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(画像=相続サポートセンター)

皆さんは、相続放棄についてどの程度ご存じでしょうか?

相続手続きの中で、どのような場合において、相続放棄をしなければいけないか理解されていらっしゃいますか?

相続には様々なパターンがありますが、私たちはどのような場合に相続放棄をすべきかについて、いくつかの場合分けをして、分析していきます。

相続放棄に興味のある方は、ぜひ最後までご覧ください。

1. そもそも相続放棄とは?

まずは相続放棄の基礎的な内容についてお伝えさせて頂きます。

相続放棄というのは、その表記からも想像することができるように、相続手続きにおいて、亡くなった方(「被相続人」といいます)の財産を相続することを放棄することを言います。

ここで、相続放棄をどのような場合に行うべきかについて少し考えてみましょう。

相続人が被相続人から承継すべき相続財産としては、現金・預貯金・株式・不動産・その他の財産が考えられます。

ところが、相続財産というのは、必ずしも合計するとプラスになる訳ではありません。

例えば、現金が200万円あったとしても、株式の財産的評価を算出すると、マイナス500万円であった場合、合計すると、マイナス300万円になってしまいます。

通常、相続をするとプラスの財産を譲り受けることができて財産的には増加することになりますが、場合によってはこのようなマイナスの財産について承継の是非を迫られることになります。

このとき、財産的評価だけに着目すると、マイナスの財産を相続してしまうことで、相続人の財産もその分マイナスとなってしまいますので、この場合、相続放棄をすることが賢明であるということができます。

何でもかんでも無条件に被相続人の財産をそのまま承継しなければいけないとすると、相続人は被相続人がマイナスの財産しか保有していない場合に、不利益を被ることになってしまいます。

このような場合に、相続人を守るのが相続放棄の制度であるということができます。

2. 具体的に相続放棄が推奨される場合とは?

相続人の状況によっては、相続放棄が推奨される場合もあります。

具体的にはどのような場合であるかについて確認をしていきましょう。

2-1. マイナス財産が多くみられるとき

相続の際には、被相続人の財産情報について調査をかけることになります。

ここで、しっかりと被相続人の財産が合計してプラスになるのかマイナスになるのか把握をしましょう。

この結果として、マイナスであることが分かった場合には、これを相続することで、そのまま自分の財産がマイナスとなってしまうことになります。

2-2. 財産状況を確認するために

ここでは、被相続人の財産がどれだけマイナスの財産を有しているのかどうかを確認するための方法をお話していきます。

◼︎個人の方からお金を借りていたとき

もしも被相続人が個人の方からお金を借りられていた場合には、その金額を確認することは少し難しくなります。

通常、お金を借りる際には、契約書等の書面を交わします。

被相続人の方の周りで重要な書類等を保管されている場所をご存じの場合には、その周辺を当たってみましょう。

何か資料を見つけられるかもしれません。

◼︎貸金業者からの借り入れをしていたとき

もしも被相続人の方が貸金業者から借り入れをしていた場合には、比較的簡単に借り入れ状況をハックすることができます。

なぜならば、業者側から返済について定期的に借り入れ状況について案内の書面等が届くからです。

◼︎金融系機関より借り入れをしていたとき

もしも被相続人の方がしっかりとした金融系機関よりローン等の借り入れをしていた場合には、おそらく定期的に通帳から引き落としがあるはずですので、まずは通帳の取引履歴を確認してみるようにしましょう。

2-3. 生命保険があるとき

被相続人が生命保険を有しているときに、生命保険の性質を有効活用する方法があります。

生命保険は、他の相続財産とは異なり、被相続財産に承継されるものではなく、直接的に相続人固有財産として取り扱われます。

そのため、相続放棄をしたとしてもその生命保険の受け取り分は問題なく、相続人にそのまま入ることになるという訳です。

説明だけではわかりにくいと思いますので、少し例を挙げて考えてみましょう。

例えば、被相続人がプラスの財産を3,000万円有しており、マイナスの財産が4,000万円あったとしましょう。

この場合、これらの財産を合算すると合計してマイナス評価になることがわかるかと思います。

ここで、よく調べると、被相続人に生命保険があったこと判明したとしましょう。

このままでは、生命保険を含めて相続すると、マイナスの相続財産と相殺されることになってしまいます。

ところが、先ほども申し上げました通り、生命保険は被相続人の財産に直接算出しないことができます。

つまり、そのまま相続人の財産と評価することで、相続放棄を行ったとしてもその影響を受けず、生命保険受取金額全額を相続人のものとすることができます。

したがって、このような場合には、相続放棄をした方がよいケースということができるでしょう。

相続税支払いの観点より考えてみましょう。

相続税支払いにおける生命保険としては、「みなし相続財産」であると考えられています。

つまり、前述の通り、生命保険は財産的権利の観点から見ると、被相続人に帰属するのではなく、直接的に相続人のものとなるわけですが、それが当たり前になってしまうと、相続税逃れが加速してしまうことになるので、これも相続財産の一つであるという擬制をして解釈される訳です。

2-4. 被相続人が保証人であった場合について

相続において承継するのは金銭的財産ばかりではありません。

被相続人の法的地位もその性質を許す限り、承継の対象となります。

よって、被相続人が誰かの保証人になっていた場合には、これを相続する相続人も債務者に対して保証をしなければいけなくなります。

もしも自分が保証人の地位を受け継ぐとなると、非常に大金の支払いを肩代わりしないといけませんので、なんとしてでも避けなくてはいけません。

もしも被相続人が保証人であったことが分かった時は、できるだけ速やかに借り入れ状況の把握をしましょう。

もしもその金額が多額であり、被相続人の他の財産状況も加味して、容易に返済することができないと判断されるような場合には、相続放棄をすることを選択した方が良いかもしれません。

それでは、被相続人が保証人であるかどうかをどうやって判断すればよいのでしょうか?それは、保証人を結ぶための手続きを理解することで、解決することができます。

つまり、保証人となるための保証契約は、法律上要式契約であるとされており、必ず契約書を交わすことになっています。

そのため、被相続人が保証人である場合には、ご自宅を調べると必ず契約書その他の法的文書が見つかるはずです。

2-5. 相続手続きに関与したくないと判断したとき

相続手続きを経るためには、否応にも他の相続人との関わりを持つことになります。

ところが、中には他の相続人とあまり関与をしたくないという場合もあるかと思います。

現代では、昔と異なり、相続人の関係が必ずしも仲睦まじい訳ではありません。

例えば、就職で都会に行きそのまま地元に帰ってこなくなるといった場合も多く見受けられます。

そのような場合にであっても、相続人としての法律的地位がある以上、相続手続きには関与しなければいけません。

どうしても複雑な関与がためらわれる場合にも、相続放棄をすることが有効といえるでしょう。

2-6. 被相続人が裁判に巻き込まれている

先ほど保証人の話をさせて頂きましたが、仮に被相続人が裁判に巻き込まれている場合には、これを相続すると、裁判の当事者としての地位も承継することになってしまいます。

これを避ける手段としても相続放棄は効果があるといえるでしょう。

3. 被相続人の負債状況は早い段階で把握をしておきましょう

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もしも被相続人に負債があるかもしれないと予想がされる場合には、なるべく早い段階で調査をしておきましょう。

なぜならば、早期に借金状況を把握することができた場合には、早い段階で相続放棄の是非について判断することができるというメリットがあります。

もしも被相続人が亡くなった後に相続財産調査を行う場合には、被相続人との関係を立証するための適切な情報を揃えなければいけないなどの煩雑な手続きが必要となります。

ご自身でこれらの書類を揃えることができるのであれば問題ありません。

しかし、なかなかそのようなご経験のある方はいらっしゃいませんので、実際には法律専門家に相談をされることが多いようです。

3-1. 相続財産評価はなかなか分かりづらい

相続財産の価値というものは、わかりやすいものばかりではありません。

財産の種類によってはしっかりとしたノウハウがなければ、相続財産評価を調べるだけでも苦労してしまいます。

財産調査のためには、必要となる資料を調べ、また財産の計算をするために必要な情報を確認しなければいけません。

万が一にでも、借金を相続することは避けたいものですから、プラスの財産となると判断して、実際には合計はマイナス評価となったということがないように、綿密な調査をすることが必要です。

3-2. 相続人自身が保証人となっている場合には要注意です

相続放棄をすると被相続人の財産を承継することができる権利を放棄することができます。

しかしながら、相続放棄も万能な訳ではありません。

被相続人に関するあらゆる債務に関して放棄できるわけではありません。

これは、保証契約という法律関係の性質を考えるとわかるのですが、少し複雑ですので解説をさせて頂きたいと思います。

保証契約というものは、債務者・債権者・保証人の三面関係からなる法律関係です。

ここで、債権者からの支払い債権について、被相続人を債務者とする債務について、相続人が保証人となった場合においては、被相続人が亡くなった後もその負債を背負うことになってしまいます。

保証契約というものは、基本的に債務者に何か支払い不能事由があった場合に、その借金を肩代わりするという性質を有する契約ですので、債務が弁済等されない限りは負担が続くことになります。

ここでは、債務者である被相続人が亡くなったことにより、債権者は被相続人から回収できなくなった訳ですが、債務は消滅していませんから、その矛先が保証人に向けられることになり、相続人の方が保証人であった場合には、代わりに借金を支払わなければいけません。

これは相続放棄をしたとしても変わりはありませんので、押さえておきましょう。

4. 場合によっては相続放棄がかなわないことも?

相続放棄を行うには、所定の期間内に行う必要があります。

この期間内に手続きが完了しないと現実的にはなかなか認めてもらうことは難しいといえます。

4-1. 相続放棄には期間的制限があります

相続放棄というのは、被相続人の借金を負わないようにすることができる非常に魅力的な制度ではありますが、いくつかのデメリットもあります。

その中の一つとして、相続放棄を行使するには期間が設けられていることです。

相続放棄を行うための期間を経過すると、もはや相続放棄を行使することができなくなりますので、要注意です。

相続放棄が可能な期間は、相続が開始されたことを知った時から3か月以内です。

相続が発生した場合には、早期に財産調査を行い、相続放棄の是非を判断しましょう。

また、相続放棄を一度決断した場合には、もはや撤回するということができません。

非常な強力な効果がありますので、行使する際には慎重にしなければいけません。

4-2. 例外的に相続放棄行使可能期間を徒過しても認められるケースとは?

相続放棄期間は相続開始より3か月ですからゆっくりしていると、あっという間に過ぎてしまいます。

「実は行使を考えていたのに…」という方もいらっしゃるかもしれません。

そんな方にお伝えしたいのは、3か月の相続放棄の期間には例外が設けられているということです。

この例外的な事情が認められるためには、相当な理由がある必要があります。

つまり、相続財産の調査を滞りなく行ったにもかかわらず、その被相続人の財産の性質上、3か月という期間では、客観的に評価することが難しいことが判明するようなケースでは認められる可能性があります。

ところが、これらはあくまで「可能性がない訳ではない」というレベルの話であって、一般の法律的知識のない人が立証するのは極めて困難です。

また、相続放棄は非常に期間が迫られていることもあり、どうしようかという調査をする時間でさえも惜しまれるところではあります。

どうしても相続放棄をしたいという意思が固まっているような場合には、専門家に費用を支払ってでも手続きを代理して頂いた方が確実であり、また賢明でもあると思われます。

法律専門家に依頼をする場合には、できれば相続放棄の実績を確認し、しっかりと経験のある人を選ぶとスムーズに手続きを進めて頂けるでしょう。

4-3. やむを得ず相続放棄熟慮期間を引き延ばしてもらう方法について

先述の通り、どうしても相続放棄行使可能な期間である3か月間に手続きを実行することができないときには、相続放棄を判断するための熟慮期間を引き延ばして頂くように申し立てることができます。

この場合もご自身で行うには、非常に複雑ですので、できれば信頼のできる法律専門家に依頼をするのが良いでしょう。

熟慮期間の延長をするには、延長に必要な期間及び延長が必要な理由につて詳細に説明をしなければいけません。

それが申立人の不注意であった場合など、過失が大きい場合には認められない可能性も高いので、どのように記載をするとより効果的であるのかについては、やはり法律専門家に相談をしましょう。

法律専門家に依頼するメリットとしては、申立先である家庭裁判所と同じ視点で議論をすることができる点にあります。

つまり、何か申し立てに不備があったとしても、法律の知識がない方であれば、それに対してうまく切り返すことができません。

本来であれば、通ることができる申し立てであっても、知識がないがために、申し立てが却下されてしまうのは非常に残念なことであると思われます。

5. 相続放棄はどのような手続きで行われるのか?

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ここでは、相続放棄がどのようなプロセスで行われるのかについて解説をしていきます。

5-1. 申請先機関は家庭裁判所です

相続放棄を申し立てる場合には、家庭裁判所に書類を届け出なければいけません。

ただし、家庭裁判所であればどこでも申し立て可能というわけではありません。

家庭裁判所にはそれぞれ管轄が決まっており、相続放棄の場合には、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てる必要があります。

5-2. 申し立てにはいくつかの書類が必要となります

相続放棄を申し立てるには、以下のように所定の必要書類をそろえなければいけません。

(1)相続放棄の申述書

(2)標準的な申立添付書類

(3)被相続人の住民票除票又は戸籍附票

(4)申述人の戸籍謄本

(5)その他申立人の状況に応じて必要とされる書類

引用元:裁判所HP

5-3. 書類の提出について

上記必要書類をすべて揃えた方は、それを管轄の家庭裁判所に提出する必要があります。

万が一、書類に不備があれば、申し立てが受け付けられませんので、再度指定の書類を用意しなければいけませんので、念入りに確認をしておきましょう。

5-4. 家裁から相続放棄をするための質問に回答しましょう

相続放棄申述をした後にも家裁よりその意向の確認を求める照会を受けることがあります。

その照会の方法は、家裁により様々ですが、文書により回答を求められたり、面談にて回答を求められたりしますので、これに応じましょう。

5-5. 相続放棄が認められると?

相続放棄が無事に受理されると、その旨の通知書が申立人のもとに届きます。

ところが、この通知書は債権者には通知されることはありません。

したがって、債権者に対して自分がもはや相続をする立場にないことを知らせる必要があることもあります。

債権者の立場としても少しでも多くの負債を回収しようとするはずですから、なるべく早い段階で知らせてあげるのが良いでしょう。

また、きちんと相続放棄受理の通知書が届いた場合には、適切な手続きにより、「相続放棄受理証明書」を受け取ることもできますので、必要に応じて取得するとよいでしょう。

6. 相続放棄手続きにどれだけかかるの?

相続放棄にはどれほどの期間がかかるのかみていきましょう。

6-1. 初日について

相続放棄手続きの初日は、まず必要書類を準備することから始まります。

手数料及び必要事項を記載しましょう。

6-2. 翌日について

手続き翌日には、早速家庭裁判所に申述に行きましょう。

その際に、書類の不備等を確認しましょう。

6-3. 約1週間後

手続きに問題がなければ、家裁より相続放棄申述が受理された旨の通知書が届くことになります。

これで手続きは完了です。

7. 相続放棄をしたらどうなるの?

相続放棄が無事認められれば、その後の相続財産についてどのように考えればよいのでしょうか?この場合、当該相続人は相続人としての地位を失い、他の相続人が相続人としての地位を引き続き承継する立場を有します。

ところが、同順位の相続人が皆相続放棄をすれば、下位の相続人にその順位が渡ることになります。

8. すべての相続人が相続放棄をした場合には?

すべての相続人が相続放棄をした場合にはどうなるのでしょうか?

債権者の立場からこの問題について考えてみたいと思います。

8-1. 相続財産管理人が選ばれます

すべての相続人が相続放棄をしたような場合には、債権者等の申し立てにより家裁より相続財産管理人が選ばれることになります。

これにより財産の整理がなされます。

8-2. 財産が見込まれないときは相続財産管理人すら選ばれません

相続財産管理人を選ぶ場合には、その者に対して報酬を支払わなければいけません。

被相続人の財産を概算して全く支払いの見込みがない場合には、そもそも相続財産管理人も選ばれることはありません。

8-3. 相続財産管理人を立てるだけでもお金がいります

相続財産管理人に支払う報酬のみならず、申し立て時点においてもコストがかかります。

少なく見積もっても数十万円単位のお金がかかりますので、資金の余力がなければ厳しいといえるでしょう。

8-4. 相続放棄を選択しても必要な管理等をしなければいけません

上記で見てきましたように、相続放棄を申し立てたからと言って、直ちに効果が認められるわけではありません。

それまでの期間は被相続人の財産が問題なく保管されるようにきちんと管理する義務が残されています。

9. まとめ

今回は、相続放棄を行うべき場合はどのようなケースであるかについて解説をさせて頂いた上に、相続放棄を行うために押さえておくべきいくつかの注意点について解説をさせて頂きました。

相続放棄は、相続が生じてからスムーズに手続きを行わなければいけないことから財産調査から申し立てまで、具体的なスケジュールを組みながら、手続きを進めて頂ければと思います。
(提供:相続サポートセンター