正社員の4割以上が「静かな退職」ーーこんな結果が人材サービス会社マイナビの調査で明らかになった。世代を問わず「静かな退職」が広がっており、企業の中途採用担当者の約4割も「静かな退職」に賛成している。

正社員の4割以上が「静かな退職」、今後も「静かな退職」を続けたい人が7割

「静かな退職」とは、やりがいやキャリアアップは求めずに決められた仕事を淡々とこなすことを指す。

マイナビの調査によると、が20~50代の正社員の44.5%が「静かな退職」をしていると回答した。各世代とも40%台となっており、幅広い年代に「静かな退職」を行っている人が存在している。

また、今後も「静かな退職」を続けたい人が70.4%となっている。

「働きがいのある会社」に関する調査・分析を行うGreat Place To Work(R) Institute Japanの調査では、「静かな退職」をしている人の半数以上が、将来の収入やスキルアップできないことに不安がないと回答している。こうした見通しを持っていることも「静かな退職」を続ける人が多いことの理由の一つかもしれない。

「静かな退職」実践者の半数以上は将来の収入に不安なし

マイナビは、「静かな退職」をするようになったきっかけについて、自由回答の内容に基づいて次の4つのタイプに分類している。

タイプ きっかけ 回答内容(一部)
不一致 仕事・環境の不適合による意欲低下 今の職場にはやりがいがある仕事がない(50代)
上司と意見があわず、話しても無駄なので静かに黙々とこなしている(40代)
女性が産休育休後から復帰後も長く働けるような職場環境ではなく、キャリアアップは求めていないため(20代)
評価不満 処遇・評価に対する不平不満がある 出世する職種ではないし結果を出しても給料は変わらないため(40代)
キャリアアップが望めない環境だから。昇給もないし、評価されることもないから(50代)
自分で仕事を行い、面談時にアピールしても評価をされないから(20代)
損得重視 損得を考え静かな退職を実施 キャリアアップすると、仕事量が増えてプライベートの時間が確保できなくなるから(20代)
お金のために働いているのでそれに見合った仕事量はしている(30代)
コスパがいいので(30代)
無関心 価値観として変化・上昇を求めてない キャリアアップすることに興味がないから(20代)
仕事にやりがいを求めていないし、キャリアアップをしたいとも思わないから(30代)
波風立てずに淡々とこなすことが自分にあっていると思うから(30代)

企業の中途採用担当者に「静かな退職」について聞いたところ、「賛成」(38.9%)が「反対」(32.1%)を上回った。

賛成が多かった業種は「IT・通信・インターネット」「金融・保険、コンサルティング」「運輸・交通・物流・倉庫」。一方、反対が多かった業種は「不動産・建設・設備・住宅関連」「流通・小売」だった。

賛成意見には「人それぞれだと思うので、キャリアアップを求めない働き方も考慮すべき」、「そういった人材がいないとなりたたない業務もある」など。一方、反対意見には「他の従業員に伝播する」、「会社としては有益ではない」などが見られる。

調査を行ったマイナビキャリアリサーチラボの朝比奈あかり研究員は、「静かな退職」が一般的になりつつあるとした上で、「仕事や環境の不一致や評価・処遇への不満、仕事環境などが要因で、不本意ながら『静かな退職』を選択している人がいることも見えてきました。不本意な静かな退職者は不満を抱えながら働いている可能性が高いため、企業は少しでも不本意な静かな退職者を生み出さないような工夫や制度改革が求められるのではないでしょうか。価値観が多様化する昨今、企業は個人の多様な価値観を受け入れ、柔軟な働き方を提供し、向き合っていくことが重要だと考えます」と解説している。

「マイナビ 正社員の静かな退職に関する調査2025年(2024年実績)」の詳細はこちら
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20250422_95153/

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