最近日本でも良く耳にする「フードテック」。人口増加や食糧危機にも対応し、限りある地球の資源を摂取するだけでなく持続可能な食の在り方を見直すという意味でも非常に重要なテクノロジー、それがフードテックです。

国土が狭く、自然の条件が厳しいイスラエルは、もともと人間が努力しなければ食糧は手に入らないという状況にある国。フードテック、アグリテック開発の波はかなり以前からあり、様々な技術が開発されているのが、ここイスラエルなのです。

そんなイスラエルで11月7日に、アジア、ヨーロッパ、アメリカから1700社以上が参加するという、フードテック界でも最大級のエキスポ、Foodtech IL2022が開催されます。

このエキスポを目前に控え、エキスポ・パートナーであるNEW-IJがフードコンテストを開催しました!

その様子をお知らせします。

(画像=NEW-IJ、大使館関係者、審査員、ラズベリー関係者)

Foodtech IL2022

Foodtech IL2022は、イスラエルに本社を置く食品会社シュトラウスが主催するエキスポ。世界各国からフードテックに興味を持つ企業やVCが集まり、フードテックに関わる様々なスタートアップがその技術を紹介します。インベスターによるコンペティションや、フードテック界の一人者によるパネルディスカッション、ディベート大会など、世界のフードテックの最先端をとらえた祭典なのです。

このエキスポにパートナーとして名を連ねているのがNEW-IJ。NEW-IJは以前こちらの記事でもご紹介したように、日本とイスラエルの女性をつなぐグループで、両国の文化及び経済的な関係を深めることで女性の社会進出を実現させることを目標としています。

NEW-IJはFoodtech IL2022でジャパン・パビリオンを展示します。そこで日・イ双方のフードテックの最新技術と日本の伝統料理をご紹介。さらに、イスラエルのフードテックと”和”を融合させた創作ディッシュを発表します。

今回のフードコンテストはこのFoodtech IL2022のプレ・イベント。このパビリオンで発表される創作ディッシュの選考の場となりました。

コンテストの参加者と審査員

(画像=コンテスト会場となったラズベリーの食品展示兼調理場の入り口には日・イの旗がたてられました。)

コンテストはテルアビブ近郊、ローシュ・ハアインという街のハイテク工業団地にあるラズベリーという食品輸入会社が持つ調理会場で9月29日に行われました。

コンテストへの参加者は以下5名。

1.シャローム・スィムハさん 

2.イリヤ・ゴールドマンさん

3.ダニエル・ゼリンガーさん

4.ロニット・ブランドさん

5.ノア・エイナットさん

そして、審査員は以下3名。

1.柴田得雄さん

2.エヤル・シェニさん

3.グレッグ・ハーレンさん

会場には日本大使館より高橋公使も応援に駆けつけてくださいました。

(画像=審査員とシェフたち)

審査員の柴田さんは、日本食の専門家で在イスラエル日本大使館の公邸調理人です。

また、審査員のエヤル・シェニ氏はイスラエルでの料理コンテスト番組の火付け役となった「マスターシェフ」の審査員役を長らく務めたこともある、イスラエルでもっとも有名なシェフの一人。イスラエルにおけるフードコンテストを「食に強い興味を持つ一部の人々の特別な趣味」という立場から「皆が楽しむ大衆文化」というステイタスへと押し上げ、食に対する興味をより多くの人々に抱かせた立役者と言っても良いでしょう。彼の料理スタイルは、新鮮な材料そのものの味と香りを大切にするもの。日本にも料理の視察に行ったことがあり、素材を大切にし微妙な味わいを敏感に感じ取る日本食にとても興味を持ったと言います。

クレッグさんは世界の新しい味を発見してイスラエルに広める食品輸入会社、ラズベリーの専属シェフです。

(画像=ラズベリー専用調理場からの眺め)
(画像=日本食材の陳列棚。最近は、イスラエルでも様々な日本食が手に入るようになりました。)

イスラエルのフードテックと「和」が融合。コンテストに出された料理たち

それでは、ここで発表された料理のご紹介です。

エントリーNo. 1:カンパチとデーツの刺身、「デーツ醤油」和え

イスラエルでは良質なエネルギーと栄養素の宝庫であると言われるデーツ(ナツメヤシ)が、南の砂漠に近い地域を中心に収穫されています。干したものや生のものをそのまま食したり、シロップへと加工されたりしたものが消費されている、イスラエルでは非常にポピュラーな素材です。そんなデーツを使って作られたのがこのデーツ醤油。大きさや形の問題で売り物にならないとされた実や、加工段階で生じる食品ロスが原材料。麹を使ってシェフ本人が18か月かけて作るのだそうです。

(画像=デーツとカンパチの刺し身を作り上げたシャロームさん)
(画像=シャロームさんのデーツ醤油の味をみるエヤル・シェニ氏)

エントリーNo. 2 : 卵ロール・ブレックファスト、「ゼロ・エッグ」

薄く焼いた錦糸卵をノリに見立て、ほのかに昆布とシイタケの出汁が香るご飯を巻いた「卵ロール」。ご飯にはスクランブルエッグや豆を刻んだものなどが混ぜこまれています。トップにかかっているソースはマヨネーズベースのゆず風味。卵をふんだんに使ったおいしそうな料理ですが、なんとここで使われている素材はすべて植物由来。卵もニワトリが産んだものでなく、植物性の材料から作られたビーガンフードなのです。

この卵を作っているのがゼロ・エッグ。人口増加に対するたんぱく源不足の解消、環境への負荷が少なく、動物愛護の倫理的な観点からの問題もクリアすることのできる、イスラエル生まれの革新的な技術なのです。

(画像=植物性由来の卵、ゼロ・エッグで作られた卵ロールを完成させた、ダニエルさん)
(画像=ダニエルさんのゼロ・エッグを審査する柴田さんとエヤルさん)

エントリーNo. 3 : 厚切り肉の和風ステーキ、肉餃子添え「レディファイン・ミート」

厚切りの肉を鉄板の上でジュージューと焼き、生シイタケのソテーを添えた和風ステーキ。単純なようでいて、素材の味と焼き具合が最も試される難しいディッシュです。そしてステーキには肉がたくさん詰まった焼き餃子が添えられます。

香りあふれるこの肉も、実は植物由来食品、プラント・ベースのビーガン・ミートなのです。この代替肉はイスラエル生まれの技術を使いすでにアメリカやヨーロッパでも販売がはじまっているレディファイン・ミート社のもの。大豆、グリーンピースなどの穀物のたんぱく質を原料に作られていてます。ビーガンミートは動物愛護などの倫理的な側面のみならず、地球の資源やエネルギー、食糧不足への対応といった環境配慮や合理性の面からも、今後非常に重要な役割を果たすと思われる食材です。

(画像=イリヤさんのステーキの材料。肉は植物性由来、レディファイン・ミートの代替肉)
(画像=レディファイン・ミートを調理するイリヤさん)
(画像=ステーキの完成。はた目には普通のお肉と変わりありません。)

エントリーNo. 4 : 抹茶のムースボールゆず風味「クリームコール」

抹茶ムースとゆず風味のクリームを層に重ねてボールにしたものを抹茶入りホワイトチョコレートでコーティング。クランブルのトッピングが口当たりに変化をつけます。ここでは「クリームコール」という、ちょっと変わったイスラエルのフードテックから生まれたクリームが使われています。クリームコールはアルコール分を失わず、化学物質などを使わずにクリームの中にアルコールを閉じ込める技術。この技術はすでに様々な特許を取得していて、この技術を使うことにより、食の可能性が大きく広がるとのことでした。

(画像=抹茶ボールを掲げるロニットさん)
(画像=ロニットさんの抹茶ボールを試食)

エントリーNo. 5 : ゆずと胡麻トッピングの和風ハニームース

こちらも上記のクリームコールを利用したデザートのディッシュ。ハニームースの上にゆずクリームと黒ゴマから作られたチョコレート風のトッピングをのせたかわいらしい一品。クリームコールを使ったデザートで「大人のスウィーツ」の幅が拡がります。

(画像=出来上がったスィーツを持つノアさん)

優勝者は?

(画像=ラズベリーの外観。専用調理場では販売の他にもクッキングスクールなどが開催されます。)
(画像=日本、イスラエル、ラズベリーの旗)

この様に様々な技術と工夫を凝らし、イスラエルのフードテックと和を融合する試みのフードコンテスト。筆者である私もそれぞれの料理を味見させていただきました。

代替肉やビーガンエッグなど新しいものを頂くのは本当に興味深く、デーツ醤油は新しい調味料としての可能性を感じました。アルコール入りクリームは甘辛両刀づかいにはなかなか魅力的なスイーツですね!

さて、コンテストの結果は……!

結果は、冒頭にご紹介したエキスポ、Foodtech IL2022のジャパン・パビリオンで発表されます! 結果の発表が行われ次第、ジャパン・パビリオンで行われる日本の伝統食文化や最新技術の紹介、イスラエルと和の融合に関するサクセス・ストーリーのパネルディスカッションなどのプログラムも引き続きレポートしますので、楽しみにしていてください。

また、実際にこのイベントに参加してみたいと思われる方は、New-IJの案内で、エキスポのみならずイスラエル・アグリ・フードテック・ウィークにあわせた様々なイベントに参加するツアーが準備されていますので、ぜひNEW-IJの日イ外交樹立70周年記念イベントサイトもご覧ください。

食を通じて日イの関係が今まで以上に深まること、それによって少しでもより良い世界が築かれていくことを願っています。