創業者が事業立ち上げ期に一番大事にすべき経営資源とは?
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今日は、創業や新規事業のスタートを考えている方向けに、一番大事にして欲しい経営資源を紹介したい。2023年が始まり、新たなチャレンジを志している方も多いのではないだろうか。大事にすべき経営資源を理解しているかどうかで事業が軌道に乗るか否かが変わってくる。

本物の「上司力」
大村 康雄(オオムラヤスオ)
株式会社エッジコネクション 代表取締役

延岡高校、慶應義塾大学経済学部卒業後、新卒生として米系金融機関であるシティバンク銀行入行。営業職として同期で唯一16ヶ月連続売上目標を達成。 2007年、日本の営業マーケティング活動はもっと効率的にできるという思いから営業支援・コンサルティング事業を展開する株式会社エッジコネクション創業。ワークライフバランスを保ちつつ業績を上げる様々な経営ノウハウを構築、体系化し、多くの経営者が経営に苦しむ状況を変えるべく各種ノウハウをコンサルティング業、各メディア等で発信中。1200社以上支援し、90%以上の現場にて売上アップや残業削減、創業前後の企業支援では80%以上が初年度黒字を達成。東京都中小企業振興公社や宮崎県延岡市商工会議所など各地で講師経験多数。

創業期=リソース不足期

弊社は、企業の営業コンサルティングとアウトソーシングを同時に行うという会社である。このサービスを喜んでいただけるケースの一つが会社の創業期や新規事業の立ち上げ期だ。

その中でも創業期は特に当社サービスを喜んでくれるケースが多い。なぜなら、営業に関してノウハウもリソースも無いケースがほとんどだからだ。

営業が得意で、営業力を武器に起業をする社長ももちろん存在する。しかし、肌感覚としてそれよりも遥かに多いのは「技術力があった」「そのビジネスモデルの発案者だった」など営業をあまり得意としない人が起業をするケースだ。

営業以外の自分の得意なことに集中していれば売上が入ってくるかというと、当然ながらそうではない。営業活動は必須だ。どんなにリソースがなくても避けては通れないのが営業活動である。管理業務やサービス開発など、さまざまなことをしながら営業活動を行わなければならない。

創業者自身の時間という経営資源

タイトルに、「創業者が一番大事にすべき経営資源とは?」と書いた。もう明かしてしまうが、その答えは“創業者自身の時間”である。

そんなことかよ、と思われる方もいらっしゃるかもしれない。しかし、その本質を理解している人は結構少ないというのが、実際に創業者や新規事業責任者と接していての実感である。

経営資源というと、ヒト、モノ、カネとよく言われるが、ヒト・モノ・カネのポイントは、これらを投資してリターンを得ることが目的だ。

つまり、

  • ヒトをどの事業にどの職種で何人投入するか
  • カネをどこにどれだけ掛けるのか
  • モノをどの市場に向けて売り出すのか

このように、投入の仕方を決断して初めて経営資源は価値が生まれるのであり、そのリターンが最大化される投入の仕方を、事業責任者は日夜考えなければならない。

経営資源とは、リターンを得るための原資である。つまり、創業者として「リターン(売上)が最大になる時間の使い方なのか?」をいつも意識できているかが勝負の分かれ目となるということが私の伝えたいことなのである。

創業者の時間という経営資源の無駄遣い

創業者や新規事業責任者から、こんな話を聞いたことがある。

  • 一日中、アイデアを考えていた。
  • 一日中、アタックリストを作っていた。
  • 一日中、企画書を作っていた。

などなど。思い当たる方はいないだろうか。どれも大事なことだが、ポイントは「リターン(売上)が最大になる時間の使い方なのか?」である。

革新的なビジネスアイディアも良質なアタックリストも素晴らしい企画書も“将来的に”売上に繋がるかもしれない。だが、明日の、今週の、今月の生活費として計算できるものになるだろうか? おそらくNOだ。このような経営資源の使い方をしているケースは枚挙にいとまがない。

“創業者の時間”のもっとも重要な投資先とは?

本来あるべき創業者や新規事業責任者の時間の使い方。それは、営業活動である。あなたの作ったビジネスモデルやアタックリスト、企画書が「良い」と言えるのは、営業活動を行い売上に繋がったときである。よって、創業者の時間は、売上に繋がるための活動最優先で投資されないといけないのだ。

「創業者の時間を営業活動に最優先で投資する」とは『人と出会える、話せる時間帯に何人の人と接触できるのかを徹底的に意識する』ということである。

午後2時に企画書を作っていないだろうか?

午後2時は、いろいろな人、言い換えれば見込み顧客と接触ができる時間帯だ。であれば、接触するための活動にあて、企画書は午後6時から取り掛かった方がいい。創業者に労働条件は関係ない。事業がテイクオフしなければ生活が危ぶまれるのだから。

では、見込み顧客と接触するにはどうすれば良いのか。テレアポやDM、ビラ配り、飛び込み営業、呼び込み、ポスティングなど、地道なものがほとんどだ。実際、よほど大きな資本金で創業しない限り、このような地道な活動を当面の間必死に行うことこそが成功への一番の近道だ。

とにもかくにも顧客となってくれる可能性がある方に出会わないことには会社や事業はスタートしない。太陽が昇っている間(業種によっては逆の場合がある)は、そのような活動を最優先出来るかが勝負の分かれ目なのである。

イーロン・マスク氏など、著名な事業家の多くがハードワークを勧めている。成功したかったら長く働けと。ただ、全く人と出会わないまま長く働いてもその事業は絶対に成功しない。日中、徹底的に営業活動をし、それ以外のやらなければならないことを夜に回す。その結果として、長く働くことになった人が成功するのである。

創業者が後ろに引くタイミング

「トップは後ろでドンと構えておくべし」巷でよく聞く話だろう。大河ドラマでも総大将たる大名は戦場の一番うしろに陣を張る。

最後に、この話との整合性を紹介して終わりにしたい。結論から言ってしまえば、「手駒に力のある武将が揃って初めて後ろでドンと構えるべし」と伝えたい。

創業期や事業立ち上げ期は、ほぼ間違いなく創業者や事業部長が一番優秀なはずである。そんな優秀な兵力が後ろに引っ込んでいたら、前線は疲弊するばかりだ。よって、大将である創業者が前線にいなくても勝ち戦が出来るようになるまで、じっと待たなければいけない。

圧倒的な勝ち戦、そして、創業者たる自分が前線から離脱したら少しの勝ち戦という戦力状況になって初めて、後ろでドンと構えて良いのである。実際にそうなったとき、自分と同等の戦力を持つ武将が育っているはずだ。

そして、そんな武将が育った時に初めて、大本営に引っ込み、どこにどの武将を配置するか考え抜くことが、創業者の時間という一番大事な経営資源の最も有効な投資先になる。自分が前線であげる戦果より、正しく部隊を配置することであがる戦果のほうが大きくなったときである。

先にも紹介したように、創業期の営業活動は地道で辛いものばかりだ。なので、一刻も早く前線を誰かに任せたい気持ちは常に去来するだろう。でも、ダメである。それをやってしまうと、これまでの苦労が水の泡になるリスクがあることを理解してほしい。

もしかしたら、最初からそのようなメンバーが経営陣にいて、序盤から大本営にいられて良かった! と思った人もいるかもしれない。確かにそれはラッキーだが、戦場で戦果を上げている人が一目置かれるのが世の常であり、大将の座を奪われるリスクもあるということに注意してほしい。

以上が、私が伝えたかった創業者の一番大事な経営資源と、その投資先だ。創業者は、文字通り、業を創らないと存在価値がない。そして、業を創るには外からお金を持ってくる必要があることを肝に銘じながら、時間の使い方と向き合ってほしい。