矢野経済研究所
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ファッション、テーブルウェアなどこれまでにない領域でのバイオマスフィラーの採用が始まり、既存のプラスチックの枠組みを超えた新たな用途に可能性も

~2030年のバイオマスフィラー国内市場規模はフィラーベースで1,605t/年、複合樹脂ベースで3,680t/年を予測~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、バイオマスフィラー及びその複合樹脂の国内市場を調査し、参入企業の動向、将来展望を明らかにした。

バイオマスフィラー 市場規模推移

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バイオマスフィラー複合樹脂 市場規模推移

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1.市場概況

現在、日本国内で活用されている代表的なバイオマスフィラーは木粉、デンプン、セルロース繊維、貝殻、卵殻など、バイオマス由来の原料をさし、それらの原料は、セルロース繊維やデンプンのように工業材料として生産されるものもあるが、多くは建築現場などから排出される廃材や製材端材、間伐材、ホタテや牡蠣をむき身などに加工する際に排出される殻、食品加工工場、割卵業者などから排出される殻など、端材・廃材や残渣が中心である。
これらは従来、肥料・飼料・土壌改良剤などの農業分野に加え、貝殻・卵殻については学校校庭などのラインなどとして活用されてきたが、需要量が限られており発生量の多くをカバーするまでには至っていない。また、いずれの用途も廃物利用の領域を出ておらず、安値で取引されるダウンサイクル(元のものよりも付加価値が低いものとしての活用)がほとんどという状況であった。
しかし近年、気候変動や海洋汚染などの環境問題に対する関心が高まり、化石資源由来プラスチックの使用量を削減しCO2の排出を抑制するカーボンニュートラル(CN)や、石油や鉱物などの有限資源から再生可能資源への転換が強く求められるようになっている。これにより日用品や玩具、雑貨類などを中心に、従来使用していたプラスチックに木粉、卵殻、貝殻といったバイオマス由来のフィラー(充填材・添加材)を高配合し、化石資源由来プラスチックの使用量を削減するという取り組みが進展している。廃物利用のダウンサイクルが中心であったバイオマスフィラーの用途が、樹脂に充填され様々な製品へと展開されるアップサイクル(元のものよりも付加価値の高いものとしての活用)へと広がりつつある。

本調査では、バイオマスフィラーのアップサイクルでの動向を対象とした。アップサイクルされるバイオマスフィラーの国内市場規模は、2024年は複合樹脂ベースで368t、フィラーベースで189t、2025年見込みは複合樹脂ベースで490t(前年比133.2%)、フィラーベースで254t(同134.4%)と推計され、2030年には複合樹脂ベースで3,680t、フィラーベースで1,605tになると予測する。(いずれも建材向け木粉を除く)

2.注目トピック

バイオマスフィラーのもう一段の拡大には「プラ代替」の枠にとらわれない提案と用途開発が必要

最近では様々な分野でバイオマスフィラーを複合化してプラスチック使用量削減につなげる動きが進んでいる。加えて、製品に占めるフィラー(充填材・添加材)の重量比が51%を超えた(プラスチックの重量が半分以下になった)場合、分類上はプラスチックではなくなり、使用後にプラスチックごみではなく可燃物として処理できるということから、使用済製品の回収からリサイクルまでの仕組み・スキームが確立していない日用品や雑貨を中心にバイオマスフィラーの使用量は今後も順調に増えていくものと見られる。

ただ、こうした使い方は上述のダウンサイクルよりは付加価値が大きく向上しているものの、フィラーの使い方としてはさほどの付加価値を生み出しているとは言えない。
既存の材料からの代替である限り、元の材料と価格や物性で比べられ、大きな採用メリットが無いと採用が進まないということになりがちである。もともとあった何かを代替するのではなく、バイオマスフィラーならではのメリットを訴求し、採用につなげていく取り組みが必要と考える。

3.将来展望

バイオマスフィラーは特に新しい材料ではなく、木質プラスチック建材や、プラスチックへの充填材として使用することで充填しないものよりもプラスチックの使用量を削減する減プラを狙った複合樹脂といった用途で以前から使用されてきた。しかし、ファッション、テーブルウェアなどプラスチックの枠を超えた用途での採用が始まってからはようやく数年が経過したところであり、材料としては“スタートアップ”の段階にある。

新しいプロダクトを新しいマーケットで幅広く展開していくためには、自社のこれまでの実績や既存の枠組みのみにとらわれることなく、ターゲットとする用途や販売先を設定し、材料を供給するユーザー企業の製品コンセプトやブランド力と自社のバイオマスフィラーがどのようにつながり、双方が組み合わさることでさらなる価値向上に結びつけることができるか、ユーザー企業の製品やブランドに込めた思いや理想を把握し、自社のバイオマスフィラーで何ができるのか、説得力のある提案を進めていけるかが問われる。

そのためにも、自社のプロダクトの訴求点がどこにあるのか、バイオマスということ自体が価値になるのか、従来のプラスチックにはない風合いやデザインが評価されるのかを把握するとともに、ファッション、テーブルウェア、家具、自動車など、これまで馴染みのなかった産業界も含めてトレンドを把握し、CO2削減や減プラだけではない視点、切り口での製品開発や提案を新たな領域での採用に結びつけていくことが求められている。

調査要綱

1.調査期間: 2025年1月~3月
2.調査対象: セルロース、木粉、卵殻、カカオハスクなどをフィラー化したバイオマスフィラーとその複合樹脂製造企業、関連企業
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンラインを含む)、ならびに文献調査を併用
<バイオマスフィラー市場とは>
本調査におけるバイオマスフィラーとは、セルロース、木粉、卵殻、カカオハスク、野菜くず、もみ殻、貝殻などバイオマス由来の原料を微細粉末化したものを指す。本調査では、バイオマスフィラーそのものではなく、プラスチックと複合化し付加価値を付けたもの(アップサイクル)を調査対象として取り上げる。

なお、市場規模の算出にあたっては、建材向け木粉及びその複合材料の分は除外した。建材分野において木粉は1990年代から30年以上にわたり使用されており、本調査テーマであるバイオマスフィラーの新たなアップサイクルの動向とは方向性が異なると考えられるためである。
<市場に含まれる商品・サービス>
バイオマスフィラー及びその複合樹脂(セルロース、木粉、卵殻、カカオハスク、野菜くず、もみ殻など)

出典資料について

資料名2025年版 バイオマスフィラー市場の展望と戦略
発刊日2025年03月27日
体裁A4 145ページ
価格(税込)198,000円 (本体価格 180,000円)

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