「ワーケーション」という言葉こそコロナ禍で浸透したものの、その実態を知る人は多くないだろう。
関西と四国をつなぐ瀬戸内海最大の島、淡路島。都会に近く、自然も豊かなこの島は仕事と休暇の両方を兼ねる“ワーケーション”先として今、大きな注目を浴びている。
淡路島を日本のシリコンバレーに
リゾート地でもある淡路島で「働く」とはどういうことなのか。株式会社パソナグループは2020年に淡路島への本社機能一部移転を発表し、テレワーク推進に力を入れる。パソナグループが地方創生事業を展開する目的で設立した株式会社All Japan Tourism Allianceの代表取締役を務める山本真理子氏は、淡路島での取り組みについて
「新型コロナウイルス感染症の拡大などによって、観光業など多くの産業が打撃を受けました。また、テレワークなど働き方も大きく変化する中で、国の取り組みとして地方創生テレワークを推奨し、東京圏一極集中の是正と地方の活性化を目指しています。パソナグループはその地方創生テレワークの活動として淡路島に本社機能の一部を移し、ワーケーション環境を整えてきました。
より多くの企業を誘致していけるように淡路島の仕事や生活、観光の更なる充実に力を注いでいます。将来的には、淡路島が日本のシリコンバレーと呼ばれる世界を目指したいと思っています」と地方創生の展望を語った。
仕事も観光も充実の淡路島
パソナグループではテレワーク推進の一環として経営者やビジネスマンに向けたさまざまな支援プログラムを実施している。社員研修の一環で5日間の淡路島ワーケーションを経験したみずほ銀行の山浦康二氏(情報通信・リテールインダストリーグループ長付 調査役)は「海や山に囲まれた静かな中で仕事をするのは良いものです。“すごく集中できる環境だ”と参加者が口を揃えて言っていました。オンライン会議で景色を映して淡路島のことを話題にしているメンバーもいました。各々が楽しみながらも集中して業務に取り組むことができたと思います」とテレワーク環境への満足度を語ってくれた。
「休日にはレンタサイクルで島を回ってみたり、地元の農家さんにお話を聞きに行ったりしました。また、ニジゲンノモリにも行かせて頂き『ドラゴンクエスト アイランド』にチャレンジしたり、ニジゲンノモリ×『鬼滅の刃』「ナイトウォーク那田蜘蛛山」に参加したりと楽しみました。ドラゴンクエスト アイランドはチームビルディングの研修をやっても面白いんじゃないかなと思うくらい本当に良くできたアトラクションでした!」
公私共に充実したワーケーションを体験した山浦さんは、率直に羨ましい環境だとパソナグループの取り組みを称賛。「若い人が地方の島でさまざまな役割を担い生き生きと働いているのを見ると、本当に素晴らしい取り組みだと思いますし、こういった地方創生に取り組む企業がたくさん出てくると頼もしいですよね」と地方の未来に期待を寄せた。
施設を続々とオープンしワーケーションの充実を図る
パソナグループは本社機能の一部を置く淡路島北部を中心に、テレワーク用の施設を次々と開設。2021年4月に開業したパソナワーケーションハブ鵜崎(うざき)をはじめ、12月にはパソナワーケーションハブ東浦、さらには2022年6月にはパソナワーケーションハブ志筑、緑に囲まれた山の中腹にグローバルハブスクエアをオープンした。
パソナワーケーションハブ鵜崎(うざき)
パソナワーケーションハブ鵜崎は、神戸の三ノ宮から高速バスで30分という抜群のアクセスに加え、オーシャンビューの開放的な空間が特徴。
研修ルームや会議室、さらに一息つけるカフェブースも設けている。
グローバルハブスクエア
グローバルハブスクエアは自然に溶けこむシックなデザインで光と空気をたっぷりと取りこめる作りになっている。
その屋上にはバーカウンター、1・2階にもレストラン「海神人の食卓(あまんのしょくたく)」があり、自然があふれる中での、仕事の後の一杯もまたこの施設の醍醐味だ。
農家レストラン「陽・燦燦(はる・さんさん)」
農家レストラン「陽・燦燦」は、自然に溶け込む茅葺屋根の空間を世界的建築家である坂茂氏が設計した。目の前の畑で収穫された新鮮な野菜をはじめとした淡路島のグルメを楽しむことができる。
豊富な観光名所も魅力
古事記や日本書紀にも記されている淡路島にはさまざまな歴史的建造物があり、海や山などの自然に囲まれた観光スポットも豊富にある。
兵庫県淡路市多賀に鎮座する県内唯一の神宮で、古事記・日本書紀の冒頭に描かれる『国生み神話』に登場する「伊弉諾尊(いざなぎのみこと)・伊弉冉尊(いざなみのみこと)」二柱の夫婦神を祀る日本最古の神社。境内にある樹齢約900年の御神木「夫婦の大楠」は、縁結びや夫婦円満子宝などの信仰が篤く、淡路島に訪れたら必ず参拝したい国生み神話ゆかりの聖地として多くの方々が訪れている。
淡路島へ訪れたら渦潮を見ておくべきだ。大鳴門橋を渡り徳島県へ抜けると、大鳴門橋の橋桁内に設置された遊歩道「渦の道」へ行くことができる。海上45メートルからガラス床越しに迫力ある渦潮を堪能してほしい。
1960年代の開発に伴って、破壊された淡路島北部の自然を取り戻す目的で建築家・安藤忠雄氏を中心に淡路夢舞台が誕生した。同氏デザインの特徴的なコンクリート建築と自然を取り入れた演出で、建物そのものを探索しながら、自然を楽しむことができる。
大自然に囲まれた「禅坊 靖寧」では非日常な癒しを味わえる
自然豊かな山中で心身を整えられる「禅坊 靖寧」では禅やヨガ、瞑想が体験できる「ZEN Wellness」や淡路島産食材を使用した禅坊料理を用意する他、書やお茶などのアクティビティを体験できる。
禅は、大手企業の経営者や創業者、偉大な起業家も生活に採り入れていた。禅とは、精神統一して静かな心で真理を追求することと言われている。座った状態でゆっくりと呼吸をして精神統一を行う座禅は、リラックス効果や集中力向上につながるとされており、「禅坊 靖寧」では開放的な環境でこうしたスピリチュアルな体験ができる。
禅体験イベントを開催
禅坊靖寧では禅の魅力をさまざまな形で伝えており、2022年11月20日には「音楽とZENの世界」を開催。太鼓や琴、ヴァイオリンの演奏に心身を委ねながらの禅体験だ。また、動物性食品や小麦粉、油、砂糖などを使用せず調理された禅坊料理が味わえる。
和太鼓集団「鼓淡(こたん)」の迫力あるパフォーマンスで始まった「音楽とZENの世界」。琴やヴァイオリンの音色がウッドデッキに響き渡り心が洗われる。
途中、振る舞われる小麦粉や砂糖、油を一切使わずに熟成などの伝統的製法で調理された禅坊料理は、身体を内側から整えるための食事だ。自然の旨みによるしっかりとした味付けに驚く。
定期的に開催される「音楽とZENの世界」は、日頃の疲れた心身を癒してくれるとても良いイベントだ。
普段、生活している中で、そもそも座禅をするという機会がなかなか無いだろう。ぜひ「禅坊 靖寧」で、自然を全身に感じながら座禅をするという貴重な体験をご自身で味わって頂きたい。
バケーションを彩るこだわりたっぷりの宿泊施設
精力的に働き、遊び、疲れた体を癒すホテルや旅館も充実している。
望楼 青海波
「望楼 青海波」は全室オーシャンビューというぜいたくな立地に加え、天然ラドン温泉もあり、さらに淡路島食材をふんだんに使用した健康的な食事も味わえる。
ワーケーションスペースや会議室、スポーツジムも備えるなどさまざまなニーズに対応しており、とりわけおすすめの滞在先だ。
GRAND CHARIOT 北斗七星135°
丘の上、満天の星に覆われるコクーン「GRAND CHARIOT 北斗七星135°」はニジゲンノモリの高台にある。贅沢な時間を過ごしたいならこちらをチョイスすれば間違いないだろう。天然のプラネタリウムをぜひ味わって欲しい。
その他にも本格的なフランス料理が楽しめる隠れ家的ホテル「オーベルジュ フレンチの森」をはじめとした多彩なホテル、旅館が林立している。
これぞ地方創生 益々の発展に注目の淡路島
パソナグループが淡路島への本社機能移転を発表して2年が経ち、約470名(2022年5月末時点)の社員が同島に移住した。2024年5月末までにはその数を1,200名まで伸ばす見込みだ。また、ワーケーション推進のためにさまざまな起業家向けのプログラムを実施し、その成果もあってかすでに30社以上が企業進出しているという。
都会の喧騒を離れて自然に囲まれ、温暖な気候や健康的な食事で心や体を整えながら、充実したテレワーク環境で仕事に集中する。レジャー施設やゴルフ場などのアクティビティも充実しており、事業加速を目指す経営者はもちろんのこと、会社員もフリーランスも有意義なビジネスライフを送れるはずだ。