中小企業で生まれる雇用や収益は、地方経済の維持に必要不可欠である。

経営者の高齢化を理由に優良企業が次々と廃業してしまうことによるダメージは計り知れない。件の試算によれば、シナリオ通りに大廃業時代へ突入してしまうと、22兆円のGDPや650万人の雇用を喪失すると見積もられている。

この最悪のシナリオを回避すべく、行政は事業承継補助金の拡充・経営承継円滑化法などの援助策や税制緩和を行っているのである。

ニーズが親族内承継から第三者承継へ移っている

わが国では事業承継において、親の事業を子供が受け継ぐ「親族内承継」が主体的であったが、2015年の中小企業庁の調査によると親族内承継を行う企業は減少してきている。

理由はいくつかあるが、大きな理由としては以下のようなものが挙げられる。

・少子化によってそもそも後継者となる親族が居ない
・インターネットの普及によって職業選択の幅が広がった

親族内に後継者を見つけにくくなった結果、事業承継を果たすために「会社を継いでくれる後継者を探す」必要に迫られることになった。

親族内に後継者候補がいない場合は、必然的に従業員や外部の人材を後継者として招へいしなければならない。そこで第三者承継のニーズが高まり、結果として後継者候補とのマッチングサービスに注目が集まっている。

事業承継で後継者を募集する際のポイント

事業承継の成否を分けるポイントはさまざまだが、後継者候補とのマッチングや適切な後継者教育の有無は中でも特筆すべきファクターとなる。

ここでは、後継者候補を募る際に気を付けたいポイントについて、事業承継士としての観点から4つの要素に絞って詳しく解説していく。

1.後継者のスキルや年齢は適切か

後継者のスキルや年齢は、最初に注意したいポイントだ。経営にはさまざまなスキルが求められるのはもちろん、事業承継という特性上、既存のパワーバランスや社内のシステムに順応しつつリーダーシップを発揮していかなければならない。

古参の従業員や役員から認められるような立ち居振る舞いや折衝が必要になるなど、事業承継によって経営者になる場合は、通常の起業よりも経営手腕が試される一面もある。

また、事業承継においては年齢という観点も忘れてはいけない。事業承継は経営層(とりわけ代表者)の新陳代謝が目的となる。年齢を経るほどノウハウは蓄積されていくが、現経営者と年齢差がない後継者に事業承継を行ってもメリットは薄くなってしまう。

そのため、第三者承継では経営のノウハウとエネルギッシュさを持ち合わせる30~40代の後継者が好まれる傾向にある。

2.自社の事業内容や理念に共感しているか

事業承継では、後継者のスペックだけでなく当人のモチベーションについても考慮したほうが良いだろう。

事業内容はもちろん、経営理念や社風といった「目に見えない資産」を理解してくれるか、受け継いでさらなる価値へと転換してくれそうか、という点についても話し合っておくと、その後の経営がスムーズに運ぶ。

「社長が変わってからあの会社は変わってしまった」と言われることのないよう、自社の見えない資産や魅力について、しっかりとすり合わせを行うことが大切である。

3.経営者の能力を差し引いて自社の強みを可視化する

自社の見えない資産や魅力をすり合わせることは大切であるが、中小企業の場合は、社長のマンパワーによって魅力が形作られている可能性が高い点にも注意が必要である。

もちろん、企業の魅力は、社員や社長をサポートする役員の能力があってこそ光るのだが、その原点にあるのが社長のマンパワーだけだと、事業承継を行った後に歯車が噛み合わなくなっていく。

これは筆者の知り合いの例であるが、従業員承継によって若い従業員が代表の座に就任したIT企業のケースを少し紹介したい。

その企業は、前代表の個人的なコネクションが営業の要となっており、接待なども数多く行われていたという。

後継者となった若き代表は、そうした古いつながりを一新しようと考え、付き合いのあるクライアントへ「こうした付き合い方はもうできません」と申し出たという。しかし、相手方からは「以前の代表のやり方でなければ取引はできない」と突っぱねられてしまったのである。

言い換えれば、同社の場合は前社長の人柄や営業力が、そのまま企業の営業力の要となっていたのだ。それにも関わらず、「自社の強みは営業力だ!」と勘違いしてしまったらどうだろう。事業承継を行った瞬間に、クライアントは大幅に減少するかもしれない。

こうしたアクシデントを回避するために、経営代表者のマンパワーを差し引いた上で、自社の強みが何なのかを問い直すことが重要である。

4.後継者の募集に使う媒体は適切か

事業承継で後継者を募集する際には、さまざまな媒体を用いることとなるだろう。

行政や民間企業では、さまざまなプラットフォームを用意して、後継者候補と企業のマッチングを後押ししている。媒体ごとに特徴があるため、いくつか確認したうえで自社に合いそうなプラットフォームを選ぶことをおすすめしたい。

後継者を募集する手法や利用すべきプラットフォーム

ここからは、具体的に後継者を募集するための手順や手法、利用すべきプラットフォームを解説していく。

後継者募集から承継へのステップ

後継者候補を探して事業承継を行うためには、以下の5つのステップを経ることとなる。

(1)承継後の企業に必要な後継者の姿を明確にする
(2)求める能力に合致した後継者を募集する
(3)事業承継に向けて自社の磨き上げを行う
(4)名義株も含めて株式を買い集めておく
(5)後継者教育を通して経営者への道のりを用意する

それぞれ詳しく見ていこう。

(1)承継後の企業に必要な後継者の姿を明確にする

まずは、求める後継者像を明確にするところからスタートしよう。

周辺環境の変化や競合他社の調査なども踏まえて、自社にどのような課題があり、どのような強みがあるのか分析しよう。それらを改善・強化するために必要なスキルや人柄を列挙した上で、後継者像を明確にするといいだろう。

この時点では、実現可能性は考慮せずに、理想的なリーダー像の明確化に注力することをおすすめする。初めは求めるリーダー像に至らない人材だったとしても、その後の意識の変化や教育によって、理想に近い人材へ変わっていく可能性が十分に考えられるからである。

ここで明確にしたリーダー像は、後継者候補を探す際の指針としてはもちろん、後継者教育の道標としての役割も果たすと認識しておこう。

(2)求める能力に合致した後継者を募集する

後継者を募集する際には、行政や民間企業が用意したプラットフォームを活用することになるだろう。具体的なプラットフォームについては、別の項目で紹介しているので、ぜひ参考にしていただきたい。

後継者候補とは、数度の面談を行うことになる。事業内容や経営理念、社風への理解があるかを確認するのはもちろん、「理想のリーダー像」と照らし合わせながら腹を割って話し合うことが重要である。

(3)事業承継に向けて自社の磨き上げを行う

後継者が選任されたら、事業承継に向けて社内での準備を進めていく。事業承継のステップは細かく挙げればキリがないので割愛するが、後継者のために行うステップという観点で言えば自社の「磨き上げ」という重要な仕事が挙げられる。

自社の「磨き上げ」には、具体的に以下のようなものがある。

・債務の返済や圧縮、散らばっている権利義務の所在を明らかにする
・労働生産性を低下させる問題が社内にある場合はそれらを解消する

自社の磨き上げに際して、スローガンとして意識して欲しいのは「欲しいと思ってもらえるような会社になっているか」という点だけだ。その視点で自社を見直して、新たなスタートが切りやすい状態に整えるのも、現代表の大切な仕事である。

(4)名義株も含めて株式を買い集めておく

事業承継時にたびたび問題となるのが「名義株」の所在だ。名義株とは、実際に株式を所有している者と、帳簿上の所有者が異なる株式を指した言葉である。

1990年以前の商法で定められていた「会社設立時には7名以上の発起人が必要」という規則をクリアするために、創業者が家族や友人から名義だけを借りて株式を発行し、そのままにしているケースが散見される。つまり、実質的な株主は創業者でありながら、帳簿上の株式保有者は名義だけを貸した親族や友人のままになっているということだ。

事業承継をシンプルにとらえると、後継者となる人物に株式の過半数以上を譲渡し、経営権を委譲するスキームに過ぎない。名義株が残ったままになっていると、後継者の実質的な経営権が弱くなり、どれだけ社内でリーダーシップを発揮したとしても、迅速な意思決定や経営判断を阻害してしまうだろう。

事業承継に踏み切る前に、あらかじめ名義株の所在を明らかにしておき、株式を買い取っておくことが大切だ。

(5)後継者教育を通して経営者への道のりを用意する

後継者に株式を譲渡する前に、後継者教育も忘れてはいけない。業務上必要な知識から経営に関わるスキルを伸ばすための実務経験に至るまで、後継者が学ぶべきことは非常に多い。そのため、自社内だけで後継者教育の全てを行うのが難しいこともある。

後継者教育で活用したいのが「後継者塾」という仕組みだ。事業承継に注力している自治体や商工会が自発的に開催しているもので、後継者や現経営者が参加する。

後継者にとって、異業種とのチャネル開拓や志を同じくする仲間との切磋琢磨ができる機会はそう多くない。事業承継に伴う後継者教育に苦労しそうな場合は、自社の所在地域で後継者塾が開催されていないか確認してもらいたい。

後継者募集におすすめのプラットフォーム

後継者を探す際にまず登録すべきプラットフォームとして、中小機構が運営する以下のプラットフォームを確認してみてほしい。

>>後継者人材バンク│中小機構

数多くの後継者候補が登録しており、行政が運営しているという点も踏まえると信頼性が高い。ぜひ活用してみてほしい。

この他にも、民間企業が運営するプラットフォームやマッチングサービスがいくつか存在する。後継者を募集する際に活用してもらいたいプラットフォームやサービスが以下の4つだ。

・日本M&Aセンター

日本M&Aセンターは、国内最大級のM&AプラットフォームでM&A仲介サービスを展開している。事業承継の成約件数6,000件以上と豊富な実績を持っており、信頼できるアドバイザーを介して有能な人材とマッチングしたい企業は、ぜひ活用してもらいたい。

・トランビ

国内最大級のM&Aプラットフォームを運営するトランビ。気軽に登録できるので、他の企業がどのような後継者募集を行っているのか確認しながら、自社の後継者募集の方針を決めることもできる。

利用者数も7万人を超えており、思いがけなかった後継者候補と出会える可能性がある。

・スピードM&A

スピードM&Aは、インターネットを介したM&A案件に特化したM&Aプラットフォームである。スマートフォン一つで企業の売買ができるという手軽さと、社名にもある通りクロージングまでのスピードの早さが魅力だ。

「さまざまな人材と出会いたい」と考えている企業にとっては、使って損のないプラットフォームだろう。

・事業承継通信社

事業承継通信社は、スモールM&Aや小規模な企業の事業承継に対して強みを持っている。

そもそもM&Aの規模によって、マッチングの方法は異なる場合が多く、大規模な案件はM&A仲介会社、中・小規模な案件はM&Aプラットフォームでのマッチングという形になる。小規模な事業承継やM&Aに関して丁寧にサポートを受けたいと思っても、なかなか利用できる企業は少ない。

事業承継通信社であれば、スモールM&Aや事業承継に特化しているため、案件の規模に関わらず丁寧なサポートが受けられる。他のM&Aプラットフォームと併せて検討してみると良いだろう。

事業承継は未来を作る作業

事業承継は、企業の新たな創業のタイミングとも考えられる。企業が保有する経営資源を、新たな経営者がどのように活かしていくのか、その未来を作る作業が事業承継だ。

後継者を募集する際には、公的及び民間企業のさまざまなM&Aプラットフォームサービスの利用が効果的である。ただし、後継者を募集する前に、自社に必要なリーダー像を明確にすることが重要である。

自社の未来を担う後継者候補は、慎重に選びたいところである。後継者を募集しても、すぐに候補者が見つかるとは限らないが、この記事を参考にしながら、理想に近い後継者を見つけていただければ幸いだ。

文・THE OWNER編集部

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