矢野経済研究所
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2018年度の医薬品・医療器材メーカー物流アウトソーシング市場は1,020億円

~医療分野の物流受託事業の安定性を見込んだ参入、倉庫開設なども増加の見込~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内の医薬品・医療器材物流アウトソーシングビジネス、医療器材通信販売ビジネス、中古医療機器流通ビジネスなどを調査し、市場規模、参入企業動向、将来展望を明らかにした。ここでは医薬品・医療器材物流アウトソーシング市場について公表する。

医薬品・医療器材物流アウトソーシング市場規模推移

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1.市場概況

2018年度の国内における医薬品・医療器材物流アウトソーシング市場規模(受託企業売上高ベース)は、前年度比6.3%増の1,020億円となった。医薬品・医療器材等の出荷量および物流関連企業等への委託率の増加、委託業務範囲の拡大などが認められ、当該アウトソーシングサービスの市場は堅調な推移を示している。2010年度比での市場規模は1.5倍以上に伸びている。

2.注目トピック

国内の大手製薬企業等による本格的な外部委託が進展

1990年代から外資系製薬企業、外資系医療機器企業を中心に国内向けの物流アウトソーシングの需要が顕在化した。2000年代に入り、国内大手製薬企業などが本格的な物流アウトソージングを導入したことで注目され、その後、一般的なサービスとなってきた。

かつて、国内の大手製薬企業等は、自ら物流センターを開設し、直接もしくは関連会社等を通じ、倉庫内管理、出荷業務などを行うことが多かった。現在では、包括的・総合的な物流管理を行える物流関連企業が増えており、製薬企業はこういった専門企業に外部委託することによる業務効率化、業務品質の向上に目を向けている。さらに、2018年12月に厚生労働省から医薬品流通基準に関して、日本版GDP(Good Distribution Practice)ガイドラインが発出され、物流についてもGDPに基づく品質管理が求めらるようになった。GDP対応が可能かどうかは、外部委託先の選定等に関する重要なポイントとなってきている。

3.将来展望

既存のメーカー物流業務アウトソーシングの観点では、医薬品・医療器材業界内の外部委託比率は6割以上になっているとみられ、潜在市場は限定される方向にある。
ただし、医療分野は景気変動の影響を受けにくいこともあり、物流関連企業にとってその受託事業の安定性は魅力的である。既存の受託企業が当該事業を強化しているのに加え、新たにメディカル領域を対象とした倉庫を開設するなど、新規参入を試みる企業が増加している。
なかには、医薬品卸売等を主体とする企業による医薬品メーカー物流の支援サービスも存在しており、一方で医薬品卸売業と物流関連企業のアライアンス事例なども生まれており、メーカー物流から患者までの末端流通にいたるまでを、一気通貫で捉える機運が台頭している。