最近では、日本のメディアで「シェアリングエコノミー」が多く取り上げられている。市場は日々拡大しており、新たなビジネスモデルが生み出されることも珍しくない。ここではシェアリングエコノミーの概要のほか、メリットやデメリット、有名事例を紹介する。

目次

  1. シェアリングエコノミーとは?
  2. シェアリングエコノミーが注目される背景や理由
  3. シェアリングエコノミー市場の実情
    1. 世界の市場規模は2025年までに3,000億ドル以上
    2. 日本の市場規模も1,000億円を突破する見込み
  4. シェアリングエコノミーの種類や領域
    1. 空間に関するシェアリングエコノミー
    2. モノに関するシェアリングエコノミー
    3. 移動に関するシェアリングエコノミー
    4. スキルに関するシェアリングエコノミー
    5. お金に関するシェアリングエコノミー
  5. シェアリングエコノミーのメリット
    1. 初期費用を抑えやすい
    2. あらゆるコストを削減できる
    3. 遊休資産を活用できる
    4. 人と人とのつながりが生まれる
    5. ビジネスモデルの幅が広い
  6. シェアリングエコノミーのデメリット
    1. マナー関連のトラブルが生じやすい
    2. 利用中の監視が難しい
    3. 保険や補償制度、法律が整備されていない
  7. 代表的なシェアリングエコノミーとは?有名事例を紹介
    1. 【事例1】AirBnB(エアビーアンドビー)
    2. 【事例2】notteco(のってこ)
    3. 【事例3】aini(アイニー)
    4. 【事例4】akippa(あきっぱ)
    5. 【事例5】タスカジ
  8. 企業がシェアリングエコノミーを成功させるポイント
    1. 地域課題や環境課題の解決を目指す
    2. 助け合いの精神を重視する
    3. ひとつの業態や形にこだわらない
    4. 個人に目を向けてサポートする
    5. 専門家に相談をする
  9. シェアリングエコノミーに関するQ&A
    1. Q1.シェアリングエコノミーの意義や必要性は?
    2. Q2.シェアリングエコノミーのメリットとデメリットは?
    3. Q3.シェアリングエコノミーの例は?
    4. Q4.シェアリングエコノミーは将来どうなる?
    5. Q5.シェアリングエコノミーの5分類とは?
    6. Q6.シェアリングエコノミーの企業は?
  10. シェアリングエコノミー市場は今後も拡大していく
シェアリングエコノミーとは? 市場規模やメリット・デメリットを事例つきで解説
(画像=tokyostudio/stock.adobe.com)

シェアリングエコノミーとは?

シェアリングエコノミー(Sharing Economy)とは、さまざまなモノやスキル、スペース、資産などを個人間で共有するサービスである。貸し手・借り手のいずれも一般消費者(個人)であるため、CtoCサービスの一種に該当する。

実際にはインターネットを介すことがほとんどであり、個人間を結びつける専用のプラットフォームやSNSなどが多く用いられる。企業が仲介的な役割を担うことはあるが、サービスの提供者や主体になることはない。

シェアリングエコノミーが注目される背景や理由

シェアリングエコノミーが世界中に広まったきっかけは、アメリカで誕生した民泊サービスと言われている。2000年代後半に、民泊の貸し手と借り手をマッチングさせる「Airbnb(エアビーアンドビー)」が流行し始めた影響で、さまざまな国の企業がシェアリングエコノミー事業を立ち上げた。

また、SNSなどのネット文化の浸透や所有に対する価値観の変化も、シェアリングエコノミーが注目される一因となっている。特に先進国では、世の中にモノやサービスがありふれた結果として、人や地域とのつながりを求める層が増えてきた。

新興国も同じような流れにあるため、シェアリングエコノミーは世界的に広がっていく可能性が高いと考えられている。

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シェアリングエコノミー市場の実情

シェアリングエコノミー市場は成長段階ではあるものの、地域によってはすでに大きなマーケットを形成している。実際にどれくらい普及しているのか、ここからは海外と国内に分けて市場規模を見ていこう。

世界の市場規模は2025年までに3,000億ドル以上

大手コンサルティングファームのPwCによると、2013年のシェアリングエコノミーの市場規模は約150億ドルとされている。それ以降、シェアリングエコノミーは世界中へと浸透しており、2025年には約3,350億ドルまで成長する見込みだ。

この成長スピードを数字に直すと、12年間で22倍ほど規模が拡大することになる。アジアで広まっている「Uber(ウーバー)」や、欧米や日本で流行っている「Uber Eats(ウーバーイーツ)」(※)を見ると、市場規模の拡大を実感できるだろう。

(※)Uberは個人タクシーサービス、Uber Eatsは料理宅配サービスとして世界的に有名。

シェアリングエコノミー関連のサービスは、新興国にも浸透しつつある。例えば、自動車保有比率が低いタイやインドネシア、メキシコなどでは、自動車のライドシェアリングビジネスに注目が集まっている。

日本の市場規模も1,000億円を突破する見込み

矢野経済研究所の調査によれば、2016年度における日本のシェアリングエコノミー市場は約503億円とされている。その後のデータは予測となるが、2020年度には約966億円、2021年度には1,000億円を突破する見込みだ。

日本国内でも大都市を中心に、AirBnBやUber Eatsなどのサービスが広まっている。そのほか、専用のプラットフォームやフリマアプリなどを見ると、個人のスキルや時間をレンタルしている例も少なくない。

日本は自動車大国とされるが、個人間のカーシェアによって使うときに調達するケースも増えてきた。新たなサービスが台頭しない限りは、国内にも着実にシェアリングエコノミーの波が広がっていくはずだ。

シェアリングエコノミーの種類や領域

シェアリングエコノミーは対象となるモノ・サービスが多いため、いきなりビジネスプランを考えることは難しい。ここからは5つの種類や領域に分けて、サービスの具体例や仕組みなどを解説する。

空間に関するシェアリングエコノミー

空間に関するシェアリングエコノミーは、不動産の空き部屋や空きスペースを共有するサービスである。分かりやすい例としては民泊や駐車場シェアリング、ホームシェアリングなどが挙げられる。

不動産は長期の借り手を見つけることが難しく、短期で貸し出そうにも各消費者のニーズに合わせにくい特徴があった。数年単位の入居契約を結べたとしても、その住人が退去すると収入を得られない状態が続いてしまう。

このような課題を解決するサービスが、AirBnBをはじめとするシェアリングエコノミーだ。最近ではコワーキングスペースやレンタル会議室など、企業向けの空間共有サービスも見られるようになった。

モノに関するシェアリングエコノミー

最近では、モノに関するシェアリングエコノミーも多く見受けられる。フリマアプリやレンタルサービスを介すことが一般的であり、特にバッグなどの人気ブランド品はさまざまな場面でシェアされている。

衣服やアクセサリーなど個人が所有する小物には、使うシーンが限定されてしまうモノがある。例えば、冠婚葬祭でしか使わないドレスや喪服などは、数回しか着用しないケースも珍しくない。

こういったモノを共有するサービスとして、シェアリングエコノミーは非常に便利である。すでに例はあるが、企業間で機械や設備をシェアするようなサービスも普及するかもしれない。

移動に関するシェアリングエコノミー

移動に関するシェアリングエコノミーは、車やバイクなどのモビリティを貸し借りするサービスである。今回紹介する中でも、この領域の消費モデルは「所有から共有」への移り変わりが激しい。

例えば自動車を購入するにあたって、車検代や駐車場代、その他メンテナンス費などの維持コストが気になる人は多いだろう。特に公共交通機関が充実した都心では、自動車での通勤がかえって不便になるケースもある。

このような層にとって、必要なタイミングで車を調達できるカーシェアリングサービスは重宝されやすい。欧米などの海外では、タクシーの相乗りをサービスとして展開する地域も増えてきている。

スキルに関するシェアリングエコノミー

シェアリングエコノミーで共有されるモノは、不動産などの資産だけではない。デザインや動画編集、ライティングなど、個人が有するスキルもさまざまなサービスを通して提供されている。

イメージとしては、発注したい側とフリーランスをつなぐクラウドソーシングを連想すると分かりやすい。クラウドソーシングは、発注側がプロジェクトや案件を掲載し、受注側にあたる個人が仕事を探せる仕組みになっている。

そのほか、子育てや介護といった日常生活に関わるスキルも、ネット上では頻繁に共有されている。スキルに関するシェアリングエコノミーは幅が広いため、アイデア次第では大きなビジネスになるだろう。

お金に関するシェアリングエコノミー

個人間での金銭の貸し借りも、広義ではシェアリングエコノミーに含まれる。

例えば、クラウドファンディングは資金を求める側がプロジェクトを掲載し、ユーザーが魅力的な案件に融資または出資をする仕組みになっている。そのほか、エンジェル投資家と起業家をつなぐサービスも、シェアリングエコノミーの一種と言えるだろう。

シェアリングエコノミーのメリット

シェアリングエコノミーが普及すると、社会や企業にはどのようなメリットが生じるだろうか。ここからは、ビジネスとして見たときの5つのメリットを解説する。

初期費用を抑えやすい

シェアリングエコノミー事業は、所有するモノ・サービスを貸し出すビジネスなので、設備投資などの初期費用を抑えやすい。すでに需要があるモノ・サービスを所有している場合は、初期費用をほとんどかけずに事業を始めることも可能だ。

ただし、専用プラットフォームの利用時には、基本的に手数料が発生する。例えば、民泊サービスであるAirBnBでは、通常14~16%の手数料がホスト(貸す側)の受取金から差し引かれる。

あらゆるコストを削減できる

初期費用以外にも、シェアリングエコノミー事業ではあらゆるコストを削減できる。モノ・サービスを製造する必要がないため、例えば設備や機械の購入費、商品製造にかかる人件費、光熱費などを節約しやすい。

○シェアリングエコノミー事業で節約できるコスト(例)
・設備や機械の購入費
・人件費
・光熱費
・支店を構えるためのコスト(不動産購入費や固定資産税など)
・環境対策費 など

また、シェアを受ける側についても、モノやサービスを新たに購入する必要がないため、購入費用や維持コストを抑えられる。

遊休資産を活用できる

遊休資産とは、経営や事業に使用しなくなった資産のことである。例としては閉店した店舗の土地や建物、製造中止をした商品の機械などが挙げられる。

特に固定資産は保有をするだけでコストがかかるため、企業にとって遊休資産が増えることは望ましくない。そんな遊休資産を有効活用できる方法が、今回解説しているシェアリングエコノミーだ。

すべての資産に需要があるとは限らないが、近年ではユーザーを探すさまざまなサービスが充実している。一見すると不要に見える遊休資産でも、募集をかけたら利用者が見つかるかもしれない。

人と人とのつながりが生まれる

シェアリングエコノミー事業では、ひとつのモノを不特定多数のユーザーに貸し出す。一般的なサービスと同じように、さまざまな属性の人との関わりが生まれるため、独自のコミュニティが形成されるケースも少なくない。

子育てシェアのプラットフォームでは、シェアをする側・される側の交流会が開催されている例がある。このようにシェアリングエコノミーを通して人脈を広げれば、新たなビジネスチャンスにつながることもあるだろう。

ビジネスモデルの幅が広い

シェアリングエコノミー事業はあらゆるモノ・サービスが対象になるため、ビジネスモデルの幅が広い。前述した5種類が基本とはなるが、アイデア次第ではさまざまなビジネスを展開できる。

○個性的なシェアリングエコノミー事業の例
・自動車の相乗りマッチングサービス
・雇用者と労働者をマッチングさせるサービス
・非日常体験イベントの開催者と参加者を結びつけるサービス
・月額制で日本全国の物件に住めるサービス

上記のように料金体系や契約プランを変えるだけでも、サービスの形は大きく変わってくる。ユーザーの需要を意識してサービス体系を整えることが、シェアリングエコノミー事業の成功につながるだろう。

シェアリングエコノミーのデメリット

一方で、シェアリングエコノミーにはデメリットも潜んでいる。ここからは、ビジネスを始める前に意識したい3つのデメリットを紹介しよう。

マナー関連のトラブルが生じやすい

シェアリングエコノミーの専用プラットフォームでは、サービス利用時のマナーやルールが設定されている。しかし、利用者によってサービスの使い方には違いがあるため、シェアリングエコノミーはトラブルが発生しやすい傾向にある。

仮にシェアをしたモノが故障すると、貸した側には修理費や購入費などのコストが生じてしまう。また、同じモノを使って長年ビジネスをする場合は、劣化によるクレームも受けやすくなる。

利用中の監視が難しい

トラブルのリスクを考えると、サービスの提供者としてはユーザーの使い方を監視したいところだろう。しかし、空間やモノ、移動に関するシェアリングエコノミーは、サービス利用中の監視が難しい。

例えば、貸し出した自家用車を監視する場合は、シェアをした側が同乗する必要がある。このようなサービス形態はコストがかかり過ぎる上に、ユーザーからの需要も減ってしまうため、現実的なビジネスモデルとは言えないだろう。

利用時のトラブルを完全に防ぐことは難しいが、専用のプラットフォームでは相互評価制度などを導入することで、提供者側のリスクを抑えている。

保険や補償制度、法律が整備されていない

ほかのビジネスに比べると、シェアリングエコノミー事業は企業向けの保険や補償が少ない傾向にある。専用の保険商品は増えているものの、従来の保険ではトラブルの際に補償を受けられないケースも存在する。

また、日本国内では法整備が進んでいない点も、事業者が注意しておきたいポイントだ。例えば、トラブルによっては適用される法律や罰則が不明瞭であり、グレーゾーンにあたるビジネスも多く存在している。

シェアリングエコノミーとは? 市場規模やメリット・デメリットを事例つきで解説

上記のように比較すると、シェアリングエコノミーは提供者・消費者のいずれにもメリットがある。従来のサービスとは異なる魅力があるため、今後さらに普及していく可能性は高い。

ただし、現時点では深刻なリスクや課題もあり、ルールや法整備による解決が期待されている。

代表的なシェアリングエコノミーとは?有名事例を紹介

ここからは、すでに多く利用されている代表的なシェアリングエコノミーを紹介する。ビジネスのヒントをつかむために、どのような有名事例があるかチェックしていこう。

【事例1】AirBnB(エアビーアンドビー)

Airbnbは世界220ヵ国以上で利用されている、空き家を貸し出す民泊サービスである。ログハウスや洞窟、ホームステイ型などユニークな宿も登録されており、特に観光地で多くのユーザーから利用されている。

Airbnbはシェアリングエコノミーの先駆けであり、2000代後半にはすでにアメリカで誕生していた。規約やポリシーが細かく定められているため、提供者・消費者のいずれも安心できるサービスになりつつある。

シェアリングエコノミーとは? 市場規模やメリット・デメリットを事例つきで解説

【事例2】notteco(のってこ)

nottecoは「どこから乗るか」「どこまで乗るか」から募集案件を検索できる、日本最大の相乗りサービスである。案件ごとに1人あたりの募集金額や日時、同乗人数などが掲載されており、利用者は条件に合う提供者(個人)と契約をする。

2007年に開始されたサービスであり、すでに会員数は40,000人を突破している。同乗者同士で移動費を割り勘できるため、提供者にもメリットがある仕組みになっている。

シェアリングエコノミーとは? 市場規模やメリット・デメリットを事例つきで解説

【事例3】aini(アイニー)

ainiは、体験型のイベントが掲載されたガイアックスのサービスである。親子教室や自然体験のほか、オンラインで参加できる街歩きツアーなども開催されており、手軽に非日常を体験できるサービスとして人気だ。

2022年9月現在では、15,000人以上のホストがイベントを掲載している。地域に関するイベントも多いので、人脈やコミュニティを形成する場としても活用できるだろう。

シェアリングエコノミーとは? 市場規模やメリット・デメリットを事例つきで解説

【事例4】akippa(あきっぱ)

akippaは、空いている土地を所有している人と、駐車スペースを探している人をマッチングするサービスだ。最大30日前から予約可能であり、ユーザーは相場よりも安い料金で駐車スペースを確保できる。

akippaには日本全国のスペースが登録されているため、旅行中や出張先で利用するサービスとしても人気だ。看板や車止めなどの装置が不要なので、スペースを貸す側もコストなしで駐車場オーナーになれる。

シェアリングエコノミーとは? 市場規模やメリット・デメリットを事例つきで解説

【事例5】タスカジ

タスカジは、家事の代行業者を探しているユーザーとハウスキーパーをつなぐマッチングサービスである。複数の料金プランが用意されており、スポット依頼では1回あたり1,750円から利用できる。

各ハウスキーパーの情報はプロフィールで公開されており、利用者側はその内容から募集をかけることが可能だ。ハウスキーパーのデビュー時には、3段階の登録確認を行うことでサービスの質を高めている。

シェアリングエコノミーとは? 市場規模やメリット・デメリットを事例つきで解説

企業がシェアリングエコノミーを成功させるポイント

シェアリングエコノミーはこれまでにない新しいサービスなので、従来のビジネスとは違った視点で事業計画を立てる必要がある。ここからは経営者や起業家に向けて、シェアリングエコノミー事業を成功させるポイントを解説する。

地域課題や環境課題の解決を目指す

近年では、世界中の企業にSDGs(※)への貢献が求められている。「ESG」という用語が生まれたことをきっかけに、環境・社会・ガバナンスの観点から商品やサービス、投資先を選ぶ層も増えてきた。

(※)2015年の国連サミットで採択された、持続可能な開発目標のこと。

そんな中、シェアリングエコノミーはSDGsとも深い関わりがある。例えば、カーシェアリングによって自家用車の数が減れば、交通渋滞や排気ガスの抑制によって環境面に貢献できるだろう。

そのため、シェアリングエコノミー事業では地域課題や環境課題の解決を意識したい。本当の意味で社会に役立つサービスを提供できれば、自然と企業やサービスの評価も高まると考えられる。

助け合いの精神を重視する

国内のシェアリングエコノミーは、「助け合いの精神」を前提として成り立っているものが多い。

民泊サービスや家事代行サービスは、その代表例と言えるだろう。困っている人に解決策を提示できるサービスだからこそ、これらのシェアリングエコノミーは多くの需要につながっている。

また、地域や社会の課題を解決する意味でも、助け合いの精神をもつことは重要だ。日常的な不安や悩みはもちろん、地震や台風など日本特有の課題にも目を向けながら、社会の役に立つビジネスモデルを考えていきたい。

ひとつの業態や形にこだわらない

シェアリングエコノミーを取り巻く環境は、日々大きく変わっている。新たなサービスが次々と誕生しており、各サービスが世の中のニーズに合わせて変化しているためだ。

このような状況下でひとつの業態や形にこだわると、時代の変化についていけなくなる。そもそも、シェアリングエコノミーには多くの選択肢があるため、ビジネスの幅を狭めるようなプランは望ましくない。

場合によっては地域や業界、組織などの垣根を超えることも求められる。すでに成功したサービスも、社会のニーズに合わせて料金やプラン、規約、ルールなどを調整しているため、常に柔軟に変化させることを意識しよう。

個人に目を向けてサポートする

基本的にシェアリングエコノミーは、個人と個人をつなぐサービスである。シェアをする人・される人によって抱えている悩みは異なるため、消費者全体ではなく「個人」に目を向けなければならない。

また、利用者へのサポートは企業として行うものだが、状況によっては個人レベルのサポートも必要になる。例えば、ユーザー間で複雑なトラブルが起きた場合は、マニュアルではなく現場の判断が求められるはずだ。

従来のビジネスとはサービス形態が異なるため、ユーザーとの関わり方についても独自のプランが求められる。

専門家に相談をする

プラットフォームを利用せずにシェアリングエコノミー事業を立ち上げる場合は、ITやデジタルに関する高度な知識が求められる。また、斬新なアイデアや視点も必要になるため、なかなか方向性を見出せない経営者も多いだろう。

このようなケースに該当する場合は、専門家への相談を検討したい。主な相談先としてはコンサルタント会社のほか、政府相談窓口の「シェアリングエコノミー促進室」が挙げられる。

また、ビジネスを始める前には、「一般社団法人シェアリングエコノミー協会」の公式サイトも確認しておきたい。市場整備に取り組む同協会は、公式サイト上で関連ニュースやイベント情報などを公開している。

シェアリングエコノミーに関するQ&A

ここまでの内容も含めて、以下ではシェアリングエコノミーの基礎知識をQ&A形式でまとめた。

Q1.シェアリングエコノミーの意義や必要性は?

シェアリングエコノミーによってさまざまなモノ・サービスが共有されると、購入・維持にかかるコストやムダを削減できる。その結果、地域社会や環境問題の解決に貢献できるため、シェアリングエコノミーはSDGsとも深く関わっている。

Q2.シェアリングエコノミーのメリットとデメリットは?

シェアリングエコノミーのメリットは、所有物の共有によってコストを削減できる点である。そのほか、地域課題や環境問題の対策になる点、遊休資産を活用できる点なども大きなメリットだ。

一方で、個人がサービスの提供者となるため、利用者にとっては信頼性の面がデメリットとなる。

Q3.シェアリングエコノミーの例は?

シェアリングエコノミーの例としては、Airbnbをはじめとする民泊サービスや、自動車の相乗りサービスであるライドシェアが挙げられる。最近では駐車スペースや体験型イベント、家事代行など、プラットフォームを通してさまざまなモノ・サービスが共有されている。

Q4.シェアリングエコノミーは将来どうなる?

一般社団法人のシェアリングエコノミー協会によると、2030年度のシェアリングエコノミー国内市場は11兆円を超えるとされている。同様のサービスは先進国・新興国でも広がっており、世界的な市場は2025年までに3,000億ドルを突破する見込みだ。

シェアリングエコノミーが普及する背景には、所有から共有、モノ消費からコト消費への意識の変化がある。

Q5.シェアリングエコノミーの5分類とは?

シェアリングエコノミーは共有するモノ・サービスによって、「空間シェア」「モノシェア」「スキルシェア」「移動シェア」「お金シェア」に分類される。もともとはAirbnbなどの空間シェアから広まったが、現在では日本でもさまざまなモノ・サービスが共有されるようになった。

Q6.シェアリングエコノミーの企業は?

以下は、シェアリングエコノミーを提供する代表的な企業である。

・Airbnb(エアビーアンドビー)
・notteco(のってこ)
・ココナラ
・メルカリ
・Crowd Works(クラウドワークス)

また、広義ではCAMPFIRE(キャンプファイヤー)などのクラウドファンディングも、シェアリングエコノミーの一種に含まれる。

シェアリングエコノミー市場は今後も拡大していく

シェアリングエコノミー市場は日々拡大しており、今後もあらゆる地域で普及する可能性が高い。個人の所有物やスキル、時間などさまざまなモノが対象になるため、次々と新たなサービスが生まれていくだろう。

このような時代の変化に対応するには、いち早くプランを考えることが重要だ。本記事の内容をおさらいしながら、利益や社会貢献につながるビジネスモデルを考えてみよう。

著:片山 雄平
1988年生まれのフリーライター兼編集者。2012年からフリーライターとして活動し、2015年には編集者として株式会社YOSCAに参画。金融やビジネス、資産運用系のジャンルを中心に、5,000本以上の執筆・編集経験を持つ。他にも中小企業への取材や他ライターのディレクション等、様々な形でコンテンツ制作に携わっている。
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