矢野経済研究所
(画像=Louis Deconinck/stock.adobe.com)

入り込めない現場は無い!既存品でも工夫した運用で付加価値向上へ!

~2024年17億個から2032年には153億個規模への拡大を予測~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、エネルギーハーベスティングデバイス世界市場を調査し、現状と今後の展望を明らかにした。

エネルギーハーベスティングデバイス世界市場規模推移・予測

矢野経済研究所
(画像=矢野経済研究所)

1.市場概況

エネルギーハーベスティングデバイスは我々の周囲における環境で発生する微小なエネルギーを「収穫(ハーベスティング)」し、電力エネルギーに変換する機器であり、電力確保の一手段である。発電方式は光や振動などが中心であるが、これ以外にも様々な方式が存在している。直近では、IoT機器への電池交換の手間を省略する目的から、電池交換を必要としない電源として、エネルギーハーベスティングデバイスが注目されている。また、世界的に持続可能な社会を目指す動きのなかで、環境問題の観点からも環境負荷を低減できる電力源として、エネルギーハーベスティングデバイスは期待されている。

2023年のエネルギーハーベスティングデバイス世界市場規模はメーカー出荷数量ベースで、13億742万5,000個と推計した。欧州におけるバッテリー規制や各国で進むガイドライン(規制)の導入でエネルギーハーベスティングデバイスの導入を可能とする環境整備が進展している。こうしたなか、エネルギーハーベスティングデバイスの採用・導入実績は増えているものの、まだ普及していく余地は十二分に存在していることから、2024年には17億8,895万個を予測する。

2.注目トピック

続々登場する新発電方式で活用への期待

従来からの原理によるエネルギーハーベスティングデバイスはすでに市場投入されているが、一方で新しい発電方式が次々と開発されている。

2023年には、電磁波ノイズによる発電デバイスが開発された。この開発品はチューナー開発で培われた技術が応用されており、電磁波ノイズから電力を高効率で生成することができる。一例では、工場内のロボット、オフィス内のモニターや照明、店舗や家庭のモニターやテレビ、冷蔵庫などから常時発生する電磁波ノイズを利用し、低消費電力型のIoTセンサーや通信機器などの稼働に必要な電力の安定的な生成と供給を可能にする。今後増大するIoT機器の電源問題は徐々に顕在化しており、この問題を解決する手段の一つとして期待されている。

また、2021年頃から販売が開始されている植物発電キットの新型が2023年に販売開始された。植物発電は新しい切り口のエネルギーハーベスティングデバイスとして市場展開されている。この植物発電キットの内容はマグネシウム板と備長炭、LED ライト、制御基板、ケーブルで構成されている。設置する環境により電圧、電流値が異なるが1セットでの発電の電圧は0.7~1.2V で昇圧後電圧は1.6~3V、電流0.1~20mA である。発電の仕組みとして、植物の根から発生する糖や微生物、水中の水草や微生物の循環作用から発生するエネルギーを効率よく電極に集め発電する技術である。電極を土や水に挿しておくだけで、日照不足でも植物が生育されている状態や水草や微生物が水槽中で生育されている状態であれば、土壌や水に電極を埋めるだけで発電する。環境への破壊の無い新しい自然エネルギーとして注目を集めている。

3.将来展望

2032年のエネルギーハーベスティングデバイス世界市場規模はメーカー出荷数量ベースで、153億4,240万個を予測する。欧州におけるバッテリー規制や各国で進むガイドライン(規制)などの環境整備が進展し、エネルギーハーベスティングデバイス導入に向けた実証実験なども実施されている。国内においてもJSA規格として「環境発電デバイスを用いた学校向けIoTシステムの要求事項及びその開発指針」が2024年4月に設定されるなど、市場成長に追い風となるとみる。また、各構成素子(発電や制御、蓄電等)の性能向上からエネルギーハーベスティングデバイスそのものの性能向上がもたらされ、従来では導入が難しかった領域への採用が進むことが想定される。

こうしたなか、エネルギーハーベスティングデバイスは、維持管理を含めて安定運用できれば半永久的な電源となるシステムであり一次電池の交換が不要になることから、環境負荷を低減できるエネルギー機器として今後は様々な用途で導入され、活用されるものと考える。

調査要綱

1.調査期間: 2024年4月~6月
2.調査対象: エネルギーハーベスティングデバイス(主にμW、mWレベルの発電)メーカー企業、関連する大学や研究機関等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mail等によるヒアリング調査および文献調査併用
<エネルギーハーベスティングデバイスとは>
エネルギーハーベスティングデバイスは我々の周囲における環境で発生する微小なエネルギーを「収穫(ハーベスティング)」し、電力エネルギーに変換する機器であり、電力確保の一手段である。

本調査におけるエネルギーハーベスティングデバイスとは、発電素子に加えて認識(センシング)や制御、通信それぞれの機能を有し、主にμW、mW レベルの発電を行うデバイス(機器)を対象とする。なお、採用用途に合わせて搭載される蓄電機能の有無は加味せず、発光や表示のみで通信機能が無いデバイスも対象外とする。また市場規模は世界市場におけるメーカー出荷数量ベースで算出している。
<市場に含まれる商品・サービス>
発電素子だけでなく認識、制御、通信機能を持ったデバイス

出典資料について

資料名2024年版 エネルギーハーベスティングデバイス市場の現状と展望
発刊日2024年06月28日
体裁A4 106ページ
価格(税込)198,000円 (本体価格 180,000円)

お問い合わせ先

部署マーケティング本部 広報チーム
住所〒164-8620 東京都中野区本町2-46-2
電話番号03-5371-6912
メールアドレスpress@yano.co.jp

©2024 Yano Research Institute Ltd. All Rights Reserved.
本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
報道目的以外での引用・転載については上記広報チームまでお問い合わせください。
利用目的によっては事前に文章内容を確認させていただく場合がございます。