オンライン化
(画像=fizkes/stock.adobe.com)

「足で稼いでこい!」と上司にせっつかれた経験がある営業担当者は多いはずだ。しかし、この足で稼ぐ営業スタイルは、いずれ過去の産物となるかもしれない。地方企業でもIT改革が進み、新型コロナウイルス問題も営業のオンライン化を加速させている。

目次

  1. 営業担当者の「コミュニケーション」はオンライン化しやすい
    1. コロナ禍で加速するオンライン化
    2. スマホで使い方を撮影し、顧客にネットで紹介するメーカーも
  2. 営業のオンライン化、顧客・販売側双方にメリット
    1. 双方にメリットがあるオンライン化
  3. これまでは地方企業のオンライン化が遅れていたが…
    1. IT導入補助金の活用状況
  4. オンライン会議アプリの活用が鍵
    1. 代表的なオンライン会議アプリ
  5. 変わりつつあるのは生活様式だけではない

営業担当者の「コミュニケーション」はオンライン化しやすい

いま地方企業でも、ITやICT(情報通信機器)を活用したオンライン化が進んでいる。IT企業はもちろん、このような先端技術を活用したツールの導入に以前から積極的だが、長年にわたってものづくりに取り組む製造業やそれ以外の業種でも、このような動きが顕著になりつつある。

コロナ禍で加速するオンライン化

そして、新型コロナウイルス感染防止のための在宅勤務によって、その流れが加速している。特に営業担当者の場合は、業務の多くを「コミュニケーション」が占める。コミュニケーションの部分はオンライン化しやすいため、いま足で稼ぐ営業スタイルからの変化が進んでいるわけだ。

スマホで使い方を撮影し、顧客にネットで紹介するメーカーも

例えば、ある地方の機械メーカーは、販売している機械製品の実際の使い方や検査方法などをスマートフォンやタブレットのカメラで撮影し、インターネットを使って顧客や見込み客に紹介する手法を最近取り入れた。

これまでは、実際に店舗に来てもらって機械製品の販売営業をするスタイルがメインだったが、人と人との接触による新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、営業の仕方を一部変えたのだ。

営業のオンライン化、顧客・販売側双方にメリット

実際に店舗で製品を見てもらったり使ってもらったりする意義はもちろんあり、営業担当者が顧客や見込み客のもとに出向いてコミュニケーションを取ることで、より信頼関係も高まる。しかし、営業のオンライン化は、このような行き来の手間を減らす。

双方にメリットがあるオンライン化

オンライン化できる部分は積極的にオンライン化し、来店の回数を必要な分だけに抑えることは、客側・販売側双方にメリットがある。

これまでは地方企業のオンライン化が遅れていたが…

中小企業庁が2017年3月に公表した「中小企業・小規模事業者のIT利用の状況及び課題について」という資料では、2017年における「IT導入補助金」の1次公募の採択件数が都道府県別に紹介されている。

IT導入補助金の活用状況

IT導入補助金は、中小企業や小規模事象者によるITツール導入費用の一部を国が補助する制度だ。各都道府県でどれだけ採択件数があるかを参照すると、各都道府県の中小企業のオンライン化の進捗の程度を推察することができる。

2017年におけるIT導入補助金の1次公募では7,511件の採択があった。そのうち3大都市(東京都・愛知県・大阪府)における件数は計2,303件で、全体の約30%を占める。一方、2016年6月時点における3大都市にある中小企業(小規模事業者を含む)の数は89万2,592社で、全国の合計数357万8,176社の約25%に相当する。

つまり、全国の約25%を占める3大都市にある中小企業が、IT導入補助金の採択では約30%を占めており、3大都市の中小企業の方がよりオンライン化を進めているということになる。言い換えれば、地方の中小企業はオンライン化が遅れていたというわけだ。

しかし前述の通り、この状況がいま変わろうとしている。新型コロナウイルス問題が、オンライン化への取り組みの程度を都市圏と地方で平準化させていることから、このような統計による割合も今後変化すると考えられる。

オンライン会議アプリの活用が鍵

今後、営業のオンライン化を進めたい企業は、何よりもまずオンライン会議アプリを活用できるようにすることが第一歩だ。

代表的なオンライン会議アプリ

最近ユーザー数を急速に増やしている「Zoom」やオンライン会話アプリの老舗の「Skype」、Googleが提供する新興の「Meet」などがその一例だ。若い世代の社員以外でもこれらのアプリを使いこなせるよう、企業内で使い方に関する研修などを行うのも良いだろう。

製造業では、自宅にパソコンが無い社員も少なくないはずだ。そのような場合には、会社側が専用のパソコンなどを貸与する必要がある。スマートフォンでもオンライン会話アプリが使えるが、表示画面が小さく、重要度が高いオンライン会議の際には力不足だ。

オンライン会議アプリでは、ハッキングなどが問題視されることもあり、社員に対するセキュリティ講座などを定期的に開いている企業もある。

変わりつつあるのは生活様式だけではない

新型コロナウイルスは人々の生活様式を変え、「ニューノーマル」という言葉も一般的に使われるようになりつつある。しかし、変わりつつあるのは生活様式だけではない。企業活動そして営業活動においても変化が起きている。営業のオンライン化には効率化などのメリットがある。業種によって相性の善し悪しはあるが、まずトライしてみることが重要だ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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