新株
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企業が新たに資金調達を図る際は、新株を発行する方法が採られることが多い。その際、株式をあらかじめ決められた価格で購入できる「新株予約権」と呼ばれる権利が発行されることがある。

新株予約権は増資を目的に発行されるほか、ストックオプション制度の導入を図るために発行されることもある。使い方によっては大きな効果が期待できる新株予約権だが、そのメリットやリスクについて理解を深めておこう。

目次

  1. 新株予約権とは?
  2. 新株予約権の4つの種類
    1. 1.ストックオプション
    2. 2.社外向け発行
    3. 3.無償割当
    4. 4.有利発行
  3. 新株予約権のメリット
    1. 従業員や取締役のやる気を引き出せる
    2. 資金調達手段の一つとして活用できる
    3. 敵対的買収に対する防衛策になる
  4. 新株予約権のリスク
  5. 新株予約権の発行・手続き方法
  6. 買取請求ができる条件
  7. 安全かつ健全な資金調達方法を理解しよう

新株予約権とは?

企業が発行する株式を、定められた価格で前もって取得できる権利を、新株予約権という。権利を行使できる期間が定められることが特徴だ。通常の新株と異なり、権利行使に対する「予約」ができる新株ととらえればわかりやすいだろう。

新株予約権は、投資家や既存の株主がその権利を行使することで、株式を購入できる。購入する際は、証券会社を通した手続きが必要で、審査をクリアすれば新株を受け取れる。

社債などと違い、株式は返済義務がなく、会計上は純資産として計上される。権利が行使されれば企業の資本に回せるため、新株予約権を発行することは将来への出資ともとらえられるが、権利行使されなければ無効となるため負債ととらえることもできる。

新株予約権の発行は、さまざまなメリットがある反面、それなりのリスクもあることを意識する必要があるだろう。うまく利用すれば、企業にとって大きなメリットを生み出せる経営手法となり得る。

新株予約権の4つの種類

新株予約権の種類は、社内向けと社外向けに大別できる。社外向けは、さらに3種類に分けられる。それぞれの特徴を、以下で確認しておこう。

1.ストックオプション

社内向けに発行される新株予約権のことを、ストックオプションという。従業員や取締役が、決められた価格で自社株を購入できる権利である。一般的には、購入額を現在の株価より低い金額に設定した上で、権利を行使できる期間を数年後に設定する。

大きなメリットは、役員や従業員のモチベーションアップにつながることだ。数年後、自社の株価が引き上げられた段階でストックオプションの権利を行使し、株式を売却すれば利益を得られる。自らの頑張りが自社の業績向上につながれば、株式の売却で得られる利益も大きくなるため、やる気も高まりやすくなるだろう。

また、権利行使できる期間を数年先に設定できるため、優秀な人材の流出を防止することにもつながる。会社の業績が上向き、将来得られる利益が大きくなることがわかれば、離職の抑止力になる。定期的にボーナスを確保できない中小企業にとっても、ストックオプションは人材を引き止める有効な手段として利用されている。

2.社外向け発行

主に資金調達を目的として発行される新株予約権は、社外の投資家や権利者向けに発行される。社外向けに新株予約権を発行すれば、得られるオプション料をすぐに事業資金に回せるため、借り入れをせずに実行できる資金調達方法と言える。

敵対的買収に備える意味で、社外向けに発行される場合があることも押さえておこう。過半数の株式を特定の企業に買われてしまうと企業買収が成立してしまうため、敵対企業と関係を持たない企業に向けて新株予約権を発行し、買収を防止する戦略が取られることがある。

このような買収防衛策はポイズンピルとも呼ばれ、日本では抑止力として活用されるケースが多い。ただし、株主に大きな悪影響を及ぼすおそれがあるため、導入する際は慎重な検討が求められる。

3.無償割当

既存株主に無料で新株予約権が配られることを、無償割当という。大規模な増資を実施する場合に、採用されることが多い手法である。増資のために新株を大量発行すると、基本的に株価の下落は避けられない。このような状況で、既存株主が受ける損失を補てんする意味で、新株予約権の無償割当が行われる。

4.有利発行

株主以外の第三者に対し、株価を有利な価格に設定する手続きを有利発行という。無償で発行するケースもあるが、通常は常識的な価格以下で付与される。企業買収などの際に第三者割当増資を実施する場合、有利発行により経営統合の確実性を高め、シナジー効果を得られることが期待される。

ただし、有利発行は「株式の安売り」という側面があるため、既存株主に大きな損失を与えるリスクがある。有利発行を実施する場合は株主総会を開催し、有利発行が企業にとって必要であることを説明した上で、特別決議を得なければならない。

新株予約権のメリット

前項では、新株予約権の種類とそれぞれのメリットを紹介した。ここでは、改めて会社側にとっての主なメリットをチェックしておこう。

従業員や取締役のやる気を引き出せる

ストックオプションとして新株予約権を発行すれば、企業で働く人たちのモチベーションアップにつながる。数年後に受け取れるインセンティブは、自社の業績が上向くほど大きくなるため、全社的にやる気を引き出せるだろう。

新株予約権は行使期間を数年先に設定できることから、優秀な人材の流出を防ぐ効果も期待できる。求人の際も、ストックオプション制度をアピールすれば人材を確保しやすくなる。

従業員や取締役にとって、リスクがほとんどないこともメリットだ。万が一株価が下落しても、権利を行使しなければ損失を被ることがない。

資金調達手段の一つとして活用できる

金融機関から融資を受けて資金調達を図る場合は、当然返済義務が発生する。しかし、株式発行による資金調達の場合は返済義務がないため、リスクを極力抑えた増資ができる。

また、新株予約権を有償で発行する場合、権利を取得してもらう対価としてオプション料を受け取れるため、迅速な増資が実現できる。

新たな株主を獲得できる可能性があることも、新株予約権のメリットと言えるだろう。特定株主の割合が増えれば、より有利な経営を行うことができる。

敵対的買収に対する防衛策になる

株式会社は程度の差こそあれ、常に買収される危険にさらされている。自社株の過半数を保有されれば、実質的な買収が成立してしまう。新株予約権は、このようなリスクに備えるために、敵対企業とは関係のない株主に発行できる。

日本では、買収に対する抑止力として新株予約権が発行されるケースが多い。万が一の備えとして、ポイズンピルと呼ばれる買収対抗策に活用できることを覚えておこう。

新株予約権のリスク

企業にとって、新株予約権を発行することのリスクとして、発行済みの株式が希薄化することが挙げられる。株式が増えると、1株当たりの価値は下落する。株価が大幅に下がれば、今後の資金調達が困難になる、また既存株主からの信頼が低下するといったリスクがある。

資金調達を目的とした新株予約権を発行する場合、株価の大幅な下落を防ぐためには、発行数に注意することが重要である。

新株予約権の発行・手続き方法

新株予約権の発行方法には、前述した有利発行と、公正発行の2種類がある。公正発行とは、すべての株主に対して新株予約権を発行する方法であり、社外向け発行や無償割当に加え、ストックオプションも公正発行とみなされている。

上場会社が公正発行をする場合は、取締役会を経て証券会社に依頼するだけで、発行が完了する。しかし、非公開会社が新株予約権を発行するケースや、上場会社でも有利発行を導入するケースでは、株主総会の特別決議を得なければならない。この場合は、以下のようなステップを踏んで手続きが進められる。

  1. 株主総会において、発行する理由を説明し、特別決議を得る。
  2. 引き受けの申し込みがあった場合、割り当て数を通知する。割り当てる人や数は、株主総会で決定する。
  3. 発行日に新株予約権原簿を作成する。
  4. 割り当て日から2週間以内に変更登記を行う。

買取請求ができる条件

株主に重大な影響を与える行為を企業が行った場合、企業に対して新株予約権の買取請求ができる場合がある。将来株主になり得る権利者を保護する目的で、以下に挙げるようなケースにおいて、買取請求を行うことができる。

・株式を譲渡制限の対象とした場合、譲渡する際に取締役会または株主総会の承認を得なければならない。株主にとっては、すぐに譲渡できない状況におかれることになるため、買取請求が認められる。

・株式を全部取得条項付種類株式にした場合も、買取請求が認められる。株主総会の特別決議で承認を得れば、発行しているすべての株式を企業がいつでも取得できるため、譲渡益を得られないまま株主が株式を手放さざるを得ない可能性があるからだ。

・すでに発行されている株式が分割された場合、分割されない新株予約権の株式は価格が下がる。また、株式が交換・移転された場合、すべての発行済み株式が他社のものになる。これらのケースでは、予約権を持つ者に不利益が生じる可能性があるため、買取請求が認められる。

・会社合併が行われた場合も、株式交換や株式移転と同様に、異なる株式を付与されることになる。株主にとって不利となるため、買取請求が認められる。

安全かつ健全な資金調達方法を理解しよう

返済義務のない新株予約権を発行すれば、リスクを抑えた資金調達を図れる。また、社内のモチベーション向上や、敵対的買収への防衛策としても、有効な手段である。

一方で、既存株式の価値が下がるおそれがあるため、企業と株主の双方が不利益を被るリスクもはらんでいる。メリット・デメリットをしっかりと吟味した上で、自社にとって適切な導入を行うことが重要だ。

文・八木真琴(ダリコーポレーション ライター)

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