※本稿は寄稿者の個人的見解に基づく原文を掲載したものであり、THE OWNERの見解を示すものではありません。

ビジネスアイディアの考え方
(画像=taa22/stock.adobe.com)

春を迎え、新たに起業や新事業開発などといった新しいことにチャレンジする人も出てくるのではないかと思う。そんな方々のお役に立てればと、今回はビジネスアイディアの考え方をご紹介したい。

そのような本はたくさんあるが、文字数の限られるこちらのコーナーにて、これまでたくさんの起業をお手伝いしたり、創業間もない企業の営業活動を支援した実績から、要点を詰め込んだ形でお伝えしていきたいと思う。

ビジネスアイディアの眠っている場所

たくさんのビジネスを支援してきて思うことは、ビジネスアイディアには2箇所、眠っている場所が有るということである。具体的には、世の中と自分の中だ。

1.世の中に眠るビジネスアイディア

ビジネスアイディアが眠る場所の1つ目は世の中だ。世の中を見回してみたとき、以下の2点に着目すると、ビジネスアイディアの種が見えてくる。

・たくさんの人が困っていること
当たり前のことではあるが、たくさんの人が困っていることを解決することは、大きなビジネスに繋がる可能性が高い。この“困っていること”の定義だが、マイナスをゼロにしてあげるイメージだ。

急に雨が降り出したり、乗る予定だった電車が止まっていたり、いつもは空いている飲食店が満席だったり、ふと考えてみると世の中にはたくさんの困ったことに溢れている。それを膨らませていくとビジネスに繋がる可能性がある。

・たくさんの人が欲しがること
これまた当たり前のことではあるが、たくさんの人が欲しがるコト、欲しがるモノを作ると、大きなビジネスに繋がる可能性が高い。こちらの“欲しがるコト・モノ”の定義だが、ゼロをプラスにするイメージだ。なくてもいいが有ると嬉しい、というもの。

よって、こちらは世の中を見ながら、「こんなものがあったらみんな喜ぶかも。」というアイディアが出るかどうかがポイントになってくる。一粒食べればその日のカロリーを50%カットしてくれるサプリ、格安で家に来てくれる一流シェフ、一人乗りの空飛ぶクルマ。

どれも無いと困るものではないが、あると嬉しい。そういうものを見つけ、作り出すことでビジネスが生まれる。

2.自分の中に眠るビジネスアイディア

もう一つのビジネスアイディアが眠る場所は、自分の中だ。自分の中に持っているスキルや経験でビジネスを作り出せないか考えてみよう。その際、以下の3つに着目してみると、ビジネスになり得る自分の中のスキルや経験が見えてくる。

・他の人よりも得意なこと
料理が得意、マッサージが上手い、トークが面白い、こんな個性があれば、それぞれ、飲食店、マッサージ店、バーの開業ができるかもしれない。このように、人一倍得意なことがあれば、そのためにお金を払ってくれる人を見つけられる確率はぐっと高まる。

・人一倍好きなこと
今はまだ得意ではないかもしれないが、人一倍好きなことがあれば、その熱量が努力に向かい、結果として得意なことに変わっていくかもしれない。よって、自分にそれだけ打ち込める何かがあるのかどうかは考えてみる価値がある。

・人一倍なんとかしたいこと
幼少期に貧しくてその日の食事にも困ったので同じような子供を助けたい、保護猫や保護犬を一頭でも多く助けたい、そのような人一倍の熱量を持って取り組みたいと思える社会問題があれば、たくさんの人が困っていることを解決する可能性があり、大きなビジネスにつながる可能性がある。

以上の点に着目して日々生活しているとビジネスアイディアの種は見つけることができるだろう。

ビジネスアイディアの記録方法

思いついたビジネスアイディアはしっかり育てて将来的にビジネスとして花開かせたい。よって、以下のフォーマットに沿って記録し、思いつかないところは空欄にしておき、少しずつ埋めていくことでビジネスアイディアがより具体的になっていくことを実感できるだろう。

<ビジネスアイディア育成シート>

■ビジネスアイディアの概略
ビジネスアイディアを一言で説明するならどのように説明するか

■ビジネスアイディアのターゲット
このビジネスアイディアが誰に向けたものなのか

■このビジネスアイディアで満たすことができるターゲットのニーズ(ターゲットのメリット)
ターゲットのどのようなお困りごとを解消するためのものなのか
もしくは、ターゲットがこのビジネスに触れることでどんなメリットがあるのか

■類似商品と比べたときの差別化ポイント
既にある類似商品と比較した際にターゲットがこのビジネスを選ぶ理由はなにか

■このビジネスアイディアに取り組む理由
自分自身がなぜこのビジネスアイディアに取り組みたいのか

■このビジネスアイディアを実現するための考えられる障壁
スキル、人脈、資金など、このビジネスアイディアを実現するに当たって、今の自分に不足しているものはなにか

■障壁の乗り越え方
上記の不足をどのように払拭していくか

■このビジネスアイディアを実現した10年後になっていたい将来像
ビジネスが実現したときにどのような環境に自分が身を置いていたいか

以上の項目で書き留めていくと、おぼろげだったビジネスアイディアがより輪郭を持って見えてくるだろう。

また、一つのビジネスアイディアに固執するのではなく、複数のアイディアを持っておくことをおすすめする。普段の生活の中でのふとしたひらめきや思いがけない人との出会いが人生に幸運をもたらすのである。たくさんのビジネスアイディアを同時並行的に温めておくことで、何かの拍子に一気にビジネスとしての実現可能性をぐっと上げることができる。

10年後の将来像が重要な理由

ビジネスアイディア育成シートの最後に、“このビジネスアイディアを実現した10年後になっていたい将来像”という項目を設けた。

まだビジネスを始めてもないのに10年後のことを考えるなんて時期尚早に思うかもしれない。

よって、10年後の姿を起業前からイメージすることの重要性を説明し、終わりにしたい。

ビジネスアイディアの種は「世の中」と「自分の中」のどちらかに埋まっていると説明した。この話には続きがあり、どちらの種を採用してビジネスを始めるのかで、起業家としてのあり方が変わってくる可能性がある。世の中に眠るビジネスの種とは、世の中に眠っているのだから、地球上の他の誰かも同じことを考えている可能性がある。

また、そのビジネスの種が形になったとき、人々はあなたのビジネスだからそれを求めるのではなく、そのビジネスだからそれを求める。

つまり、将来のお客さんたちはあなたではなく、そのビジネスそのものを求めているのだ。 iPhoneを開発したのがスティーブ・ジョブズではなくビル・ゲイツだったとしても、我々はスマートフォンを使っていただろう。それと同じことだ。

よって、世の中に眠るビジネスの種を見つけて形にしようとするときは、熾烈な競争環境に身を置くことになる可能性が高いと覚悟してほしい。

そして、投資家から資金を集め、どんどん事業を加速させていくことが求められるだろう。そのためにはマスコミに率先的に露出して知名度を高めることも欠かせないだろう。そんな起業家としての人生が待っている。

一方、自分の中に眠るビジネスの種とは、あくまで自分の中でのビジネススキルなのだから、他人から見たらたいしたことないと思われる可能性が高い。腕のいい料理人やマッサージ師、トークが上手い人は世の中に沢山おり、誰かが模倣しようとすることも少ない。

しかし、しようとしてもなかなかできないというのがミソであり、かつ、そもそも世の中を相手にするのではなく、起業時には自分の周りの人からお金をいただく感覚なので商圏が小さい。例えるなら、長年元気に営業している町中華だ。

そうすると、起業後は自分の得意なこと、好きなこと、なんとかしたいことに正面から向き合い続ける起業家ライフが待っている可能性が高い。一気に社会的に有名になっていくことを目指す華々しさは無いが、知っている人は高く評価してくれてしっかりリピーターになってくれる、そんなビジネスだ。最終的にそのコツコツが実り大企業になることもあるだろう。

しかし、そこに至るまでは町中華が1店舗ずつ拡大していくかのような、コツコツ地道な経営努力が求められるだろう。

このように、ビジネスアイディアを見つけるためには、「世の中」と「自分」という2つの視点とともに、今と未来という時間軸も加えて考えていくことで、より実現可能性が高いものや、自分が本当に打ち込めるものを見つけることができる。ぜひ、ご紹介した方法でビジネスアイディアを温め、新たな一歩を堅実に進めて頂けると幸いである。