2019年度の教育産業全体(主要15分野計)は前年度比0.3%増の2兆7,747億円
~主要15分野のうち、幼児向け通信教育・英会話教材、学生向け通信教育、資格取得学校、企業向け研修サービス、eラーニングの6分野が市場拡大~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の教育産業市場(主要15分野)を調査し、サービス分野別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
教育産業全体市場規模推移(主要15分野計)
1.市場概況
2019年度の教育産業全体の市場規模(主要15分野計)は、事業者売上高ベースで前年度比0.3%増の2兆7,747億円となった。 15分野のうち、学生・未就学児向けの教育関連サービスは、少子化の進行によって需要層の減少で厳しい市場環境にある中、教育サービスに対する底堅い需要に支えられ、市場は緩やかな拡大を継続してきた。しかし、2019年度は年度末の新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって、多くの業界・企業にマイナスの影響が及び、伸長率の鈍化或いはマイナス成長に転じる市場も散見され、全体市場の成長も鈍化することとなった。
教育産業全体市場の主要15分野のうち、2019年度において前年度より市場規模が拡大した分野は、「幼児向け通信教育市場」、「学生向け通信教育市場」、「幼児向け英会話教材市場」、「資格取得学校市場」、「企業向け研修サービス市場」、「eラーニング市場」の6分野であった。
2.注目トピック
対面型・集合型・通学型の教育サービスにおける新型コロナウイルスの影響
新型コロナウイルス感染症の影響によって、対面型・集合型・通学型の教育サービスの多くでは、サービスのオンライン化の導入促進の契機にはなったものの、収益面や集客面、オンラインで提供するサービスの質の問題など、多くの課題が顕在化することとなった。
学習塾・予備校市場では、2020年3月以降、学校の休校要請に伴う休塾・休校措置による減収、生徒募集活動の抑制による新規入塾生の伸び悩みなどのマイナス影響が及んだ。通塾再開後は回復基調になるも、休塾・休講による減収分をカバーしきれない事業者も多く、2020年度の学習塾・予備校市場は前年度割れを予測する。今後、応急措置的であったオンライン授業の質の向上が期待される。
家庭教師派遣市場では、訪問による学習指導に支障が出るなど事業運営にマイナス影響が及ぶこととなるが、事業者においてはオンラインでのリモート授業を取り入れる動きがみられ、今後、サービス提供・指導方法、事業展開の変化が促進される見込みである。
幼児受験教育市場では、教室での対面授業が休講となったが、受験を控える年長向けを中心に授業の振替やオンライン授業が実施され、売上面での影響は比較的軽微であったものと推察される。一方で、景気悪化や通学・通塾に伴う感染リスクの影響によって、会員数の伸び悩みが見込まれる。
知育主体型教育市場や幼児体育指導市場では、幼稚園や保育園などの休園によって、園で行う正課指導や課外指導が実施不可となったほか、商業施設などで行う教室も施設の休業措置などに伴って休校となった。また、春先の新規会員獲得に向けた営業活動ができなかったこともマイナス要因となっている。
資格取得学校市場では営業活動が制限され、都市部のスクールでは新規の問合せが前年度比80%減程度まで落ち込むケースも散見された。一方、公務員講座や在宅ワーク向けのパソコン講座などの需要は前年度を上回ったが、渡航制限の影響により外国人向け日本語教育は大きなマイナスの影響を受けた。
資格・検定試験市場では、会場試験の中止が相次ぎ、受験回数の減少によって大きなマイナス影響が及んでいる。会場試験が再開した夏以降は、これまで受験できなかったことが影響し、受験申込が集中することで受験待ちの状況が生じている。尚、一部の試験では、自宅で受検できるオンライン受験のシステム導入も見受けられた。
3.将来展望
2020年度の教育産業全体の市場規模(主要15分野計)は、事業者売上高ベースで前年度比2.8%減の2兆6,978億円を予測する。
少子化の進行によって、学生や未就学児向けの教育サービスを手掛ける事業者の多くは厳しい事業環境にある中、2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大によって、4月から5月にかけて、対面型・集合型・通学型の教育サービスは一時的に提供不可となり、オンライン授業で対応するも、教育サービス事業者の事業活動および新規生募集活動等が制限されたことで、収益面でマイナス影響が及んだ事業者が多く見られた。緊急事態宣言解除後、事業活動の本格稼働・再開に伴い、集客及び業績は回復基調にあるものの、前年度と同水準までの回復は見込みにくく、2020年度の当該市場は減少に転じるものと予測する。
2020年度以降は、終息が不透明な新型コロナウイルスの影響もさることながら、教育サービス事業者の多くは、安定した生徒数確保等、収益性の維持・向上が引き続き課題となっている。今後においても、M&Aや業務提携などによって、サービス・事業領域の拡大、事業エリア(地域)の拡大、対象年齢の拡大、新サービスの開発等を進め、ターゲット層の拡大、さらには顧客サービス提供期間の長期化を図ることで、事業・経営の安定ならびに事業成長を目指す動きが顕著になっていく見通しである。尚、コロナ禍が契機となり、多くの教育サービスにおいてオンライン化が進み、利用者の選択肢が増えることとなり、サービス提供の多様化が進展していく見込みである。
調査要綱
1.調査期間: 2020年5月~9月 2.調査対象: 学習塾、予備校、通信教育事業者、資格取得学校、語学スクール、幼児教室、 体操教室、研修サービス事業者、eラーニング事業者、学習用教材会社、業界団体、管轄省庁等 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電話・FAX・e-mailによるヒアリング、ならびに各種文献調査併用 |
<教育産業市場とは> 本調査における教育産業市場とは、①学習塾・予備校、②家庭教師派遣、通信教育(③幼児向け・④学生向け・⑤社会人向け)、⑥幼児向け英会話教材、⑦資格取得学校、⑧資格・検定試験、⑨語学スクール・教室、⑩幼児受験教育、⑪知育主体型教育、⑫幼児体育指導、⑬企業向け研修サービス、⑭eラーニング、⑮学習参考書・問題集の主要15分野をさす。 |
<市場に含まれる商品・サービス> 学習塾・予備校、家庭教師派遣、通信教育(幼児・学生・社会人向け)、幼児向け英会話教材、資格取得学校、資格・検定試験、語学スクール・教室、幼児英才教育、企業向け研修サービス、eラーニング、学習参考書・問題集 |
出典資料について
資料名 | 2020年版 教育産業白書 |
発刊日 | 2020年09月28日 |
体裁 | A4 765ページ |
定価 | 150,000円(税別) |
お問い合わせ先
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