SDGsのゴールに含まれるジェンダー平等は、社会の形を変えていく概念である。企業の労働環境にも影響するため、どのような状況になっても対応できる体制づくりが求められる。今回はそのヒントとして、ジェンダー平等の意味や世界の現状などを紹介する。

目次

  1. ジェンダー平等とは?
    1. ジェンダーギャップの意味
    2. ジェンダーフリーの意味
  2. ジェンダー平等とSDGsの関係性
    1. そもそもSDGsとは
    2. ジェンダー平等のゴールとターゲット
  3. 世界のジェンダー平等の実情
    1. ジェンダー格差は途上国で多いが、先進国にも課題が残されている
    2. ジェンダー平等では後進国にあたる日本
  4. ジェンダー平等のために企業ができることとは?
    1. ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む
    2. 育児や介護を手厚くサポートする
    3. 意思決定プロセスに女性の意見を取り込む
  5. ジェンダー平等に関するQ&A
    1. Q1.ジェンダー平等とはどういう意味?
    2. Q2.ジェンダー平等の目的や必要性は?
    3. Q3.ジェンダー平等の課題や問題点は?
    4. Q4.ジェンダー格差の原因や要因を知りたい
    5. Q5.ジェンダー格差の世界ランキングは?
  6. ジェンダー平等が企業価値を左右する可能性も
ジェンダー平等とは? SDGsとの関係性や世界の実情を解説
(画像=christianchan/stock.adobe.com)

ジェンダー平等とは?

ジェンダー平等とは、社会生活のあらゆる場面において性差別をしない社会である。

現在の社会では、性別によって生き方や働き方を決められてしまうケースが多く存在する。日本でも待遇面で男性が優遇されていたり、女性だからという理由で業務が減ったりする例は珍しくない。

このような性差別をなくし、個人の希望や能力によって人生を選べるような社会がジェンダー平等にあたる。

ジェンダーギャップの意味

ジェンダーギャップとは、性別の違いによって生まれる格差のことである。身体的な差はもちろん、識字率などの教育分野、賃金などの経済分野、平均寿命などの健康分野にもジェンダーギャップは存在する。

スイスの非営利財団である世界経済フォーラムは、男女格差を数値化した「ジェンダーギャップ指数」を2006年から毎年公表している。

ジェンダーフリーの意味

ジェンダーフリーとは、「男性は力仕事をするもの」「女性は家事をするもの」といった性差別をなくすことである。ジェンダー平等とほぼ同じ意味であり、世界各国で推進策や関連プロジェクトが進められている。

関連ワードに「ジェンダーレス」もあるが、これは差別ではなく性別の"区別"をなくすことである。

ジェンダー平等とSDGsの関係性

ジェンダー平等はSDGsと深い関わりがあり、ビジネスシーンでもセットで語られることが多い。ここからは中小経営者や人事担当者に向けて、ジェンダー平等とSDGsの関係性を分かりやすく解説する。

そもそもSDGsとは

SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」である。環境を守るための世界的な目標であり、国連加盟の193ヵ国が対象に含まれている。

SDGsには17のゴールと169のターゲットが設定されており、優先的に解決すべき環境問題・社会問題が明確にまとめられている。最近ではSDGs対策に取り組む企業が増えており、国内でもさまざまなメディアで関連ニュースを目にするようになった。

ジェンダー平等のゴールとターゲット

では、SDGsの中でジェンダー平等についてはどのような目標が設定されているだろうか。

○ジェンダー平等に関するSDGsの目標

【ゴール】

ジェンダー平等を実現しよう
(ジェンダー平等を達成し、すべての女性・女児のエンパワーメントを図る)

【ターゲット(※一部)】

・あらゆる場所のすべての女性に対するあらゆる形態の差別を排除する
・公共または私的空間における、すべての女性に対するあらゆる形態の暴力を排除する
・あらゆる有害な慣行を撤廃する(未成年者の結婚、強制結婚など)
・公共サービス等を通じて、無報酬の育児介護や家事労働を認識かつ評価する
・あらゆる意思決定において、完全かつ効果的な女性の参加、および平等なリーダーシップの機会を確保する

上記の通り、ジェンダー平等に関するSDGsの目標は細かく設定されている。特にターゲットはほかにも存在するため、興味がある人はこれを機に調べてみよう。

事業承継・M&Aをご検討中の経営者さまへ

THE OWNERでは、経営や事業承継・M&Aの相談も承っております。まずは経営の悩み相談からでも構いません。20万部突破の書籍『鬼速PDCA』のメソッドを持つZUUのコンサルタントが事業承継・M&Aも含めて、経営戦略設計のお手伝いをいたします。
M&Aも視野に入れることで経営戦略の幅も大きく広がります。まずはお気軽にお問い合わせください。

【経営相談にTHE OWNERが選ばれる理由】
・M&A相談だけでなく、資金調達や組織改善など、広く経営の相談だけでも可能!
・年間成約実績783件のギネス記録を持つ日本M&Aセンターの厳選担当者に会える!
・『鬼速PDCA』を用いて創業5年で上場を達成した経営戦略を知れる!

✉️経営、事業承継・M&Aの無料相談はこちらから

世界のジェンダー平等の実情

ジェンダー平等について理解を深めるには、世界の実情も押さえておく必要がある。ここからは海外と国内に分けて、世界が抱えている課題や主な取り組みを紹介する。

ジェンダー格差は途上国で多いが、先進国にも課題が残されている

SDGsのゴール・ターゲットに含まれているように、世界にはジェンダー平等に関するさまざまな社会問題が存在する。なかでもアフリカは深刻であり、古い慣習や宗教上の教えを長年引き継いでいるケースが多い。

○アフリカにおけるジェンダー問題の例
・18歳未満の児童婚
・女子の就学率の低さ
・女性性器切除の慣習

ジェンダーによる格差は途上国で多く見られるが、「ジェンダー平等先進国」と呼ばれるアメリカでも課題が残されている。社会進出の機会は増えているものの、企業によっては子持ち女性へのサポートが不十分であったり、男性向けの条件で評価されたりといった格差があるようだ。

こういった細かい不平等感まで解消される仕組みにならないと、本当の意味でジェンダー平等が実現したとは言えない

ジェンダー平等では後進国にあたる日本

2021年に世界経済フォーラムが公表した「The Global Gender Gap Report 2021」によると、日本のジェンダー・ギャップ指数(※)は120位となっている。先進国としては最低レベルであり、タイやインドネシアなどのアセアン諸国よりランクが下回る結果となった。

(※)「経済・政治・教育・健康」の観点からジェンダー格差をスコア化したもの。

日本ではどのようなジェンダー格差があるのか、いくつか例を見てみよう。

○日本のジェンダー格差の例
・女性の国会議員や地方議員が少ない
・多くの企業では男性の幹部を採用している
・男性に比べると、女性の大学進学率がやや低い

上記のほか、日本では「家事や育児は女性がこなすもの」といった家庭面におけるジェンダー格差も存在する。男性が家事・育児をこなすケースも増えてきたが、「女性=家庭」のような固定観念をもつ人も少なくない。

日本がジェンダー平等先進国を目指すには、このような古い慣習を新しい文化で塗り替えて、女性の社会進出も積極的にサポートする必要がある。

ジェンダー平等のために企業ができることとは?

世界的な目標やSDGsのゴールと聞くと、中小企業にできることは少ないと感じるかもしれない。しかし、ジェンダー格差は身近にも多く存在するため、工夫次第ではさまざまな形で社会に貢献できる。

ここからは、ジェンダー平等のために中小企業ができることを紹介する。

ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む

ダイバーシティ&インクルージョンとは、採用活動で多様な人材を受け入れて、従業員一人ひとりを最大限に活かすことである。性別などの属性に関わらず、すべての人材を同列に扱う施策であるため、ジェンダー格差をなくす効果がある。

例としては、女性人材の雇用や昇進、結婚・出産のサポート制度などが挙げられる。ただし、女性を優遇しすぎることも新たなジェンダー格差につながるため、その点に注意しながら施策を検討したい。

育児や介護を手厚くサポートする

従業員の育児や介護をサポートすると、女性社員はワークライフバランスを実現しやすくなる。人材によっては子育てなどの負担が軽減されることで、仕事に充てる時間や労力を確保できるためだ。

つまり、育児や介護のサポートは女性の活躍推進につながる。ジェンダー格差をなくすには、プライベート面から従業員を支えることも意識したい。

意思決定プロセスに女性の意見を取り込む

上層部に男性が多い企業では、積極的に女性の意見を取り込むことも重要だ。特に意思決定プロセスに反映させると、その人材の活躍を推進できるほか、女性に寄り添った商品・サービスを展開しやすくなる。

思い切った施策かもしれないが、対外的なアピールとしても成功する可能性がある。

ジェンダー平等に関するQ&A

ジェンダー平等は現代ビジネスのテーマとなる可能性があるため、基礎的な部分からしっかりと理解することが重要だ。ここからは、ジェンダー平等に関する質問集をQ&A形式で紹介する。

Q1.ジェンダー平等とはどういう意味?

ジェンダー平等とは、社会生活のあらゆる場面において、一人ひとりが性差別をしないことである。2015年にSDGsが採択された影響で、ジェンダー平等は世界的に注目されるテーマになっている。

ジェンダーについては関連するワードが多く、性別の違いによる格差は「ジェンダーギャップ」、性差別をなくすことは「ジェンダーフリー」と呼ばれている。

Q2.ジェンダー平等の目的や必要性は?

ジェンダー平等の目的は、すべての女性がエンパワーメントを図ることである。

人口の約半数は女性であり、本来であれば性別によって社会的な差がつくことはない。そのため、ジェンダー平等は地球上のどこに住んでいても基本的人権に含まれる。

Q3.ジェンダー平等の課題や問題点は?

ジェンダー平等を実現するには、女性の性的搾取や早期結婚などの慣習が課題とされている。また、社会における発言力・機会の少なさや、妊娠・出産を望まない女性への配慮も重要課題である。

これらの課題は世界の各地で存在しているため、SDGsのゴールには「ジェンダー平等を実現しよう」が含まれている。

Q4.ジェンダー格差の原因や要因を知りたい

社会におけるジェンダー格差の要因は、男女間の職階や勤続年数の差と言われている。

例えば、子どもをもつ女性は出産・育児をきっかけに長期休暇を取るケースが多いため、男性に比べるとどうしても勤続年数が短くなる。その差が職階や収入面にも表れており、日本でも女性の活躍推進が重要テーマとして掲げられている。

Q5.ジェンダー格差の世界ランキングは?

世界経済フォーラムの「Global Gender Gap Report(2022年版)」によると、世界で最もジェンダー格差が少ないのはアイスランドであった。同ランキングにおいてアメリカは27位、中国は102位、日本は116位にランクされている。

ジェンダー平等が企業価値を左右する可能性も

個人や多様性が重視される現代において、ジェンダー平等の考え方は世界中に浸透しつつある。性差別を完全になくすことは難しいかもしれないが、2015年にはSDGsのゴールにも設定された。

ジェンダー平等を達成しているかどうかで、企業価値が判断される時代がくる可能性もあるので、関連する情報やニュースは引き続きチェックしておきたい。

著:片山 雄平
1988年生まれのフリーライター兼編集者。2012年からフリーライターとして活動し、2015年には編集者として株式会社YOSCAに参画。金融やビジネス、資産運用系のジャンルを中心に、5,000本以上の執筆・編集経験を持つ。他にも中小企業への取材や他ライターのディレクション等、様々な形でコンテンツ制作に携わっている。
無料会員登録はこちら