十三代 中川政七はなぜコンサル業を始めたのか
お会いした方は誰もが等しくそう感じるのではないだろうか。“雰囲気”がある。
身長181センチ、細身ですらっとしており、特徴的な白いあごヒゲが目を引く。300年以上の歴史を誇る中川政七商店の十三代目というプロフィールと、取材現場となった鹿猿狐ビルヂングの趣も相まって、その佇まいは荘厳さすら感じさせた。
十三代 中川政七氏は、卸事業が中心であった家業を国内有数の生活雑貨ブランドへと成長させた。工芸業界初の企画、製造、販売まですべてを垂直統合させるSPAのビジネスモデルを確立し、全国に直営店を拡大。年商は2002年入社時の4億円から、2018年社長退任時は52億円と約13倍まで伸ばしている。
生活雑貨事業を軌道に乗せた一方で、2009年からは業界特化型のコンサルティング事業をスタートさせた。コンサルティング会社に属したことはなくコンサルをした経験もなかった。なぜ始めたのか。
「経営者になって『日本の工芸を元気にする!』というビジョンを定めて、それに本気で取り組もうと思ったからです。直接的なアクションとして、同じ業界の企業の経営に入っていきました」。コンサルを始めたことは、経営者として最もチャレンジングな経験だったと振り返る。「そもそも自分にできるのか、からのスタートだったので。コンサル会社にいたこともないし、コンサルの経験もないし、お金をいくらもらったらいいんだろう、というところから何もわからなくて。本当にゼロからだったので、最初に1人で訪問した時はドキドキしましたね」
それでも続けていく中で確かな手応えを感じた。「やりながらわかったのは、最初に自分が事業を立て直したこととやることは一緒なんだなと。手探りでやってみて、でもやりながらこれは経験したことだ、同じ状況だ、と感じながら進めていきました」。過去の苦労を回顧しながら、笑顔で続ける。「たぶん、僕のやっているコンサルは、世の中の一般的なコンサルとは違うと思っていて、僕はクライアントと一緒に経営しているんです。僕には経営を軌道に乗せた経験があって、それを教える家庭教師のような感覚ですね」
自社の売上を拡大し、コンサルでも実績を残し、そして2018年には社長の座を退き、現在はまちづくりや、新たな会社を立ちあげブランディング支援を行うなど多岐にわたって活動している。
その中川政七氏にビジネス、プライベートの両側面からインタビュー。これまでのキャリアや、経営者としての思いや矜持を、アメリカン・エキスプレスの経営者向けウェブマガジン『BUSINESS CLASS』でお届けする。