フランチャイズ153店を含め、国内で240店を展開する「珈琲館」は、創業50年の歴史を持つ老舗コーヒーチェーンだ。2018年には、投資ファンド・ロングリーチグループ入りし、次のステージにステップアップするための改革にも乗り出した。陣頭指揮を執る友成勇樹社長に話を聞いた。

(※2020年12月号「FOCUS―注目FC―」より)

友成 勇樹 社長(57)
(画像=友成 勇樹 社長(57))
友成 勇樹 社長(57)
友成 勇樹 社長(57)
ともなり・ゆうき
1963年7月生まれ。東京都文京区出身。中央大学卒業。日本マクドナルドに入社し、34歳でアメリカ本部に異動。4年の海外勤務を経て帰国後、新会社の社長に就任。その後、独立、モスフードサービス関連会社の会長などを経て、2018年7月から現職。

契約内容、フードメニューの統一化を進める

――1970年に真鍋國雄氏(故人)によって創業され、今年の4月10日には丸50周年を迎えました。

友成 記念店も作りましたし、企画もいろいろと考えていました。しかし、新型コロナウイルスの影響で、イベントの類はすべて中止。非常に残念でしたが、これはどうしようもないことなので、もう頭は切り替えています。社内では冗談半分で、来年51周年で何かやろうなんて話をしていますよ(笑)。

――フランチャイズは72年にスタートしています。これはコーヒーチェーンとしてはもっとも早いのではないでしょうか。

友成 そうかもしれませんね。私も着任したのは2年前なので、昔のことについてそれほど詳しいわけではありませんが、40 年前に加盟されたオーナー様の話によると、最初は暖簾分けのような感じでスタートし、それが時代を経るごとに少しずつ形を変えて、今のフランチャイズの仕組みになったようです。

――40年前と今とでは、契約内容にかなりの違いがあると思います。

友成 契約書を見てみると、保証金をお預かりしている方もいればそうでない方もいますし、ロイヤリティも人によってバラバラです。契約した時期がそれぞれ異なるので、ある程度は仕方ない部分もありますが、そうかといって、この状態をいつまでも放置しておくわけにはいきません。そこで現在、更新のタイミングで契約内容を今のものに変更してくれるように、オーナー様に働きかけているところです。

――珈琲館の中には、独自のフードメニューを提供している店舗がかなりあるようです。

友成 いつ頃からそうなっていたのかは分かりませんが、良くも悪くも、その自由さが珈琲館のフランチャイズの特徴になっていました。最初に知ったときは私も驚きました。確かに、オーナー様からすれば、自分の個性が打ち出せるので良いのかもしれませんが、お客様目線で見た場合には、メニューやサービスが店舗ごとに異なるというのは、やはりおかしい。多少反発もありますが、こちらについても全店で統一できるように、いろいろと手を尽くしています。

――チェーンとしてかなりいろいろな部分でテコ入れをしている印象を受けます。

友成 実際そうなんですよ。そもそも本部とオーナー様の関係も、私がここに来るまではそれほど密ではありませんでした。「以前は、本部は何もしてくれなかった」とおっしゃるオーナー様もいたほどです。そこで、私は社長に就任してすぐ、全国のオーナー様のもとを行脚して回りました。耳の痛いご意見もたくさん頂きましたが、信頼関係はかなり深まったと思います。

――業務面でテコ入れしている部分はあるのでしょうか。

友成 見渡すと、非効率な部分がかなりあるので、いろいろと考えているところです。例えばコーヒー豆ですが、一般的なコーヒーチェーンだと3、4種類しか置かないところ、うちでは11 種類も置いています。これはさすがに多過ぎます。あとはサンドウィッチやホットケーキなど、店舗で仕込まなければならないメニューが意外と多いのも気になっています。もう少しどうにかできないものかと検討しています。

▲ 居抜きモデルは従来の約半分の投資で出店可能
(画像=▲ 居抜きモデルは従来の約半分の投資で出店可能)

既存オーナーの多店舗化を 支援する新制度を開始

――通常のフランチャイズ契約とは別に、「BFL(ビジネス・ファシリティー・リース)」という、既存の直営店舗をリースするプランを発表されました。

友成 珈琲館のFC店は153店舗あるのですが、それに対してオーナー様は約120名おられます。つまり、ほとんどの方が単店でやっておられるわけです。これは、「純粋にコーヒーを淹れるのが好き」あるいは「コーヒーを淹れながら接客を楽しみたい」という理由で加盟している方が多く、逆に「店舗をどんどん増やしたい」という意欲的な方がほとんどいないためです。もちろん、それを否定するつもりはまったくありませんし、これからもそうした方をどんどん受け入れていきます。では何が問題かというと、趣味的意識が強すぎると、事業承継をしなければならなくなったときに、後継者が見つからない可能性が出てきます。今どき「父が趣味でやっていたお店を継ぎたい」と考える若者はなかなかいませんからね。跡継ぎがいなければ閉店するしかありません。

――愛着ある店舗を閉めるのは、きっとご本人にとって不本意なはずです。

友成 しかし、2店舗、3店舗あれば話は違います。これはもう趣味の延長ではなく経営ですから、後継ぎが見つかる可能性は格段に上がります。例え身内が継がなくても、雇っていたスタッフが手を上げるかもしれません。いずれにせよ、店舗を一代で終わらせないようにするためには、オーナー様に経営意欲をもってもらわなければなりません。ただ、新店を出すとなると、それなりに費用がかかります。そこでオーナー様の費用負担を軽減できるように、「BFL」という仕組みを作りました。これで2店目、3店目を出すオーナー様が一人でも増えてくれればと思っています。また、新店を出す際のコストも抑えられるように、居抜きで出店きるモデルも開発しました。これなら以前の約半分、2000万円前後で出店することができます。

――開業にかかる費用や収支モデルを教えて下さい。

友成 立地にもよりますが、通常のFC契約で、30坪46席の店舗を作った際にかかる費用は、加盟金150万円と加盟保証金150万円などを含め3800万円。売上はひと月あたり40万円を想定しています。居抜きの場合の初期投資は、40坪74席で諸々含め1800万円。売上はひと月当たり300万円です。物件の調達にかかる費用や設備投資がいらないBFLは、加盟金と加盟保証金の他に、消費税別の総売上高から2%を、毎月、BFLマージンとして頂きます。

5年で100店舗出店を目指す

――現在、店舗数は直営・FC合わせて240店舗です。フルサービスのコーヒーチェーンとしては「コメダ珈琲店」に次いで業界2位ですが、今後の出店計画について教えて下さい。

友成 5年で100店舗というのが当面の目標です。7割はFCというのが理想ですね。エリアでは、手薄な福岡を中心とした九州を強化したい。あとは創業者の出身地である札幌が空白地になっているので、ここにもできるだけ早い段階で出店したいと考えています。