資金調達,3つの方法
(写真=Andrii Yalanskyi/Shutterstock.com)

おそらくこの記事を読み始めた人の多くは、すでに自分自身で何らかのビジネスを立ち上げているか、これから始めることを計画中だろう。そして、そのための資金をどうやって調達しようかと考えているのではないだろうか。そうしたニーズを踏まえて、実際にどのような資金獲得の手段があるのかについてポイントを整理しながら紹介するのがこの記事の目的だ。

本記事では資金調達における3つの手法を取り上げる。さらにクラウドファンディングなど新たなサービスも紹介しつつ、それぞれの違いやメリット、デメリットなどについて説明していく。

資金調達における3つの方法

最初に結論をいえば、事業資金の調達手段は次の3つに大別できる。

1.出資してもらう
2.融資を受ける
3.援助してもらう

3つの手段の違いについては、お金を出す側の立場から考えてみるとピンときやすいだろう。「もし自分自身が出資(もしくは融資、援助)を行う立場だったとしたら、その代わりにどういったことを相手に求めるのか?」と思考してみるのだ。では早速、出資者の視点を交えつつ、それぞれの特徴を紹介していこう。

1. 出資してもらう 返済の必要はないものの、簡単には応じてもらえない

資金を提供する側にとって出資とは、あなたが手掛けているビジネスの成長に期待するとともに、それを達成した場合には金銭的なリターンを得ることを前提としているものだ。出資の手法として最もポピュラーなのは、「自社の株式を購入してもらう」というパターンである。つまり自分の会社の株主になってもらうわけだ。

そうすれば資金の提供者は保有株式数に応じて、事業収益の一部を配当として得られる。さらに利益成長を遂げて将来的にIPO(新規公開株)を果たせば、資金の提供者はより大きな成果を享受できる可能性がある。成長とともにあなたの会社の価値は高まっているはずで、出資者は保有株式を売却して配当をはるかにしのぐキャピタルゲイン(値上がり益)を追求できるからだ。

もちろん配当やIPOは出資者に対して確約したものではないので、ビジネスが期待外れの結果となったとしても、出資者から資金の返還を求められることはない。ただそれだけに資金を提供する側はシビアにビジネスの将来性を見極める必要があり、そうたやすくは出資に応じてくれないはずだ。言い換えれば起業家や事業主は、出資する側を納得させられるだけの事業計画や成長戦略を提示することが求められてくる。

そのハードルを乗り越えられれば、返済義務のない出資は非常に効率的な資金調達となる。

2. 融資を受ける 審査をパスするために重要なのは事業の継続性

融資は言葉通りの意味で金融機関などからお金を借りること。元金と利息の支払いがマストで審査に通ることが前提だ。しかしもっぱら問われるのは事業の成長性よりも継続性なので出資を募るケースと比べればハードルは低いといえる。とにかく利益が出ていて貸し倒れのリスクが低いと判断できれば、金融機関側としては特に断る理由が見当たらないだろう。

しかもメガバンクからネット銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合、さらにノンバンクといったように、融資に応じてくれる金融機関は多岐にわたる。ただ当然ながら融資はバランスシート(貸借対照表)の負債の部に計上されることになり、これが膨らんでいくと自己資本比率は低下し財務状況が悪化していると判断される。そうなれば、追加の融資を受けることは難しくなるかもしれない。

3. 援助してもらう 最も好都合だが、応じてくれる相手はおのずと限られる

出資とともに提供してもらった資金を返済しなくて済むのが援助だ。もっとも、このケースも資金を提供する側の観点に立って考えれば、たやすく交渉が成立するものではないことが分かるだろう。あなたに対して特に何も期待せず、無償で資金を援助してくれる人は限られていると思ったほうがいい。自分がお金を出す側なら、よほどのお人好しでない限り、それなりの見返りを期待するだろう。

またそんなに大金は援助できないはずだ。公的制度の補助金や助成金を別とすれば、資金の提供者がかなり限られてくるのが援助であり、金額的にも大きなものを期待できないと考えるのが無難だろう。相手が見返りを求めている場合は、詳細に取り決めを行ったうえで、きちんと契約書を交わしておくべきだ。

目指しているゴールによって、資金調達の手段は変わってくる

「出資」「融資」「援助」の3つの中から、どれを選ぶのがあなたにとってベストなのだろうか?「援助」については、都合のいい話が舞い込んでくるのはレアケースのため、期待しすぎないほうがよさそうだ。残る「出資」「融資」の2つについては自分自身がビジネスを通じてどのようなゴールを目指しているのかによって、その答えが異なってくる。

具体的に以下のようなケースでは、それぞれに選択すべき資金調達の手段が違ってくる。

可能な限りビジネスを拡大させたい場合は、「出資」で活路を開く

自らの可能性をとことん追求して事業領域や会社の規模を拡大していきたいと考えているのなら、「出資」を得られるように戦略を練るのが賢明だろう。特にスタートアップは早期の黒字化が難しいケースも多く、返済の負担は大きな重荷となりがちである。そもそも起業して間もない段階では、民間の金融機関から融資を受けるのはかなり難しい。

それよりも手掛けている事業の魅力や将来性について訴えかけて積極的に出資を募ることによって、活路を見出していきたいところだ。しかも融資と違って出資はバランスシートにおいて純資産の部に計上され、それが増えれば自己資本比率の上昇に結びつく。

自分自身の目が行き届く範囲にとどめておきたい場合は、「融資」を選ぶ

あくまでスモールビジネスにとどめて自分自身の目が届く範囲で事業を営んでいきたいのなら、「融資」の中でより適切な選択肢を見つけていくのが無難だろう。出資の場合は相応の結果を期待されるので、特に事業を拡大する意欲がないのなら余計なプレッシャーを感じてしまうことにもなりかねない。どこで借りるかについては、自分の信用力、必要としている金額、許容できる利息負担の兼ね合いとなってくるだろう。

加えて先々でも資金調達の必要に迫られることも念頭に置き、長く親密に付き合っていけそうな金融機関を選ぶという発想も求められてくる。金融機関によって融資に対するスタンスは異なっており、たとえばメガバンクで断られたとしても他の金融機関では応じてくれるというケースも少なくない。また赤字経営だと難色を示されがちだ。

しかし会計上において特別損失として処理できる一過性のものであれば融資に踏み切ってくれることもある。特に信用金庫や信用組合のようなローカルな金融機関は、大手よりも柔軟に対応してもらえると証言する中小企業経営者も少なくない。金融機関によって適用金利も異なってくるので複数の金融機関が融資に応じてくれそうな場合は、単に借りやすさだけでなく利息負担の違いもきちんと比較しておくことが必要だ。

最初からIPOが前提なら、エンジェル投資家やVCから「出資」を募る

将来的にIPOを果たすことを念頭に置いて起業した場合、できるだけ早い段階からエンジェル(起業家を支援する投資家)やベンチャーキャピタル(VC)の支援を受けることが望ましい。シード、アーリー(シリーズA)、ミドル(シリーズB)、レイター(シリーズC)といったスタートアップの成長ステージの違いによって調達先や調達額の目安は異なってくるので以下に整理しておこう。

・シード
起業前に当たるシード期においても試作の製品・サービスを作るためなどの資金が必要で、この段階では知人などのツテやエンジェルを中心に総額で数百万円程度の出資を募っていくケースが多い。ただ最近はそういったステージから資金調達面まで手を差し伸べるアクセラレーター(支援団体)も増えている。

・アーリー(シリーズA)
アーリー(シリーズA)では、すでに製品・サービスのプロトタイプが完成しており、それを用いたビジネス戦略も固まってきている頃合いだ。有望な事業を立ち上げようとしているスタートアップに対してはVCが前向きに出資を検討し、数千万円レベル(成長戦略次第では数億円単位)の資金調達も可能となってくる。

・ミドル(シリーズB)
成長が顕著となってきたミドル(シリーズB)では、いっそうの飛躍を遂げるためにさらにまとまった資金が必要となる。ここでもVCが出資の中心となるが、総合商社や総合リースなど大手事業会社が関心を示すケースも増えており、数億円程度の資金調達も不可能ではない。

・レイター(シリーズC)
日本のスタートアップの場合、最後のレイター(シリーズC)においては出口(IPO)がすぐ目の前に迫っているタイミングだ。米国などではユニコーン(時価総額評価が10億ドル以上の株式未公開企業)に達するまでIPOに踏み切らないケースが多いのに対し、日本ではこのステージで十数億円程度の調達を行ったうえで、一気に出口を目指すパターンが主流となっている。

創業資金の工面なら、まずは日本政策金融公庫の「融資」にチャレンジしてみたい

創業前後の企業で民間の金融機関などから融資を引き出すのが困難な場合、公的な制度の利用も選択肢の一つに入れたい。たとえば日本政策金融公庫の「新創業融資制度」や信用保証協会の「制度融資」に目をつけるのも一考である。

新創業融資制度は金利が低い

新創業融資制度は無担保で融資の決定に至る過程もスピーディーだ。融資限度額は3,000万円で、そのうちの1,500万円を運転資金に充てられる。そのうえ民間の金融機関と比べて相対的に金利が低い。ビジネスがヒットせず経営破たんに追い込まれたとしても起業家(個人)が借金返済の義務を負うこともないため、まずはこちらのほうから優先して申し込んだほうがよいだろう。

制度融資はスタートアップでも借りやすい

制度融資については、信用保証協会から信用保証を得ることが前提条件となっている。とはいえ中小企業を対象としており、スタートアップであっても信用保証を得やすいといえよう。なお制度融資では利息とは別に信用保証協会に対して保証料を支払うことが必要だ。その金額は、あなたが手掛けているビジネスが抱えるリスクに応じて異なり、それが高いほど負担は重くなる。

ファクタリングは「融資」と何が違うのか?そのメリットと注意点とは?

ここまであえて触れてこなかったが、企業の資金調達にはファクタリングという手段も存在する。これは未回収の売掛金を買い取ってもらったり、売掛債権に保険をかけてもらったりするサービスだ。もう少し詳しく説明すると、その提供会社は買い取りファクタリングと保証ファクタリングという2つのサービスを取り扱っている。

買い取りファクタリング

手元の運転資金などに困っている場合に、未回収の売掛金を現金化して(買い取って)もらえるのが買い取りファクタリングだ。これを利用すれば、売掛金から所定の手数料を差し引いた現金を受け取ることができる。融資とは違って担保を差し出す必要もなく取引先(売掛金を支払うべき相手)の信用力に問題がなければ資金の調達が可能となる。

保証ファクタリング

保証ファクタリングは資金調達のための手段ではないが、取引先の信用力に難があるケースにおいて有効な一手だ。売掛債権に保険をかけることによって、売掛金が回収不能となった場合に保証金が得られる。結局、ファクタリングは自分の会社ではなく取引先の信用力に左右されることになる。経営が危うくて売掛金の回収が難しそうならファクタリングサービス会社は買い取りに応じてくれないだろうし、保証ファクタリングでも取引先の信用力の低さに応じて保証枠が小さくなる。

可能なら親族や知人などから個人的に借りると「出世払い」で済むケースが!

シードやアーリーといったステージでは、すんなりとエンジェルやVCから資金を引き出すことが難しいケースも多い。もしも親族や知人が融資や出資に応じてくれるのならば、素直にお言葉に甘えるのも一考だろう。近しい間柄の場合、借金なら「出世払い」という条件も導けるかもしれないし、出資においても他の株主ほどプレッシャーはかけてこないだろう。

クラウドファンディングやソーシャルレンディングにも注目

近年、日本でも普及を遂げてきたクラウドファンディングやソーシャルレンディングも新たな資金調達の手段としておおいに注目したいところだ。資金を調達するために活用できるクラウドファンディングには、「融資型」「購入型」「株式型」の3タイプがある。このうち融資型はソーシャルレンディングと同義だ。資金調達という観点から、それぞれのメリットとデメリットについて考えてみよう。

融資型(ソーシャルレンディング)のメリット・デメリット

融資型とは、クラウドファンディングのスキームを用いて、不特定多数の人たちからお金を借りるというものだ。では、そのメリットとは何だろうか?融資型、購入型、株式型のいずれにも共通していえることだが、金融機関やVCなどといったプロを相手とするケースとは異なり、クラウドファンディングはクラウド(群衆=一般大衆)が資金を出すことになる。

プロが聞く耳を持たなかった案件であっても、希望以上の資金を調達できる可能性もあるわけだ。ただ融資型のクラウドファンディングはちまたの金融機関が提示している貸出金利よりも高めの数値にしなければ、なかなか資金が集まりにくいともいえる。その分だけ資金調達コストもかさむことになるだろう。

購入型のメリット・デメリット

購入型とは、自分が世に送り出そうとしている商品・サービスをクラウドファンディングによってより多くの人に購入してもらうというものだ。市販に踏み切る前にマーケティングを行える(ニーズを察知できる)というのが、メリットの一つである。記録的な目標販売数や金額を達成すれば、さらにそれが消費者の購買意欲をかき立てることになる。

ただ最近は購入型の案件が膨大な量に達しており、その中で差別化を図るのはかなり大変だ。

株式型のメリット・デメリット

株式型とは、クラウドファンディングを通じて広く出資を募るというものだ。購入型(All in方式)も然りだが、出してもらったお金を返済する必要はない。もっとも、お金を出す側としては出資した会社がIPOを果たさないとリターンが得られず、その可能性も決して高いとはいえないことはデメリットだ。それだけに資金が集まりにくいのも確かだろう。

さらに未上場の段階から不特定多数の株主が増えると事務負担も増すことになる。

公的機関などの補助金・助成金にはどんなものがある?

先述したように「援助」という手段は限られているが、国や地方自治体が補助金や助成金を設けているケースもあり、それらを見逃す手はないだろう。たとえば「創業支援事業者補助金」や「地域創造的起業補助金」といった制度がある。これは支援を求める事業者を公募し、その申請が通れば国から経費などの資金が補助されるというものだ。申請作業がかなり面倒なのが難点ではあるものの、補助金の返済は不要なのがありがたい。

必要に迫られてではなく「攻め」の資金調達を目指そう!

ここまで「出資」「融資」「援助」という3つの資金調達方法と、新しいサービスであるクラウドファンディングや公的制度などについて見てきた。どれを活用するにせよ心掛けたいのは、「攻め」のスタンスで臨むことだろう。「必要に迫られてから動く」という後手の対応ではなく、常に先手を打って調達を図ることが大切だ。

また、たとえ事業規模の拡大を望んでいなかったとしても売り上げが右肩上がりに推移するのに越したことはないだろう。それを達成するためにも設備投資のための資金調達も前向きに検討したい。

文・大西洋平(ジャーナリスト)