2022年9月10日(土)、ANDARTの共同保有作品《Marilyn Monroe × Andy Warhol × Famicom》(作・森洋史)のオーナー限定イベントを開催しました。当日はアーティスト森洋史さんご本人をANDARTオフィスにお招きし、インタビュー形式で貴重なお話を伺ったほか、共同保有作品を含む森さんの作品6点を展示。プライマリでオーナー権を購入していただいた皆様に、森さんのアートに触れ、直接交流していただく機会となりました。レポート後編では、森さんへのインタビューの様子をお届けします。
森洋史さんインタビュー
森さんに、アーティストとしての活動やデジタルアートとの関わり方についてお伺いしました。インタビュアーはANDARTのマネージャー・山村が務め、途中、参加者の皆様からも質問を募りました。
イメージを引用することについて
山村:
イメージを引用するにあたって気をつけていることを教えてください。
森さん:
大学院在籍中は宗教画をモチーフにしていましたが、宗教画の引用は特にチャレンジングです。イメージをアニメ的に変換すると、信者さんの中には「自分たちの神様に何をしているんだ」と感じる人も出てきます。なので、そういう方の気持ちを刺激しないように配慮していました。発表して終わりではなく、展示会場に来てくれた人に対して丁寧に対応することによって、「ばかにしているわけではない」と理解してもらうことも大切だと思います。
山村:
宗教画に限らず、森さんは作風的に勘違いされやすいかもしれませんね。
森さん:
ポップアートなどを流用することについて、「ただのパクリじゃないか」という意見をいただくこともあります。でも、権利上リスキーな側面があるからといって、やめるという選択肢はありません。
反発する意見が多いのは、1970年代〜1990年代にアメリカで台頭した美術表現を日本に輸入できていないからです。日本人の美術に対する認識は印象派で止まっているところがあって、ポップアートなど現代的な展覧会をやっても集客率は高くなりません。
僕らの世代がやるべきなのは、すでに受け入れられている印象派を追いかけることではなくて、次の新しいものを提示することだと思っています。
山村:
実際に権利関係でトラブルになったことはありますか。
森さん:
まだありません。僕の活動を知りながら、知らないふりをしている企業もあります。ファインアートの表現を妨げると、企業としてもイメージダウンにつながる危惧があるので、いちいち指摘してこないんですね。とはいえ、もっと大物になると企業も黙っていません。ジェフ・クーンズは常に訴訟を抱えながらシュミレーションアートを展開していますから。
僕のステージが上がっていって何か言われたら、その時は覚悟して対応します。怖がって表現を控えることはしません。むしろ、口を出された時が、“本物”になった時ではないかと考えています。
デジタルアートとの関わり方について
山村:
今後デジタル領域とはどう関わっていこうと考えていますか。
森さん:
アメリカでは、投機目的でNFTを買っていた人たちが本物志向にシフトしてきています。実物のモノがないと価値が認められづらくなり、100%デジタルにしようという考え方は終わりに向かっています。
僕も急いでNFTを販売するのは差し控えてよかったと思っています。ただ、表現のひとつとしてNFTの展開は今後必要になると考えています。実際、ニューヨークで開催されたNFTイベント「NFT.NYC」にはフリードロップという形で出展しました。販売するのではなく、自分の活動を知ってもらうためのものです。独立したデジタルアートではなく、今までのファンも裏切らない形で、実物作品に付随してNFTを展開しようと模索中です。
山村:
デジタルアートの将来性に期待は持ちつつ、今の活動の延長線上にいようということですね。たしかに森さんの作品は、デジタルからインスピレーションを受けているものの、工業的な素材など物体としての魅力があります。
今後の活動について
山村:
今後アーティストとして活動されていく中で、どういう展開を考えていらっしゃいますか。
森さん:
影響を受けたアーティストのひとりにロイ・リキテンスタインがいます。尊敬できる点は、現代的な手法と少し前のカルチャーの両方を作品に取り入れたところです。たとえば、広告などの印刷に使われていたベンディ・ドットという技法をペインティングに置き換えようと模索していました。
僕も、現代的な個性を出すためには、イメージだけではなく技法や技術が重要だと考えています。特に、日本では浮世絵から始まった印刷技術です。村上隆さんは印刷技法にこだわりを持っていますが、次の世代である僕らがさらにアップデートしていかなければなりません。
その時代の消費者が求めているものに怖がらず目を向けることが大切なので、まずデジタルですね。時代はどんどん変わっていきますから、自分の制作スタイルを守りつつ、新しいものを取り入れていくことが必要だと思います。
山村:
最終的な目標や、アーティストとしての将来像は、どんなものを描いていますか?
森さん:
「有名になる」というようなことは結果論ですから、今できることを自分らしくやっていれば、後々ついてきます。時代に合わせながら制作を続けられればと思っています。
作品コンセプトの思考プロセスについて
参加者:
作品のコンセプトや方向性は、どういう思考プロセスで作り上げていかれるのでしょうか。
森さん:
大学院時代に宗教画をモチーフにしていた頃は、自分の中の“怒り”が源泉になっていました。東京藝術大学では素晴らしい知識と技術を学べる一方、権威的な面も感じていたので、それに抵抗する怒りですね。
何であれ、生きている中で実際に感じ取ったことを展開しています。ロサンゼルスでポップアートに衝撃を受けて、それを取り入れてみたり。ネット上で情報を見るだけでなく、実際に体験することが必要だと思います。実体験の熱量が制作魂を突き動かしてくれるので、自分の気持ちに素直に制作しています。
ANDARTのサービスについて
山村:
ANDARTで取り扱っている《Marilyn Monroe × Andy Warhol × Famicom》のオーナー権はすでに完売しており、今後セカンダリの会員間売買機能の解放を予定していますが、どのようにお考えですか。
森さん:
僕の作品のコレクターさんから「森さんの作品はいつオークションに出てくるの?」という声も聞きます。いつまでもセカンダリマーケットに入っていかないというのは、進展がないということにもなりますから、そういう意味でオークションへの出品は名誉なことでもあります。
なので、ANDARTサービス内での会員間売買の解放、つまりセカンダリ取引という展開は、ポジティブにとらえています。これを機にオークションに出品され、次のステージに上がることにもつながるかもしれません。
直近の展示情報
インタビュー後は、じっくり作品鑑賞をしたり、森さんと直接お話したりする時間を設けました。少人数でプライベートな空間を楽しんでいただけたのではないでしょうか。
高度な技術を用いた森さんの作品は、近くで見ると質感やディテールに圧倒されます。ぜひ展示に足を運んで実物を味わってみてください!
会期:2022年10月28日〜11月6日
会場:「FOAM CONTEMPORARY」(東京・銀座 GINZA SIX6F 銀座 蔦屋書店)
入場料:無料
ウェブサイトはこちら
ANDARTで取り扱っている森さんの作品《Marilyn Monroe × Andy Warhol × Famicom》は、プライマリでの販売は終了していますが、会員間取引スタートに向けて準備中です。他にも魅力的なアート作品がラインナップされているので、一覧でチェックしてみてくださいね。
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文・写真:ANDART編集部