髙木 大地氏

日本M&Aセンターが行うM&A大学。 その卒業生として最前線で活躍するOB・OGバンカーに気になる情報をインタビュー。

今回は大分銀行 法人営業支援部 ソリューション営業室 M&A・事業承継グループ 推進役補 髙木 大地氏にインタビューした。

M&A大学とは
日本M&Aセンターが協業する地域金融機関に向けて行う、研修・出向制度。M&A大学入学者(地銀からの出向者)はM&Aシニアエキスパート研修(JMAC)、評価・概要書研修などの座学と日本M&AセンターとのコンサルタントによるOJTなどを経て、自ら顧客への提案からM&Aの成約、契約の締結までを完結できるM&Aコンサルタントとなることを目指す。

まず、入行から現在までのご経歴について教えてください。

髙木:2013年4月に大分銀行に入行し、今年で11年目です。入行後最初の配属は中央市場支店で、そこで窓口、出納、融資や渉外全てを担当していました。その後、2015年10月から洞門支店に配属となり、ここでも、法人、個人問わず幅広い業務を担当しました。2019年4月から杵築支店に配属となり、主に法人担当業務に従事しました。2021年4月から日本M&Aセンターに出向し、半年後の2021年10月にM&A・事業承継グループに配属となり、今に至っております。

日本M&Aセンターに出向されるまで、事業承継・M&A業務に携わるご経験はありましたか。

髙木:支店時代にM&Aの実務に携わった経験はなかったですが、担当していたお客さまはご高齢の社長も多かったので、そういった方々には事業承継・M&Aに対する潜在的ニーズがあるだろうと考え、M&Aの勉強会には進んで参加していました。
また、「M&Aの部署に行きたい」「出向したい」といった希望はそれまで出していなかったので、出向の話を聞いた時にはとても驚きました。

日本M&Aセンターへの出向はサプライズ人事だったのですね。

髙木:はい、サプライズでした。後に当時の支店長に聞いてみたところ、ふらっと聞かれた「出向してみたいか」という質問に「面白そうですね」と答えたのが出向の人事のきっかけだったそうで、支店長的にはサプライズのつもりはなかったようです(笑)
サプライズ人事ではありましたが、専門的な会社への出向経験は刺激が多いだろうな、とも思いました。

日本M&Aセンターへの出向はいかがでしたか?

髙木:前情報はなかったので、「頭の切れる冷徹無慈悲な人の集団」と思っていたのですが、実際に出向してみると、皆さんとても温かく人間味がありました(笑)  

出向いただく前と後でM&Aに対する印象って変わりましたか?

髙木:出向前は「M&A業務はどこか遠い仕事」と感じていましたが、出向してからは、「M&Aは身近にあふれている」と感じるようになりました。今までの営業での会話の中でも、気を付けていればM&Aニーズを拾うことができたのではないか、と思うぐらいに日常にあふれている業務だと感じています。

髙木 大地氏

出向期間中に勉強になったことについて教えてください。

髙木:色々な担当者の面談に同席する中で、「時間をかけてでも最初にしっかり説明すること」の重要性を感じました。譲渡企業側のM&Aは一生に一度の経験で、慎重な方が多いです。そこの入口であいまいな説明をしてしまうと後々信用を失うことになるので、良いことも悪いこともはっきり伝えることの大切さを学びました。実際に同席した面談で、商談中「そんな流れだったっけ?」と当時のご説明を忘れてしまったお客さまからご指摘が入ったときも、はじめに時間をかけて説明をしていた担当者は「最初にこのようにお伝えしましたが~」としっかりと回答できており、商談も迷走せず、お客さまから信頼をいただいておりました。
色々な担当者の様々なフェーズの面談に同席し、勉強できたことも非常に大きかったと思います。多種多様なお客さまに対して、色々な担当者の話法を学ぶことは、出向期間中にしかできない貴重な経験でした。
一方で、一つの会社のM&Aに対して、出向期間中に受託から成約までの全行程に携われなかったことは残念に感じております。M&A業務経験のない状態での出向だったため、6か月の出向期間中のうち最初の1か月間はM&Aの基礎的な知識の習得で終わってしまい、残りの期間内でM&Aのすべての業務を経験することは難しかったです。

多くのディール経験を積まれた中で、特に印象に残っているディールについて教えてください。

髙木:出向から戻った後、受託から成約までの支援をしたディールが特に印象に残っています。譲渡企業のA社は、後継者不在という情報を銀行がキャッチしており、以前よりM&Aの提案を行っておりました。ただ、ご自身で切り盛りされてきた会社だったため、譲渡のお相手(以下B社)もご自身で決められており、その中で当行は後方支援をさせていただきました。B社の社長はA社の社長の考えに共感され、A社の社長もそれを受けて任せられる相手だと安心していただき、無事成約となりました。比較的スムーズに進んだ本件でしたが、成約式の際に譲渡企業オーナーの奥様が涙されたのが印象に残っています。奥様の涙から、経営者の方々が日々感じる不安やプレッシャーの強さを再認識するとともに、自分たちはそれらの悩み解消に資することができる業務をしていると改めて感じることができました。とても印象に残っているディールです。

貴重なお話をありがとうございました。それではここからは、現在の貴行におけるM&A支援の取組についてお聞かせください。

髙木:当行では、M&A担当が5名、事業承継担当2名の合計7名が、それぞれの担当するエリアで活動しております。初回面談はそれぞれの担当がエリアごとに行いますが、その際に確認したお客さまのニーズに合わせてそのまま担当をするか、事業承継担当に引き継ぐかを判断します。
各支店から上がってきた情報を元に面談することもあれば、こちらからニーズのありそうな先のリストを作って支店にお渡ししたり、当行データベースに登録されている支店担当者の交渉内容から、事業承継ニーズのありそうな先についてこちらから「面談しましょう」と連絡したりするなど、こちらから能動的に各支店に働きかけも行っております。

貴行内でM&Aをより普及させるために取り組んでいることはありますか?

髙木:M&Aという業務の存在については行内の認知度も高いのですが、M&Aの内容や具体的な話についてまで理解している担当者の方はそこまで多くありません。そこで、2023年4月からM&A担当者が担当するエリアの支店に常駐するスタイルを取り、気軽に質問を受け付けられる状況を作っています。特に若手行員は普段電話で質問しづらいと感じている方が多いので、支店常駐をすると些細な質問もどんどん気軽にしてきてくれるようになりました。また一度顔を合わせるとそれ以降質問しやすくなり、相談件数の増加を実感しております。
今後は、情報管理の観点から実現できるか分かりませんが、現場の担当者の方がマッチングする体制構築ができればとも思っています。現在、M&A担当が行っているマッチングを支店の担当者が行うことで、マッチングの効率化とともに、各担当者がM&Aをより身近に感じていただけるようになるのではないかと思っています。

最後に、髙木さんの今後の目標を教えてください。

髙木:1社でも多く「M&Aをしてよかったな」と思ってもらえるような支援をしていきたいです。譲渡オーナーだけではなくそこで働く人や家族、会社のある地域にも「M&Aのおかげで」と思ってもらえるような支援を行いたいです。また、M&Aを通じて1社でも多くの大分県内企業の事業規模拡大の支援を行い、大分県の経済の発展に貢献できたらと思います。