寄付金
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種々の広告や街頭で寄付を募っている場面を見かけることがある。個人として寄付をすることもあれば、事業者として寄付をすることもあるだろう。事業における寄付金は、通常の経費とは分けて考える必要がある。ここでは、寄付金と交際費の違いや、会計処理のしかた、税務上の注意をみていこう。

目次

  1. 寄付金とは?
  2. 寄付金の3つの分類!損金算入についても解説
    1. 分類1. 【指定寄付金等】該当する寄付金と損金算入の可否
    2. 分類2.【特定公益増進法人に対する寄付金】該当する寄付金と損金算入の可否、限度額
    3. 分類3.【その他の寄付金】該当する寄付金と損金算入の可否、限度額
  3. 寄付金を損金算入できるのはなぜ?
  4. 寄付金を処理する際の注意点
    1. 寄付金と交際費の区別をするポイント
    2. 消費税はどうなるか
    3. 個人事業主は損金算入できない
  5. 勘定科目の選択に迷う支出の実際の仕訳例
    1. 政治団体へ支払うお金(政治献金、政治家の後援会会費)や神社への寄進はどうするか
    2. 贈与
    3. ふるさと納税
  6. 社会貢献としての寄付も制度を理解して適切に処理

寄付金とは?

寄付金は、金銭、物品その他経済的利益の贈与、または無償の供与のことをさす。金銭を供与する場合はもちろん、価値のある物品を譲渡したり、本来の価値よりも安い金額で役務や商品を提供したり、本来受け取るべきものを受け取らなかったりする場合も寄付となる。

事業活動上で寄付金に注意が必要なのは、会計上の経費とすることができない場合や、税金計算上の経費(「損金」という。)になる範囲に制限がかけられている点である。寄付の本質は、税金への影響を考えてするものではないと考えられるが、正しく理解した上で行わないと、税務申告額を誤りかねない。

なお、国税庁では「寄付金」ではなく「寄附金」という漢字を用いるが、意味は同じであると考えられる。ここでは「寄付金」と呼ぶことにする。

寄付金の3つの分類!損金算入についても解説

寄付金は寄付をする先によって3つに分類でき、それぞれ損金算入の可否や限度額が異なるので解説する。

分類1. 【指定寄付金等】該当する寄付金と損金算入の可否

国または地方公共団体に対する寄付金と指定寄付金は、寄付した金額がすべて経費となり、法人はすべて損金となる。個人事業主の扱いは後述する。国または地方公共団体に対する寄付金とは、公立高校や公立図書館への寄付などが含まれる。指定寄付金の説明は、国税庁ホームページに以下のように記載されている。

「公益社団法人、公益財団法人公益を目的とする事業を行う法人又は団体に対する寄附金で、広く一般に募集され、かつ公益性及び緊急性が高いものとして、財務大臣が指定したもの」
具体的には特定の団体や取り組み等に対する寄付金が指定寄付金となる。以下がその例である。
日本赤十字社への寄付のうち指定分
国立大学法人
赤い羽根共同募金
東京オリンピックに係る「東京2020寄付金」
台風や地震など各種の自然災害により大規模な災害が発生した場合の寄付金

いずれも、寄付金の用途や指定寄付金となる期間が定められているので注意が必要である。

分類2.【特定公益増進法人に対する寄付金】該当する寄付金と損金算入の可否、限度額

特定公益増進法人に対する寄付金とは、国税庁ホームページには以下のような記載がある。

「公共法人等のうち、教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものと認められた特定公益増進法人に対する寄付金で、その法人の主たる目的である業務に関連するもの」

具体的には、特定公益増進法人は以下である。

独立行政法人
地方独立行政法人のうち、一定の業務を主たる目的とするもの
自動車安全運転センター
日本司法支援センター
日本私立学校振興・共済事業団
日本赤十字社(指定寄付金以外)
公益社団法人
公益財団法人
学校法人のうち一定のもの
社会福祉法人
更生保護法人

財務省ホームページ

特定公益増進法人に対する寄付金は、会計上は経費になるが、法人の損金算入は制限されている。損金算入の限度額は以下の計算式で計算する。

(資本金等の額の 0.375%+所得金額の 6.25%)× 1/2

資本金等とは、設立したばかりであれば、資本金と資本準備金の合計となる。その後、損失補填、自社株式の取得、合併や会社分割、株式交換、資本の払戻し等があった場合には、それらを調整する。所得は、会計上の利益に、税務調整を加えて計算するものである。

計算例は以下である。
資本金1,000万円、資本準備金1,000万円のため、資本金等は2,000万円
税引前当期純利益80万円で、税務調整20万円とした場合、所得は100万円

(2000万円× 0.375%+100万円× 6.25%)× 1/2 = 68,750円

このとき、特定公益増進法人に対する寄付金の損金算入限度額は6万8,750円となる。この限度額を超えた分は、次に説明する一般の寄付金に合算される。

分類3.【その他の寄付金】該当する寄付金と損金算入の可否、限度額

上記を除いた寄付金は、一般の寄付金となる。損金算入限度額は以下の計算式で計算する。

(資本金等の額の0.25%+所得金額の2.5%) × 1/4

先述の例と同じ数値を用いると、資本金等は2,000万円、所得は100万円となるため、

(2,000万円×0.25%+100万円×2.5%) × 1/4 = 18,750円

となる。よって、一般の寄付金の損金算入限度額は1万8,750円となる。この限度額を超えた分は、損金不算入として、所得を増やすこととなる。なお、いずれの寄付金についても、損金にできるのは寄付金を払った年度である。

寄付金を損金算入できるのはなぜ?

今まで見てきたように、寄付金は特定のものを除くと損金算入が制限されている。というのも、寄付金とはもともと見返りを求めてするものではないため、事業上必要な経費かどうかの判定が難しいものとされているためだ。

これを損金算入してしまうと、寄付をするほど法人税が安くなるため、実質的に税収の一部が寄付されていることになってしまう。これは、同一所得の者は同等の租税負担をすべきという課税の水平的公平という観点などから問題と考えられている。

一方で、事業を円滑に進めるために寄付が有効に働く局面もあると想定でき、寄付金をすべて損金算入しないというのも問題があると考えられる。よって、限度額を設けて、一部については損金算入が可能としたものである。

参考:税務大学校講本 第3節寄附金

寄付金を処理する際の注意点

寄付金の処理については、注意が必要なポイントがいくつかあるので、見てみよう。

寄付金と交際費の区別をするポイント

金銭や物品、役務の提供という行為は、接待交際目的で行われることもある。たとえば、特定の目的についての協力金や、慶弔による金銭、接待の飲食費を自社ですべて支払う、等である。このとき、寄付金と交際費をどのように区別したらよいのだろうか。

ここでは、会計上の話と、税務上の話の2つの論点がある。

会計における経費の集計という論点においては、交際費か寄付金かは経営管理上の問題である。すべてを交際費扱いとしたり、すべてを雑費としたりしても問題はない。勘定科目の選択の問題である。ただし、税務上の扱いに合わせる方が分かりやすく、誤りも少なくなるだろう。

税務上においては、寄付金も交際費も損金に上限が設けられている。よって、正しく区別をして把握し、税務申告に用いることが求められる。処理によって税額が変わってくる部分である。

税務上については、国税庁の以下の記載が参考になる。

「交際費等とは、得意先や仕入先その他事業に関係のある者に対する接待、供応、慰安、贈答などの行為のために支出する費用をいいます。寄付金とは、金銭、物品その他経済的利益の贈与又は無償の供与をいいます。一般的に寄付金、拠出金、見舞金などと呼ばれるものは寄付金に含まれます。ただし、これらの名義の支出であっても交際費等、広告宣伝費、福利厚生費などとされるものは寄付金から除かれます。」

国税庁 タックスアンサーNo.5262

つまり、名目よりも実態をみて判断するということだ。ここで、1986年11月29日の国税不服審判所の裁決が参考になる。

「一般に寄付金とは、金銭その他資産の贈与又は経済的な利益の供与のうち、事業の遂行に直接関係のあるもの以外のもの、すなわち、事業の遂行に直接関係ないもの及び事業の遂行との関係が明らかでないもの」

国税庁の記載はこれの裏返しで、交際費等は「得意先や仕入先その他事業に関係のある者に対する」と相手先を限定している。

また、同裁決において「特定の政治団体に対する本件支出金は、請求人の事業遂行に直接関係ないものであるので寄付金に該当する」となっている。これらを勘案すると、相手先が事業に直接関係があり、かつ接待や慰安等を目的としていれば交際費、その他の場合は寄付金、とされる理解でよい。

国税不服審判所 昭和61年11月29日裁決

消費税はどうなるか

寄付金は、基本的には消費税が課税されない。寄付とは、なにか物品やサービスを購入する対価として払うわけでもなければ、なにかを期待してするものでもないため、消費税の要件の1つである「対価性」を満たさないとされている。

国税庁タックスアンサーNo.6463

個人事業主は損金算入できない

ある行為が寄付金となった場合、法人と個人とで扱いが異なるので注意が必要である。法人の場合、寄付金などで会計処理をし、税務上は所定の方法で計算して申告することは先述のとおりである。

一方、個人事業主の場合は、寄付金を損金に算入するという考え方がない。個人の確定申告において、「寄付金控除」を受けることになる。もちろん個人事業主の経営管理上把握することは差し支えないが、個人事業主は税務ベースで会計処理することが多い。よほどの理由がない限り、寄付金は個人事業主の経費や損金にならない、という認識でよい。

勘定科目の選択に迷う支出の実際の仕訳例

自社の事業内容と支払う先の関係によって、処理が異なることがあるため、例を挙げて説明する。

政治団体へ支払うお金(政治献金、政治家の後援会会費)や神社への寄進はどうするか

どのような事業をしていて、どのような目的で支払うのかがポイントとなる。政治団体と直接関係のある事業をしている場合は、交際費や他の勘定科目となりうるが、そうでない場合は国税庁ホームページの以下の記載に従うものと考えられる。

「次のような事業に直接関係のない者に対する金銭贈与は、原則として寄附金になります。」
(1) 社会事業団体、政治団体に対する拠金
(2) 神社の祭礼等の寄贈金

よって、寄付金となる。たとえば、100万円の寄付をした場合の仕訳は、寄付金という勘定科目を用いて以下の通りとなる。

借方貸方
寄付金1,000,000現金1,000,000

神社への寄進についても営んでいる事業や目的にかかわる部分であるが、よほどでない限りは、上のタックスアンサーの記載に従い、原則として寄付金とするものと考える。

国税庁 タックスアンサーNo.5262

贈与

贈与については、いくつかパターンがある。まず、事業者から役員や従業員への贈与の場合は、業務に関して渡すものや継続的に渡すものであれば賞与、そうでなければ寄付金となる。たとえば業務目標を達成した社員に、貯蔵品として保有していた1万円の商品券を渡した場合の仕訳は以下のようになる。

借方貸方
賞与10,000貯蔵品10,000

法人と法人の間の場合、相手が第三者であれば一般の寄付金となる。グループ会社間で支払われる場合、内容によっては全額が損金にならない寄付金となることもあるので、確認が必要である。

ふるさと納税

ふるさと納税もひとつの寄付の形であろう。個人の場合は、ふるさと納税額のうち2,000円を超えた分が所得税や住民税から控除されるうえ、自治体によっては返礼品がある。

一方、企業型ふるさと納税は、「地方創生応援税制」といい、個人とは扱いが異なる。従来、地方自治体への寄付は全額が損金算入され、寄付金に法人税率をかけた分だけ法人税額が少なくなるものであった。

企業型ふるさと納税では、さらに寄付額の30%を法人地方税から差し引けることになった。これにより法人は、自社事業に関連のある地方産業や地域の活性化に少ない負担で資金を投じることが可能になるものと言える。

社会貢献としての寄付も制度を理解して適切に処理

寄付については、個人と法人の場合や、寄付先によって扱いが異なる。とくに税金計算上は損金算入に制限があるため、通常の経費と扱いが異なることをご理解いただけただろうか。寄付は事業者の社会貢献の1つの形であり、見返りを求めてするものではないが、寄付をした際の税務申告を誤らないように、正しく理解しておきたい。

文・新井良平(バックオフィスLABO代表)

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