2022年9月10日(土)、ANDARTの共同保有作品《Marilyn Monroe × Andy Warhol × Famicom》(作・森洋史)のオーナー限定イベントを開催しました。当日はアーティスト森洋史さんご本人をANDARTオフィスにお招きし、インタビュー形式で貴重なお話を伺ったほか、共同保有作品を含む森さんの作品6点を展示。プライマリでオーナー権を購入していただいた皆様に、森さんのアートに触れ、直接交流していただく機会となりました。レポート前編では、当日の展示作品をご紹介します。

森洋史さんについて

まず森さんお手製の自己紹介ムービーで、UV照射や銀鏡塗装の作業風景など、通常は公開していない映像も特別に見せていただきました。

1977年生まれの森さんは、2013年に東京芸術大学大学院美術研究科油画技法・材料修士課程を修了。名画など誰もが知る既存のイメージと、アニメやゲームから引用したイメージをリミックスし、最新テクノロジーを採用した制作を行っています。高度な技術に支えられた緻密さとアニメ調のイメージのアンバランスさが生み出す「ズッコケ感」が魅力です。

YouTubeで公開中のBSフジ『ブレイク前夜〜次世代の芸術家たち〜』でも森さんの考えを聞くことができるので、ぜひご覧ください。

展示作品の紹介

ANDARTオフィス1Fのギャラリースペースに、森さんの作品6点が集結。作品の実物を見ると、鏡面がキラキラ輝いていたり、凸凹と立体感があったりと、高い技術力が生み出す独特な質感に圧倒されます。平面だけでなく立体もまじえた贅沢な空間で、ご本人から各作品について解説いただきました。

《Marilyn Monroe × Andy Warhol × Famicom》(2020)

まずはANDARTで取り扱っているこちらの作品。森さんの作品の中でも人気が高いポートレートシリーズで、アンディ・ウォーホルを代表するモチーフ「マリリン・モンロー」と国民的キャラクター「ドラえもん」が掛け合わされています。実は本作、ANDARTから森さんに依頼したもの。「未来を感じさせる作品にしたい」という希望を伝えたところ、ドラえもんが題材に選ばれたのです。

森さん「未来とは何だろうと試行錯誤した結果、誰もが知る国民的な存在であるドラえもんが最もわかりやすいと思いました」

ドラえもんに登場する道具の名前やセリフが散りばめられ、よく見ると「モリひろシ」というサインや制作年である「2020」の文字も。ファミコン画面のような8ビットテイストで、「ニコニコ生放送」のコメントに見られるような横の動きが感じられるよう配置が工夫されており、静止画よりも動画に近い印象を受けます。

また、表面に凹凸の立体感があるのが特徴。木製パネルが反らないよう両面をコーティングし、何度もUV印刷を重ねるという工程を経て制作されています。鏡のように映る部分は鏡面仕上げが施されており、盛り上がった映らない部分とのギャップを楽しめるようになっています。大学院のゼミで宗教画を模写した際に学んだ黄金テンペラという技法を、現代的な素材に変換できないかという試みが原点だそうです。

《Elizabeth Taylor × Andy Warhol × Famicom#1》(2020)、《Albert Einstein × Andy Warhol × Famicom#1》(2020)

同じくポートレートシリーズの2点も展示しました。アンディ・ウォーホルによる「エリザベス・テイラー」と「アインシュタイン」をベースに、有名なファミコンゲームの要素を組み合わせた作品です。

森さん「ウォーホルのシルクスクリーン作品の色合いは衝撃的です。それを現代の工業塗料に置き換えてできないか、現代の技術や材料を使って別のテイストで仕上げられないかと考えました」

こちらの2作は鏡面ではなく、ヘリポートなどに使われる工業用の蛍光塗料で仕上げられています。2020年の個展「MOSHA」(銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM)は、鮮やかな色合のポートレートシリーズ約10点で展開されました。鏡面は高級感のあるシックな印象を与えますが、よりポップな表現を目指して蛍光塗料を選択したとのこと。ビビッドな画面には、ウォーホル作品に勝るとも劣らないインパクトがあります。

Damien Hirst(※タイトル要確認)

こちらはANDARTでも取り扱っているイギリスの現代アーティスト、ダミアン・ハーストのパロディ作品。もとになったハーストの作品は、生死をテーマに、本物の蝶の羽が無数に貼り付けられたものです。対して森さんの作品は、一見すると蝶の羽ですが、実は懐かしいテレビゲームのイメージで構成されています。

森さん「日本の代表的な作品である某ゲームに対する尊敬の意味も込めています。ただ消費されて色あせていくまま、遊びのイメージで終わらせるのではなく、知的表現に昇華させようという思いで作りました」

《When You Give Up, That’s When The Game is Over.》(2020)

続いては、コミックの一コマを切り取ったような作品。森さんが敬愛するロイ・リキテンスタインを思わせるスタイルです。7色刷りのシルクスクリーンプリントで、細かく並べられた色が独特の質感を生み出しています。吹き出しには「諦めたらそこで試合終了ですよ」という有名なバスケ漫画の名台詞が。

森さん「子供時代のカルチャーを混ぜ込み、見たことがあるようで見たことのないものを描きました」

《MORYGON KEWPIE.》(2021)

可愛らしい5体の人形は、森さん初の立体作品。シュミレーションアートとして、いわば“勝手に”イメージを流用してきた森さんが、初めて版権とコラボした作品でもあります。タイアップしたオビツ製作所は、村上隆さんや奈良美智さんともコラボしており、アート界で定評のある企業です。さまざまな検証を重ね、ようやく完成したのが、仮想空間から飛び出してきたようなポリゴンのキューピーたちでした。

《MORYGON KEWPIE.》は2022年6月に開催された世界最大級のNFTイベント「NFT.NYC」において、ニューヨークのタイムズスクエアに出現したXR(クロスリアリティ)空間にも登場しました。本作は実物の受注制作に加え、デジタルアートとしてNFTの発行も予定されています。現在シミュレーション段階とのことで、発表が楽しみです。

イベントレポート後編では、森さんへのインタビューの様子をお届けします。ぜひ続けてご覧ください。

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文・写真:ANDART編集部