DG TAKANO社長 高野雅彰,カンブリア宮殿
(画像=テレビ東京)

この記事は2024年7月11日に「テレ東BIZ」で公開された「世界にイノベーションを 下町のクリエーティブ集団:読んで分かる「カンブリア宮殿」」を一部編集し、転載したものです。

水道代が劇的に安くなる!~驚異の発明、節水ノズル

人気の飲食店「スパゲッティーのパンチョ」新宿南口店では、洗い場の水道に「バブル90」というノズルを使っている。

「(ノズルを使う)以前の水道代と比較すると、こんなに削減できているんだとビックリしました」(エリアマネージャー・鈴木和広さん)

通常の蛇口だと水は1本の柱のようになって出てくるが、「バブル90」は、ノズルの中央にある穴から空気を取り込むことで、水を細かい玉状に分散して出している。これにより出てくる水の量が減り、節水率は最大95%になるという。

▽「バブル90」節水率は最大95%になるという

DG TAKANO社長 高野雅彰,カンブリア宮殿
(画像=テレビ東京)

東京・恵比寿の人気中華料理店「京鼎樓HANARE店」も「バブル90」を使う。

「油汚れが多い皿も、水で流すだけで汚れを落とせる。ストレスなく使えるので非常に助かっています」(店長・土屋翔平さん)

洗浄力も高い。通常の蛇口から出た水は、汚れに直接当たるのは一部だけ。ほとんどの水は、汚れについた水の上を滑って無駄になってしまう。一方、「バブル90」だと、水の玉それぞれが、マシンガンのように汚れに当たる。だから少量の水でも汚れを落せて、大幅に節水できるというわけだ。

「バブル90」は今、大手レストランチェーンの8割、スーパーの5割で導入されているという。

そんな便利なノズルが、2024年5月から一般家庭でも使えるようになった。蛇口に「バブル90」がついた「家庭用バブル90」(12万9,800円)は、通常の水とバブル90の水の切り替えや、取り外しホースを伸ばすこともできる。家電量販店もこの画期的な商品に目をつけた。

▽「家庭用バブル90」2024年5月から一般家庭でも使えるようになった

DG TAKANO社長 高野雅彰,カンブリア宮殿
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「実は弊社は住宅事業にも力を入れていまして、画期的な商品をいち早く取り扱うことでアピールに繋がると思っています」(「ヤマダデンキホールディングス」瀧澤隼人さん)

「バブル90」を作っているDG TAKANOがあるのは町工場が集まる東大阪市。2008年に創業したべンチャー企業で、従業員はわずか25人だ。

オフィスの片隅に、世界で累計発行部数1億部以上という大ヒット漫画『キングダム』が並んでいる。社長・高野雅彰(46)は「これは全員必読なんです。昔の中国の歴史や戦争の話。現代のビジネスと全然関係のないように見えるが、抽象化すると全部同じことやっている」と言う。

「成功しても1億円しか稼げないようなモデルは最初からやらない。成功したら100億に到達するモデル。世界中で売れるものを作らないといけない。世界は何に困っているか」と言う高野が目をつけたのは世界的な水不足だった。2050年までに、世界の2人に1人が水不足に陥ると言われている。高野は地球規模の課題と向き合い、「世界を動かす日本人50」にも選ばれた。国際的にも注目を集めている。

DG TAKANO躍進の秘密~水だけで油汚れが落とせる魔法の皿も

躍進の秘密1~「町工場発の技術力」。

「バブル90」を製造しているオフィスの近くの工場は、もともとは高野の父・善行さんが経営していた町工場だった。DG TAKANOはその会社を吸収合併して技術を受け継ぎ、「バブル90」を作っている。

例えば「バブル90」を作るのに欠かせない複合旋盤器というマシン。

▽「複合旋盤器」削ったり、穴を開けたりという作業をたった1台でこなせる

DG TAKANO社長 高野雅彰,カンブリア宮殿
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さまざまな工具がついていて、削ったり、穴を開けたりという作業をたった1台でこなせる。しかも精度は髪の毛より細い1,000分の2ミリだ。

バブル90は7つの特許を取得していて、全国4万1,000カ所で使われている。さらに価格を抑えるため、「今まで金属じゃないと作れなかったんですけど、プラスチックで簡易的に作ることができるようになった。できるだけたくさん普及させたい」(高野)と言う。

▽価格を抑えるためプラスチックで簡易的に作ることができるようになった

DG TAKANO社長 高野雅彰,カンブリア宮殿
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躍進の秘密2~「発明を生むデザイン思考」

この日、DG TAKANOにやってきたのは大手家電メーカーのシャープ。「我々も節水関係はいろいろな取り組みをしている。何か協業の可能性があれば……」と言う。自社の洗濯乾燥機について「給水した水を非常に微細な流形の水にして衣類に当てる。それで洗浄効果が高まる」と説明するなど、シャープが持つさまざまな技術をプレゼンした。

だが、高野はこう言う。

「お話を聞いていると、技術者が考えていることだなと。性能の話ばかり。性能については日本の会社はもういい。それ以外の部分が大事。日本のものづくりの会社は、技術者が何を作るかを考え、その下にデザイナーがいる。本当は技術者の上に設計のデザイナーがいないといけない、イーロン・マスクやスティーブ・ジョブズみたいに。(日本の会社は)上流デザインが抜けている」

高野曰く、多くの日本企業は、自社が持つ技術を使って何を作るかをデザインし、製品に仕上げる。一方、DG TAKANOは、世の中の課題をまずデザイナーが考え、それを解決するのに必要な技術を集め、ものづくりをするというのだ。

「僕の場合だと、環境問題や水不足を解決したいということがあって、それで生まれたのが『バブル90』です」(高野)

躍進の秘密3~「水問題を解決する魔法の皿」

「メリオールデザイン」は一見、ごく普通の食器だが、「水だけで汚れが落とせる皿」だという。皿の表面にはナノレベルの凹凸加工が施されている。これにより、皿と油の間に水が入り込み、汚れを浮かせて落とすことができるのだ。

▽「メリオールデザイン」皿の表面にはナノレベルの凹凸加工が施されている

DG TAKANO社長 高野雅彰,カンブリア宮殿
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2023年5月に発売し、今や百貨店でも販売されている。

「完全に差別化されている商品なので、(人気が)爆発すると思います」(「名鉄百貨店」上村嘉臣さん)

この食器は能登半島地震の被災地で役立っている。4月中旬、石川・珠洲市の避難所では、水道利用は不便が続いていた。そんな中、食べ終わった皿にペットボトルから少しの水を流し込み、指でこすると汚れが落ちていく。

「拭くとキュッキュッと音がする。この皿を置いておくだけで安心感がある」(室山雅さん)

節水だけでなく、1枚の皿が安らぎももたらしていた。

「どんどんイノベーションを起こしていきたいし、未来のライフスタイルにシフトさせていかないといけない」(高野)

大阪の町工場から世界へ親子タッグで商品開発

6月、普通の皿をメリオール加工できる「メリオールデザインシート」(490円/皿2枚用、780円/皿4枚用)が発売された。普通のウェットシートのようだが、お気に入りの皿をこれで拭き、30分乾かせば、少ない水で汚れが落ちるようになるという。

▽少ない水で汚れが落ちるようになる「メリオールデザインシート」

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このシートを売り出したら「メリオールデザイン」が売れなくなってしまう可能性もあるが、「僕たちはお皿を売りたいのではなく、地球環境をよくしたいんです。それだったら皆さんのお皿にこのシートを使ってもらう」(高野)と言う。

高野は1978年、東大阪市で町工場を営む家に生まれる。父は業務用のガスコックを作る職人で、誤差を1,000分の2ミリ以内にできる一流の腕前だった。

しかしバブルが弾け、近所の町工場が次々と倒産。当時中学生だった高野は思った。

「両親がこれだけ頑張っているのに全然儲からない。家業は継ぎたくなかったし、だからといってサラリーマンもやりたくなかった。働きたい会社がないんだったら、自分で作ろうと」

会社を作るなら経済の動きを学ぼうと、神戸大学経済学部に進学。卒業後は3年間IT企業に勤め、会社の仕組みを学んだ。

「社長をやるとは決めていたけど、何をやるか決めていなかった。考え方としては、世の中に困っている人がいて、それを解決できたらお金に換えられる可能性があると思っていた」(高野)

世界中の問題を片っ端から調べていくと、目に留まったのが世界の水不足だった。

しかし、節水の知識はおろか、機械の操作もできない。高野は工場に泊まり込み、独学で機械操作やプログラミングを学びながら、ノズルの試作品作りに没頭した。

半年後、84%の節水率を実現させたが、高野は妥協せず改良を続けた。

「例えば他社に30%の節水のものがもしあったとしたら、そこに僕が40%のものを作った、じゃあ今度45%のものを作って、50%のものを作ってという消耗戦みたいなのをやり出すと、自社は体力がないから無理だと思ったんです。『もう僕には勝てないですよ』というところまで極めてから製品を出したいと思いました」(高野)

節水率を極限まで高める「脈動流」。一般的にトイレの洗浄便座などに使われている技術だった。手を借りたのが父の善行さん。部品を削りだす特殊な刃物を作ってもらい、さまざまな形のノズルを試作し数千回もの実験を繰り返した。

ついに2009年、電力は使わず、水圧だけで最大95%の節水を可能にする「バブル90」を完成させた。

それを携えてベルリンに飛び、世界最大級の「水の展示会」に出品すると、大反響を呼んだ。国内では並いる大手メーカーを抑え「“超”モノづくり部品大賞」のグランプリを獲得。満を持して「バブル90」の販売をスタートさせた。

商品売れず借金1億5,000万円~倒産寸前から奇跡のV字回復

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2009年に販売を開始した「バブル90」。さっそく大手企業に売り込みをかけるが、「そんなのいらない、という感じで、それより電気代だ、と。節水よりも節電の時代で、多くの企業が蛍光灯からLEDに替えていこうという時代だったんです」(高野)。

発売開始から5年たっても「バブル90」はほとんど売れず、借金は1億5,000万円にふくらんだ。

そんなある日、高野が出会ったのが飲食チェーンを経営する社長だった。試しに導入してみると2カ月後、水道代は3分の1になり、「全店舗に入れてくれ」となった。そこからは「バブル90」の売り込み先を飲食店に絞り込み、無料で試してもらった。

「5店舗、10店舗と持っているオーナーさんが『すぐ全店に入れてくれ』となった。首の皮一枚つながって、そこからV字で上がっていった」(高野)

「バブル90」の評判は口コミで広がり、飲食チェーンや大手スーパーから注文が殺到し、全国に広まっていく。

その後、「メリオールデザイン」を発表すると、2023年には「省エネ大賞」審査委員会特別賞を受賞した。

DG TAKANOには、その技術に惚れ込んで、今や世界中から「働きたい」という人が集まってくる。

例えばエンジニアのファイザーン・モハメドはインドから来た。出身校のインド工科大学は、「Google」や「Amazon」といった巨大IT企業に人材を輩出する世界有数の名門校だ。

▽「DG TAKANOのような企業に入ったほうが自分が成長できると思ったんです」と語るモハメドさん

DG TAKANO社長 高野雅彰,カンブリア宮殿
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「世界的に有名な企業に就職すれば大きなプロジェクトに関われるけど、先輩のサポートに徹しなければならないこともあります。だったらDG TAKANOのような企業に入ったほうが自分が成長できると思ったんです」

開発責任者の三瓶雅紀は転職組だ。

「パナソニックで働いていました。水不足であったり、世界規模の課題に挑戦できる。そこのワクワク感を4年前に感じたので飛び込んでみました」

灼熱のサウジアラビアで、画期的な水活用システム

サウジアラビアの首都リヤドにあるイスラム教のモスク。そこへ高野が「バブル90」の売り込みにやってきた。

礼拝の前には、顔や手足などを水で清める「ウドゥ」という儀式がある。だからここでは毎日、多くの水が使われている。

▽礼拝の前には、顔や手足などを水で清める「ウドゥ」という儀式がある

DG TAKANO社長 高野雅彰,カンブリア宮殿
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「それを80%くらい節水したらだいぶ効果があると思います」(高野)

サウジアラビアの都市部で使われる水の多くは、海水を淡水に変えて運搬したもの。だから莫大なコストがかかる。そこで高野はこの国の水問題に取り組んでいる。

すでに、ミネラルが多く詰まりやすい硬水にも対応したプラスチック製「バブル90」の実証実験が始まっている。

さらに高野は「世界一の水有効活用のシステムをつくりたいと提案している」と言う。

サウジアラビア政府と連携し、節水問題を超える壮大な構想が進行中だ。排水を再利用する循環システムで、その切り札が「バブル90」を組み込んだシンクだ。

ディスポーザーで食べ残しを粉砕し排水と一緒にバイオタンクに送る。それを発酵させて肥料に変え、農業に再利用するというのだ。

「100%グレーウォーター(台所排水)とフードウェイスト(食べ残し)をリユースできる。これを実現できたら世界を変えられると思ったんです」(高野)

※価格は放送時の金額です。

~村上龍の編集後記~

DG TAKANO社長 高野雅彰,カンブリア宮殿
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「お父さんを尊敬してますか」「もちろん」「仲がいいんですね」「とてもいいです」。こういう会話が素直にできる人とは最近会ったことがない。

DG TAKANOのDGは「デザイナーズ・ギルド」の意味。高野氏が考えるデザインとは課題を解決する手段。「バブル90」の開発は、水の使用量抑制と洗浄効果の両立が必要だった。水の玉を高速で飛ばす、精密な金属加工技術。

父親が登場、東大阪市でガスコックを専門に扱う町工場を経営。アドバイスをもらいながら試作品を作っていく。成功し、冒頭の会話が生まれる。

<出演者略歴>
高野雅彰(たかの・まさあき)
1978年、大阪府生まれ。2004年、神戸大学経済学部卒業後、ITベンチャーに就職。2008年、合同会社デザイナーズギルド創業。2010年、株式会社DG TAKANO設立。

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