事業ポートフォリオ
(画像=PIXTA)

ヒト・モノ・カネ・時間といった経営資源は、有限である。限られた経営資源を効率良く配分することが継続的な売上・利益の向上につながり、企業のさらなる成長と発展を促す。

経営資源を有効に活用するためには、事業ポートフォリオが重要である。ここでは、事業ポートフォリオの概要やM&Aとの関係、作成方法、事業ポートフォリオの最適化などについて詳しく解説する。

目次

  1. 事業ポートフォリオの意味
    1. M&Aとの関係
  2. 事業ポートフォリオの作成方法
    1. PPM
    2. 事業ドメイン
    3. コア・コンピタンス
  3. 事業ポートフォリオの最適化
    1. ポートフォリオマネジメントシステム
    2. コーポレート組織
  4. 事業ポートフォリオの作成における注意点
  5. 限られた経営資源の最適配分を図ろう!

事業ポートフォリオの意味

ポートフォリオとは、自分のスキルや実績を周囲に伝えるための作品集という意味で、一般的によく使われる言葉である。ビジネスシーンでは、「事業の組み合わせ」「製品の構成」などを指す言葉として用いられる。

「事業ポートフォリオ」と言う場合は、企業が利益を生み出している事業を組み合わせて一覧化したものを指す。各事業の収益性・成長性・安全性などを一覧化することにより、可視化・俯瞰できるというメリットがある。さらに、限られた経営資源を有効活用するために、どの事業へ投入するかを決定するためのツールとしても活用される。

事業の選択と集中により、経営資源を最適に配分することを、「事業ポートフォリオの最適化」と呼ぶ。企業経営においては、全体を俯瞰した上で経営者の視点で事業ポートフォリオの最適化を図ることが重要である。事業ポートフォリオの最適化に関する詳しい解説は後述する。

M&Aとの関係

事業ポートフォリオは、M&Aにおいて活用されることが多い。企業が生き残りを図るために、社会情勢や業界・市場の動向、自社の内部事情を見極めた上でM&Aを実行し、グループの再編や事業継承、事業譲渡などを行う際に、事業ポートフォリオが活用されるのだ。

M&Aは、事業ポートフォリオの最適化を実施するためのプロセスそのものである。事業ポートフォリオを作成することで、より効率的に組織再編や事業強化を行えるようになる。

事業ポートフォリオの作成方法

事業ポートフォリオ
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事業ポートフォリオを作成する際は、主に以下3つの視点が用いられる。

PPM

PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)は、それぞれの事業の状況を確認しながら、経営資源の配分を最適化するための分析フレームワークである。1970年代に、戦略コンサルティングファームであるBCGが提唱した。

PPMでは、「市場の成長性」を縦軸、「市場シェア」を横軸として、エリアを4つの象限に分割し、それぞれを「花形」「問題児」「カネのなる木」「負け犬」と呼ぶ。また、規模の大きさを示す円で各事業をプロットし、事業が利益を生み出す難易度や、追加投資の必要性を明確にする。

縦軸の「市場の成長性」は、上に行くほど成長性が高くなる。魅力的な市場ではあるが、激しい競争が予想され、積極的な投資が必須であると判断される。横軸の「市場シェア」は、左に行くほどスケールメリットがあり、利益を確保しやすいと予想できる。以下の4つの象限のどこかに、各事業が配置される。

・花形
市場の成長性・シェアともに高く、利益が出しやすい。投資を継続し、カネのなる木を目指す。

・問題児
市場の成長性が高く魅力的だが、市場シェアが低いためコストがかかる。市場シェアを高めて花形を目指す。

・カネのなる木
市場の成長性は低いが市場シェアが高いため、事業コストが低く利益を出しやすい。できるだけ稼ぎ、利益を他の事業に回す。

・負け犬
市場の成長性・シェアともに低く、利益の創出が難しい。素早い撤退の決断を迫られる対象だ。

事業ドメイン

事業ドメインとは、企業の主力事業である「本業」のことだ。事業ドメインを設定することは、限られた経営資源を効率的に投入するための重要な経営戦略であり、企業が長期にわたって成長するための経営陣の最重要課題とも言える。

事業ドメインの設定により、過度な経営資源の投入や分散を防止できる。事業の多角化自体は重要な経営戦略だが、事業ドメインを設定することで不要な多角化を避けられる。

事業ドメインを設定する際は、「CTMフレームワーク分析」という手法が用いられる。CTMフレームワーク分析では、顧客・技術・機能の3つの軸で分析を行う。

・顧客軸
顧客の年齢・性別・地域・嗜好性などを分類し、自社の商品やサービスを誰に対して提供すべきかを特定できる。事業の強みを生かしたシェアの拡大や、新規顧客の開拓などに役立つ。

・技術軸
自社特有の技術が他社に比べどのように差別化されているかを特定することで、将来主力となる事業の立ち上げに役立つ。イノベーションの創出や、事業の多角化に大きく寄与する軸と言える。

・機能軸
自社が提供する商品やサービスが、顧客に提供できる価値を規定する軸である。機能軸を強化することで、商品の高機能化、高価格化につながり、優良顧客の獲得も期待できる。

3つの軸を規定することで、事業ドメインの設定がより容易になる。

コア・コンピタンス

コア・コンピタンスとは、顧客に対して他社には真似のできない自社ならではの価値を提供する、企業の中核的な力をいう。ホンダのエンジン技術や、ソニーの小型化技術などがこれに当たる。

自社の強みを意味する言葉としては、「ケイパビリティ」という用語もよく使われる。ケイパビリティがバリューチェーンにまたがる組織的な強みを指す場合が多いのに対し、コア・コンピタンスはバリューチェーンにおける特定機能の強みを指す。

事業の集中や拡大を図る際は、自社のコア・コンピタンスやケイパビリティを明確に意識し、これらを生かせる事業を展開することが重要である。また、事業ドメインの設定においても、コア・コンピタンスとケイパビリティの正しい理解が欠かせない。

コア・コンピタンスを正確に見極めるためには、事業における模倣可能性・移動可能性・代替可能性・希少性・耐久性の5項目で評価する。さらに、市場機会や事業課題を発見するフレームワークである「SWOT分析」を用いることもある。

事業ポートフォリオの最適化

事業ポートフォリオの最適化は、複数の事業に対して限られた経営資源の最適配分を実現する手法である。事業ポートフォリオの最適化を実行する際は、以下の2つの仕組みを整備することが重要だ。

ポートフォリオマネジメントシステム

経営資源を配分する際は、パフォーマンスやシナジーを考慮する。このような評価を行うために構築した仕組みを、ポートフォリオマネジメントシステムという。

企業によって評価軸や各領域の位置付けは異なるため、自社内で決定しておく必要がある。ポートフォリオマネジメントシステムを基準とし、追加投資などについては柔軟に対応することが重要である。また、このシステムで撤退基準も明確にしておけば、赤字が続く状況を回避できる。

コーポレート組織

全社的な戦略を推進する経営企画部門を、コーポレート組織という。複数の事業を展開する企業においては、保有する経営資源の最適配分をコーポレート組織が考えることになる。また、各事業部が個別に立案した事業戦略に対し、全社横断的な立場から業績評価制度を仕組み化しておくことも、コーポレート組織の重要な業務である。

経営資源を配分しただけでは、事業ポートフォリオを改善したとは言えない。各事業部が個別にパフォーマンスを向上させることも重要な要素である。コーポレート組織の業績評価制度は、各事業部の業績を客観的に評価し、業績に応じてインセンティブを付与する制度だ。

上記の2つの仕組みを整えた後は、一般的に以下の視点で機能の最適化を進めていく。

・機能を集約することで生産性の向上やコストダウンを狙う「重複の排除」
・事業間で同じ機能を取りまとめる「水平統合」
・業界に対する影響力を増大させたりコスト効率を高めたりする「垂直統合」

これらの最適化では、単に集約や統合を進めていけばいいわけではない。自社にとってのコア機能を見定め、コストメリットや業務の効率化なども考慮しながら検討することが重要である。

事業ポートフォリオの作成における注意点

事業ポートフォリオ
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事業ポートフォリオマネジメントを実行する際は、単に経営資源の効率的な配分を意識するだけでなく、優先的に投資を行う事業を明確化することが重要である。

無駄なコストの発生を抑えることは大切だが、PPMによって判断できるように、事業によっては積極的な投資が必要となるケースもある。経営資源を渋るだけでなく、投資すべき事業を正確に見極め、どれだけの投資ができるかも同時に考慮する必要がある。

また、トップマネジメントへのガバナンスやインセンティブなどの制度を整えたり、経営管理システムを構築したりすることも重要である。

事業ポートフォリオマネジメントでは、ある程度のリスクを想定して投資や多角化戦略の検討が行われるため、トップマネジメントの手腕が問われることになる。ガバナンスやインセンティブなどの制度を整えることで、重要な経営戦略を決定する場面でも、トップマネジメントが意思決定をしやすくなる効果が期待できる。

限られた経営資源の最適配分を図ろう!

限られた経営資源を有効に活用するためには、事業ポートフォリオが重要である。事業ポートフォリオマネジメントにおいては、さまざまなフレームワークを活用することで、意思決定が容易になる。

事業ポートフォリオの最適化を実行する際は、経営資源の配分だけを意識するのではなく、優先的に投資を行う事業を明らかにすることも重要である。企業のさらなる成長・発展を目指すために、事業ポートフォリオを利用して経営資源の最適配分を図ろう。

文・THE OWNER 編集部

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