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親族が亡くなった時に財産を残している場合には、その財産は遺産として遺族が所有権を引き継ぐことになります。

このように、遺族が遺産を一定のルールに従って分け合うことを「遺産分割」と呼びます。

この記事では、「どの親族がどれだけの割合の遺産を相続することができるのか」について、具体的に説明します。

1. 遺産分割で損をしないために最低限知っておくべきルール

遺産分割をめぐっては、親しかった親族同士が争いになることも珍しくないというのが現実です。

遺産分割で損をしないために最低限知っておくべき法律のルールとしては、次のようなものがあります。

①法律は「遺言書がない場合のルール」
②ごく近い関係の親族に認められる遺留分
③遺言書がない場合は遺産分割協議で相続割合を決める
④相続税は遺産分割割合に応じて負担する

以下、順番に説明していきます。

なお、遺産分割については法律上のルールがどのようになっているのか?を知っておくとともに、弁護士や司法書士といった法律の専門家にアドバイスを受けることも検討してみてください。

損をしてしまうことを避けるだけでなく、法律的な知識に基づいて解決策を話し合うことがトラブル回避につながります。

1-1. ①法律は「遺言書がない場合のルール」

誰が相続人となるのか、それぞれの相続人がどれだけの割合の遺産を相続する権利があるのかといったルールについては、民法の相続編という部分でルールが決められています。

一方で、亡くなった人(被相続人)が「自分の死後には自分の財産はこのように分け合ってほしい」という形で遺言書を残していた場合には、上の民法のルールよりも遺言の内容が優先されることに注意が必要です。

日本の法律では、財産の元所有者(被相続人)が自分の死後の財産の使い方についても自由に決めることができるというのが大原則なのです。

民法の遺産分割についてのルールは、いわば以後書の内容が十分でないときにそれを補完する役割として存在しているということができます。

1-2. ②ごく近い関係の親族に認められる遺留分

上で見たように、遺産分割の方法について遺言書が残されている場合には、その内容を最優先に遺産分割を行うのが原則です。

ただし、被相続人とごく近い関係にあった遺族(配偶者や子供、父母など)には「最低限これだけの遺産は分けてもらえる」という割合が権利として保障されています。

この権利のことを「遺留分」と呼びます。

例えば、「自分の死後には全財産をこの宗教団体に寄付する」といったような内容の遺言書が残されている場合には、被相続人の配偶者や子供は「自分には遺留分があるので、最低限これだけは遺産相続を認めてほしい」ということを訴えることができます。

実際には、遺言書で相続人として指定された人と交渉を行うほか、遺留分減殺請求という法律上の手続きによって遺留分を実現することになります。

1-3. ③遺言書がない場合は遺産分割協議で相続割合を決める

上では遺言書が残されている場合について見ましたが、遺言書が残されていない場合には、民法のルールによって遺産の分割を行うことになります。

一方で、民法に定められているルールというのは「配偶者や3分の2、父母には3分の1」といったように、ごくざっくりとした内容でしかありません。

遺産がすべて現預金などであればこのようなルールを単純に適用するだけでもなんとかなるかもしれません。

しかし、現実には割合によって分け合うことが難しい財産(建物などの不動産や、宝石など)もありますし、割合によって分け合うことが必ずしも平等にならないこともあるでしょう。

そのため、実際に相続が発生し、遺言書が残されていない場合には、相続人全員が参加する遺産分割協議によって、誰がどれだけの財産を相続するのかを話し合いで決める必要があります。

遺産分割協議で話し合いを行い、決定した内容については遺産分割協議書という書類にまとめ、相続人全員が署名押印します。

この遺産分割協議書は後に証拠として残す意味があるだけではなく、相続登記(不動産の名義変更手続きのこと)などの法律上の手続きを行うときにも必要書類として提出する必要がありますから、非常に重要な書類となります。

なお、遺言書が残されている場合であっても、相続人が遺産分割協議によって遺言書と異なる遺産分割の方法に合意することも問題はありません。

1-4. ④相続税は遺産分割割合に応じて負担する

遺産の金額が一定額を超える場合(目安は3600万円)には、相続税を負担しなくてはなりません。

この相続税は、相続人となる人が、実際に相続をした割合に応じて負担するのが原則です。

例えば、遺産のうち4分の3を実際に相続した人は、相続税についても4分の3を負担するといったかたちですね。

相続税は原則として現金で納める必要がありますから、もし相続する遺産のほとんどが不動産である場合には、相続税の納税期限(相続発生から10カ月です)までに必要な現金を準備できるめどをつけておく必要があります。

また、相続税の納税期限までに、遺産分割協議が完了していないケースも考えられます。

相続税の申告については各種の税軽減措置(相続税の配偶者控除や、小規模宅地等の特例等)がありますが、これらは遺産分割協議が完了していることが利用条件になっています。

そのため、遺産分割協議はできる限り速やかに完了しなくてはなりません。

ただし、どうしても遺産分割協議を相続税の申告納税期限までに完了できない場合には、ひとまず税軽減措置を適用しない形で相続税申告を行うとともに、相続税申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付することが考えられます。

この見込み書を添付しておくと、相続税の申告を行った後で遺産分割協議を完了し、さらにその後税務署に対して更正の請求を求めることで税軽減措置をさかのぼって適用してもらうことが可能になります。

2. 亡くなった人との生前の関係が影響することがら

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遺産分割においては、亡くなった人(被相続人)との生前の関係がどのようなものであったかにより、相続する遺産の割合に影響が出るケースがあります。

具体的には、次の2つのケースが問題になることがあります。

 ①特別受益の持ち戻し
 ②寄与分の主張

以下、順番に解説します。

2-1. ①特別受益の持ち戻し

特別受益の持ち戻しとは、相続人の中に生前贈与を受けた人がいる場合には、その贈与を受けた金額を遺産の中に戻して遺産総額を計算しなおし、計算後の遺産総額をもとに遺産分割を行うことをいいます。

例えば、被相続人が生きている間に財産をすでに受け取っていたような場合(生前贈与を受けた場合)には、「遺産を先にもらった」のと同じような扱いをされることがあるのです。

相続の際には、先にもらった財産を差し引きした金額を相続することになりますから、生前贈与を受けた人の側からみると、遺産の分け前が減る結果になりますね。

なお、特別受益とみなされるのは生前贈与に限らず、遺贈や生活資金として受け取った金品も含みます。

◼︎特別受益の持ち戻しの具体例

例えば、相続発生時の遺産総額が1億円、相続人として長男と次男の2人がいた場合で、次男が生前贈与として2000万円を受け取っていたような場合を考えます。

もしこの生前贈与2000万円を考慮することなく遺産分割を行ったとすると、法定相続分は兄弟で平等ですから、長男が5000万円、次男も5000万円を相続することになります。

一方で、特別受益の持ち戻しを行ったとすると、遺産総額は1億円+生前贈与分2000万円=1億2000万円となります。

これを兄弟で平等に分け合うと6000万円ずつということになり、次男はすでに受け取った2000万円を差し引きした4000万円を相続することになります。

2-2. ②寄与分の主張

相続人の中に、被相続人の生前に相続財産を増やすことに貢献した人がいる場合には、その相続人は他の相続人よりも多くの遺産分割を受ける権利が認められます。

これを寄与分と呼び、具体的には法定相続分にプラスするという形で通常よりも多くの遺産相続を受けることが認められます(家庭裁判所に遺産分割審判を申し立てることで認めてもらうケースが多いです)

また、通常の寄与分の主張は相続財産を増やしたという具体的な貢献をもとに主張されますが、それ以外にも「特別の寄与」というものが認められるケースがあります。

特別の寄与とは、具体的には被相続人の介護や看護といった負担をしていた人に認められる寄与分のことです。

ただし、特別の寄与と認めてもらうためには、通常親族であれば当然に行うべき不要のための行為を超える行為である必要があります。

具体的には、週に数回生活の面倒を見るために被相続人の家に通っていたとか、通院につきそったといったような程度では認められないケースがほとんどです。

認められるケースとしては、10年間以上にわたって被相続人の事業経営のサポートを行ったとか、つきっきりで生活の面倒を見ていたような場合があります。

3. まとめ

今回は、遺産分割について、損をしないために押さえておくべき基本的なポイントについて解説しました。

誰が相続人となり、どれだけの割合の遺産分割を受ける権利を持つかについては、民法上ルールが定められています。

一方で、亡くなった人が遺言書で具体的に財産処分の方法を定めていた場合には、遺言書の内容が優先されることに注意が必要です。

法律上は相続人が平等の割合で遺産分割を受けることになっていますが、ほとんどの相続では遺産分割協議によって具体的に誰がどの財産を相続するのかを話し合いで決める必要が生じます。

親族同士と言っても利害が直接的に対立する場面になりますから、場合によっては弁護士などの法律の専門家に間に入ってもらうことが解決につながる可能性もあります。

遺産分割の進め方で親族間でもめることが予想される場合には、専門家のアドバイスを受けることも検討してみてくださいね。
(提供:相続サポートセンター