全国銀行協会の「全国銀行 預金・貸出金速報」によると、2023年12月末時点の銀行貸出金額が前年同月比で3.3%(18兆4,573億円)増加した。28ヵ月連続で前年同月の貸出金額を上回った。本記事では、その内訳や銀行貸出金額が増えた背景に加え、今後大きな変化が見込まれる運転資金の活用方法やそれに関連する国の政策についても解説する。
銀行の種類別でも貸出金額はおおむね増加。その理由は?
銀行の種類別で見た貸出金額の増減は、以下のとおりだ。
- 都市銀行:前年同月末比6兆5,409億円、3.0%増
- 地方銀行:前年同月末比8兆8,290億円、3.6%増
- 第二地方銀行:前年同月末比1兆5,858億円、2.9%増
- 信託銀行:前年同月末比4,300億円、1.3%減
信託銀行だけは、前年同月比の貸出金額が減っているが、他の銀行は軒並み前年同月より貸出金額が増加している。その理由として考えられるのが、企業の運転資金需要の高さだ。コロナ禍による経済の悪化で企業の大半が苦しい資金繰りを迫られた。2024年1月時点では、多くの企業がその状態から脱したものの、企業の運転資金を安定させる目的で銀行から借り入れを行っているケースも目立つ。
今後は「借りたお金をただ使う」から「運用で増やしながら使う」ことが求められる
2024年1月時点においても円安や物価の高騰で企業の収益が圧迫されている。加えて消費者は、節約志向で財布の紐が固いことから、商品を売るだけでは十分な収益が得られない企業も多い。2023年の日本のGDPが世界4位に転落することがほぼ確定した 背景に、そのような事情がある。
その悪しき状況を打開するため、日本政府は2023年12月に「資産運用立国実現プラン」を策定した。企業については、投資などの資産運用で運転資金の安定を図ることや、それを通して企業が中長期的な成長・機能価値を向上することが求められている。 そうなると今後は、自社の資産運用を委託する資産運用業者やアセットオーナー(顧客の資産を保有する金融機関等) 選びが重要となるだろう。
現在取引がある金融機関があれば、そこが最も頼りになる可能性は高い。まずは、現在取引のある金融機関に事業資金の借り入れや運用についてアドバイスを受けることをおすすめする。それで不満があれば取引金融機関の変更も検討したい。
文・大岩楓(AFP)