北陸銀行 荒川 慶一さん

日本M&Aセンターが行うM&A大学。 その卒業生として最前線で活躍するOB・OGバンカーに気になる情報をインタビュー。

今回は北陸銀行 コンサルティング営業部 第1グループ 主査 荒川 慶一氏にインタビューした。

M&A大学とは
日本M&Aセンターが協業する地域金融機関に向けて行う、研修・出向制度。M&A大学入学者(地銀からの出向者)はM&Aシニアエキスパート研修(JMAC)、評価・概要書研修などの座学と日本M&AセンターとのコンサルタントによるOJTなどを経て、自ら顧客への提案からM&Aの成約、契約の締結までを完結できるM&Aコンサルタントとなることを目指す。

早速ですが、入行から現在までのご経歴について教えてください。

荒川: 2013年に入行して、小立野支店(石川県)、上野支店(東京都)、本店営業部(富山県)で法人渉外を主に担当しておりました。2020年にコンサルティング営業部へ配属となったタイミングで日本M&Aセンターに出向することになり、約1年間M&Aの経験を積ませて頂き、現在に至っています。

出向される前はM&Aに対してどのような印象をお持ちでしたか?

荒川:出向前はM&Aに携わったことがほとんどなく、営業店にいたときに担当していたお客様がM&Aで同業者を譲受した際に融資の相談を受けた程度でした。当時、私自身は積極的にM&Aの提案をしていたわけではなく、あくまでもお客様への提案ツールの一つ程度の認識であり、どこか縁遠い業務といった印象を持っていました。

日本M&Aセンターへ出向された期間についてお話をお聞かせください。

荒川:実は私が出向したのが2020年の2月、まさにコロナウイルスの感染拡大が日本国内で発生し始めた頃で、これまでの業務のやり方が大きく変化した時期でした。特に面談がリアルからWebへと切り替わり、テレワークが用いられる環境の中でしたが、M&Aのトップ企業である日本M&Aセンターの企業文化や商談への取り組み方、環境への対応力を実体験できたことは非常に貴重な経験となりました。出向期間中は主に譲渡企業の企業概要書・評価書作成(案件化)、譲受企業とのマッチングや商談活動への同行を行っていました。
出向期間中は鈴木健介さん(日本M&Aセンター 金融法人部)とほぼ毎日お会いし、業務をともにしていました。鈴木さんの「念には念を入れる」業務への取り組み姿勢は今でも参考にさせていただいています。

出向期間中にもっとしておきたかったことはありましたか。

M&Aに関する様々な経験を積ませていただきましたが、コロナ禍でもあり、受託から成約まですべてに携わることのできた案件が1件しかなく、出向期間中に成約までのプロセス・経験をもっと積んでおきたかったと感じています。
また、出向期間中に色々な銀行の異なる役職の方々とM&Aに限らず各銀行の取り組みに関する情報交換ができたのは有意義でした。一方で、私自身が当行のM&Aに関する取り組みを知らない中での出向だったため、他行との取り組みの比較や私からの発信が少なかったというのは心残りになっています。

北陸銀行 荒川 慶一さん

多くのディール経験を積まれた中で、特に印象に残っているディールについて教えてください。

荒川:日本M&Aセンターと当社で協業し、成約した医療機関(譲渡企業)のM&Aです。後継者がいらっしゃらないと同時に、コロナ禍の影響もあり資金繰りが厳しい企業だったため、迅速なお相手探しが求められるケースでした。日本M&Aセンターと当行、それぞれでマッチングを行う中で、当行のお客様が譲受をご希望され、無事成約に至りました。短期間で商談を進める必要があったことや譲渡条件の調整について苦心したこともあり、特に印象に残っています。厳しい条件でしたが、結果として地元の地域医療を守ることができ、地域貢献できたのではないかと感じております。

貴重なお話ありがとうございました。それではここからは、現在の貴行におけるM&A業務の取り組みについてお聞かせください。

荒川:当行のM&Aチームはエリアごとに担当を分けており、それぞれの地域ごとで活動しております。私が担当している富山エリアでは、各支店で半期に1回、事業承継についての打ち合わせを行っています。事業承継は短期的な話ではなく、会社が存続する限り続く話であり、定期的に打ち合わせを行うことで、本部や支店の担当者が異動になっても情報を絶やさない仕組みを構築しております。また、支店の渉外担当の方との同行訪問にも積極的に取り組み、取引先へのニーズ喚起を行っています。

出向から戻って来られて大変苦労されたとお伺いしております。出向から戻ってきてからの荒川さんの取り組みについてお聞かせください

荒川:私が担当をしている富山エリアは当行本店もある地域で、ありがたい事に当行への信頼が厚い地域だと感じました。一方で後継者不在の企業も多く存在している中で事業承継へ課題を感じている企業が多いように感じました。
そのため、出向から戻ってからは取引先訪問でのニーズ喚起と支店での勉強会開催を行うことで行員全体のM&A知識の向上を図ることに注力しております。

M&A提案を取り組むにあたり心がけていらっしゃることがあればお聞かせください。

荒川:業界や地域の特色について勉強することです。私の場合は、富山のマーケットを当行のデータベースや四季報などを使って勉強しました。「電気工事業はこのエリアだと○○さんが精力的に営業していますよね」「製薬会社の○○さんが御社のライバルですか」といった話ができるようになれば、お客様との距離をぐっと縮めることができます。そこから、経営に関するお話をしていく中で、事業承継の悩みや課題をヒアリングし、M&Aのニーズがあるお客様にM&Aの提案を行うということを心がけて活動しております。

現在の取り組みについて感じている課題があればお聞かせください

荒川:支店の担当者の中には、M&Aに良くない印象を持っている行員が一定数いるのも事実です。お客様にM&Aを提案する中で、知識量の不足から正しい情報を提供できずにオーナーから良い反応を引き出せなかったため、そのような印象になってしまっていると思っています。この課題に対しては、支店の担当者との同行訪問・勉強会を通じてM&Aに対しての正しい認識を広めていくとともに、お客様と深いレベルで事業・経営の話をする中で課題を見つけ、その課題解決のための提案ができるサポートをしていきたいと思います。

日本M&Aセンターへ期待することがあればお聞かせください

荒川:日本M&Aセンターは国内最大手であり、多くの事例を社内に蓄積されていますので、幅広い知見を共有していただきたいです。特に全国的なM&Aのトレンドやマッチングのアイデア(○○業と○○業のM&Aはシナジーが大きく件数が多いなど)を積極的に活用させて頂きたいと考えています。

荒川さんの今後の目標を教えてください。

荒川:M&Aを通じて、1社でも多くの富山のお客様の課題解決を行っていくことです。M&Aの成立で会社の存続や従業員の雇用が守られるので、今後も地域の経済に貢献したいという今の気持ちを忘れずに活動していきます。

最後に、富山のおすすめスポットを教えてください。

荒川:「ますのすしミュージアム」です。食事はもちろん、工場見学、ますのすし作り体験などができる施設になっています。ぜひ行ってみてください!