イスラエル、テルアビブで『イカ・チョコレート』を経営するイカ・コーヘンさん。2月5日まで開催されているサロン・デュ・ショコラ 2023にも出展しています。

中東のスパイスなど、イスラエルのローカルな素材を生かしたチョコレートは、日本でも大人気で売り切れ続出です。イカさんはどのような経緯でチョコレートの世界に入ったのでしょうか。お話を伺いました。

(画像=イカ・コーエンさん。一流ショコラティエたちのもとで修行後、2011年にお店をオープン。中東のエッセンスを取り入れながら、創造的で革新的なショコラ作りに情熱を注いでいます。インターナショナル・チョコレート・アワードで2014年から3年連続銀賞受賞。)

技術者から転じてショコラティエに

――イカさんはどのような経緯でショコラティエに?

イカ:私はもともと海洋学を学んでいました。オーストラリアを旅していたときいろいろなところでチョコレートを勧められ、そのとき「チョコレートで何かしたい」と目覚めたのです。もともとチョコレートは好きでしたが、ただ食べるではなく、創造したい、表現したいという欲求をそのとき自覚しました。

ほとんど20年前――ちょうど20年前ですね。それまでチョコレートの分野でキャリアを築くことは考えていませんでした。ただチョコレートを愛していたというのは確かでしたが。

オーストラリアから帰国し、すぐにチョコレートの仕事をしたいと兄に相談しました。彼は「それがやりたいことならやるといい」と背中を押してくれました。自分が何に対して情熱を抱いているのか、それに気づく機会に恵まれたのは幸せなことだったと思います。

――大きな決断だったのでは?

イカ:ものづくりという意味では、私はラジオ局やTV局などで、音響技術者として働いていたのです。ただ、20代のときは、キャリアについて深く考えていなかったと思います。とにかくやりたいこと、好きなことをしていたというだけで。

――イスラエルの方とお話していると、スピリットがあるなとよく感じます。イノベーションスピリットというんでしょうか。

イカ:ええ、まさにその通りです。イスラエル人をわかっていますね。

イスラエルは若い国です。世界中のいろいろな場所から人々がやってきます。ですから自然と、生まれ育った国の外へ出て、新しい人生を始めようというモチベーションを持った人々が集まるのです。「やりたいことをやる」「挑戦する」ことを受け入れる風土があります。

私の両親もオープンマインドで、やりたいことは応援してくれるタイプでした。もちろん保守的な人もたくさんいますが、私の両親は、ショコラティエになりたいという夢を理解してくれました。

▲今回、サロン・デュ・ショコラ 2023で販売された商品
※在庫状況は逐一変化しますので、ご購入の際は事前にご確認いただきますようご注意ください※

『イスラエルフレーバー』イスラエルの伝統的な素材を使った5種のボンボン
『死海の塩コレクション』死海の塩を5種類の素材と合わせたキャットタングチョコ(※2月1日現在完売済)
『バブルポップ サウンフラワーシード』ヒマワリの種を使ったプラリネのチョコレートバー
『イカ・フェイバリット』イカ・コーエンさんのお気に入りボンボン5種

チョコレートを学ぶことは、その国の文化を学ぶこと

――ショコラティエになると決意して、すぐにフランスへ渡ったのですか?

イカ:いいえ、まずは一年、準備ができたと感じるまでイスラエルで勉強しました。何もわからない状態でフランスへ行きたくはありませんでしたから。私は練習するためのキッチンがあったからラッキーだったと思います。

1年経った後、私がショコラティエになることを後押ししてくれた方――私は彼をエンジェルと呼んでいるのですが――に、フランスのショコラティエに紹介してほしいと頼みました。そうして、ジャック・ジュナン、ミッシェル・ショーダンそしてレストラン『ギー・サヴォワ』のエグゼクティブ・パティシエであるユーグ・プジェといった、フランスの名だたるショコラティエのもとで修行することができたのです。ヴァンサン・ゲルレやパトリック・ロジェの工房でも学びました。

――どんな経験でしたか?

イカ:簡単ではありませんでしたよ! チョコレート作りだけではなく、自分が取り組んでいることをリスペクトするということを学びましたね。

技術はもちろんたくさん学びましたが、それ以上に文化を学んだと思っています。すべての国にはその国独自の規範というものがありますが、私はフランスの規範を学びました。フランス後も話せなかったので大変でしたね。

あるキャリアを選択するということは、その世界に飛び込むということです。まずその世界を理解し、リスペクトし、そして学ばなければなりません。パリで過ごした8ヶ月は、チョコレートを学び、カルチャーを学び、自分自身を学ぶことでもありました。

自分のお店を開こうと思ったのは、パリで学んだ経験の後、やっと6年経ってからです。

チョコレートはケミストリー

――イカさんはユニークな素材を使ってチョコレートを作っていらっしゃいますね。

イカ:チョコレートは化学に似ています。大事なのはバランスなんです。たとえばクリームとチョコレートを正しい分量で混ぜたらガナッシュになりますが、この中にいろいろなフレーバーを混ぜることができます。

あるコンテストでイスラエルに審査員が来たことがありました。彼に「ザータル(中東のスパイス)を使うべき」だと言われ、その通りだと思ったんです。

何かを発見するには、外から訪れた人の目が必要ですね。自分の周りに当たり前に存在しているものに、新たな光を当ててくれるのです。翌年ザートルを用いたチョコレートを出し、ゴールドメダルを受賞しました。

機会はいつも、どこでも存在していますが、それをキャッチするには、自分自身が「インスパイアされる準備ができている」必要があります。インスピレーションに対していつもオープンでいたいですね。

――ショコラティエはアーティストのようですね。

イカ:そうですね。表現にチョコレートを用いるアーティストです。願望や夢を実現するのに、私の場合はチョコレートが必要なのです。

ーー今後、日本への出店はお考えですか?

イカ:チャンスがあればぜひ。ニューヨークなど、いろいろな場所で出店を誘われますが、チョコレートに愛情を持つ日本の方にはぜひ味わっていただきたいと思っています。

イカ・チョコレートはオンラインショップでも購入することが可能です。イスラエルのスパイスが利いたチョコレートをぜひお試しあれ。

イベント情報

サロン・デュ・ショコラ 2023 PART2 THE ARTISANS ~最高峰ショコラティエの技~

一般会期: 2023年1月29日(日)~2月5日(日) 8日間 各日午前10時~午後8時 ※最終日午後6時終了
会場:伊勢丹新宿店 本館6階 催物場
東京都新宿区新宿3-14-1

入場について

■1月30日(月)~2月5日(日)各日午後3時まで:
パスマ―ケット入場整理券(無料)が必要となります。※詳しくはこちら
(パスマーケットの入場整理券(無料)のお申し込みは全日程終了しております)

■1月30日(月)~2月5日(日)各日午後3時から:
パスマ―ケット入場整理券(無料)は不要ですが、店頭で配布している「入場待機列 整理券」が必要となります。

パスマーケットの入場整理券をお持ちでない方

※1月30日(月)~2月5日(日)の期間中、午後3時以降にご入場をご希望のお客さまは開店後【本館 6階 メンズ館連絡通路】にて「入場待機列 整理券」を配布いたします。(お一人さま 1枚限り / 無くなり次第終了)

イカ・チョコレート https://ikachocolate.com/