温暖化が懸念される現代では、さまざまなメディアで再生可能エネルギーが取り上げられている。エネルギー転換の影響はあらゆる産業に及ぶため、中小企業も他人事ではない。ここでは世界の現状を踏まえて、再生可能エネルギーのメリットや課題などを解説する。
目次
再生可能エネルギーとは?
再生可能エネルギーとは、自然界に存在する枯渇しないエネルギーのことである。例としては太陽光や地熱、風力などがあり、いずれもCO2(二酸化炭素)を排出しない特徴がある。
○日本における再生エネルギーの定義や種類
・定義
太陽光、風力、その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの。
・具体的な種類
太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、大気中の熱その他の自然界に存する熱、バイオマス。
(引用:https://www.env.go.jp/content/900449223.pdf)
一方で、火力発電所などで使われる石油や天然ガス、石炭は「化石燃料」と呼ばれている。
再生可能エネルギーの必要性
再生可能エネルギーと聞くと、地球温暖化や温室効果ガスをイメージする人が多いだろう。確かにこれらを抑制できる点はメリットだが、再生可能エネルギーにはほかの目的もある。
○再生可能エネルギーの導入目的
・温室効果ガスの削減
・エネルギー自給率の向上
・燃料調達に伴うコストカット
・国際競争力の強化
・地域活性化や雇用創出
・非常時のエネルギー確保
また、2015年の国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」においても、再生可能エネルギーに関わるゴールとターゲットが設定されている。
○再生可能エネルギーに関するSDGsの目標
【ゴール】
エネルギーをみんなに そしてクリーンに
(すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する)
【ターゲット(※一部)】
・2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。
・2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。
・2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。
(引用:https://www.ungcjn.org/sdgs/goals/goal07.html)
現在では世界的に温暖化対策が行われており、環境にやさしい商品・サービスを購入する消費者や、ESG投資(※)を重視する投資家も増えてきた。国内も同じような流れにあるため、企業価値を向上させる意味合いでも再生可能エネルギーに目を向けていきたい。
(※)「環境・社会・ガバナンス」の観点から投資先を選ぶ手法。
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再生可能エネルギーの特徴
ここからはメリットとデメリットに分けて、再生可能エネルギーの主な特徴を解説する。
導入のメリット
石油などの化石燃料とは違い、再生可能エネルギーは枯渇することがない。どこでもすぐに調達できる上に、有害物質や廃棄物も抑えられるため、導入するだけでさまざまな環境コストを抑えられる。
また、専用の発電設備が日本全国に設置されれば、自然災害などによる不具合の範囲も限定される。SDGsや環境問題への貢献によって、支援や投資、出資を受けやすくなる点も大きなメリットになるだろう。
導入のデメリット
再生可能エネルギーの導入時には、太陽光パネルなどの専用設備が必要になる。さらに、発電に適したスペースや環境を用意する手間もかかるため、従来のエネルギーに比べると導入コストが依然として高い。
また、天候による不安定さや小さな発電規模もデメリットと言えるだろう。技術の進歩が期待されてはいるものの、現時点では発電効率が低い傾向にある。
再生可能エネルギーの実用化はさまざまな地域で進められているものの、現状では多くの課題が残されている。日本は面積が小さく、台風や地震による被害も生じやすいので、特に設置スペースの面がネックになりやすい。
上記のメリットを最大化するためにも、近年では新技術やイノベーションに期待が寄せられている。
再生可能エネルギーの現状
資源エネルギー庁の「エネルギー白書2021」によると、日本は発電量の70%以上を化石燃料に頼っている。再生可能エネルギーは10%程度であり、その内訳は太陽光が6.7%、バイオマスが2.6%程度だ。
日本は再生可能エネルギー比率が低いと言われるが、実際にはどのような立ち位置なのだろうか。ここからは海外も含めて、再生可能エネルギーの現状を紹介する。
再生可能エネルギー比率では北欧・欧州が上位を占める
以下の表は、国際エネルギー機関(IEA)が2012年に公表した再生可能エネルギー比率のランキングである。
世界の再生可能エネルギー比率は2012年から上昇を続けており、中でもデンマークなどの北欧、ポルトガルやスペインなどの欧州は高い比率を記録している。
2018年の時点では、全エネルギーのうち40.6%を石油に頼っているが、世界全体として見れば化石燃料からの脱却が着実に進んでいる。ただし、再生可能エネルギー比率は地域差が大きく、日本のように世界平均を下回っている先進国も多い。
日本では土壌が整備されていない
世界的に再生可能エネルギーへの転換が重視される中、日本でも脱炭素を目指した電源構成が目指されている。2021年10月には第6次エネルギー基本計画が掲げられ、再生可能エネルギーの導入によって火力発電を抑える方向性が公表された。
しかし、日本は再生可能エネルギーの土壌が乏しく、今後の導入には多くのコストがかかる。ほかにも課題が残されているため、北欧・欧州のようなエネルギー比率を実現することは先の話になるだろう。
日本が抱える再生可能エネルギーの課題
では、再生可能エネルギーの導入にあたって、日本はどのような課題を抱えているのだろうか。
全国的に系統制約がある
系統制約とは地理的または自然的な条件によって、設備面などに制約がかかることである。
例えば、国内には電力会社による管轄エリアが存在しており、このエリア間で大量に電気を送り合うことが難しい。再生可能エネルギーによる発電量には地域差があるため、需要・供給のバランスを取る新たな電力網が必要になる。
安定したエネルギー源の確保
再生可能エネルギーによる発電は、短期的な出力を予測しづらい特徴がある。設備の大量設置によって解決できる可能性はあるが、現状ではコストやスペースの問題で難しいだろう。
このような状況では、需要・供給のバランスを取ることが難しいため、日本では安定したエネルギー源の確保も課題とされている。
大手電力会社による独占
日本の電力システム(発電や送電など)は、大手電力会社が独占している状態にある。2016年には電力の小売全面自由化が始まったが、新規の再生可能エネルギー発電業者が参入しやすい市場とは言えないだろう。
一方、再生可能エネルギー比率が高い欧州では、事業者の所有者の分離によって新システムを導入しやすい仕組みがとられている。
再生可能エネルギーに関する質問集
世界の流れを見ると、今後は日本でも再生可能エネルギー比率が高まっていくと考えられる。再生可能エネルギーはあらゆる産業に関わるため、以下の質問集に目を通しながら基礎知識を押さえていこう。
Q1.再生可能エネルギーとはどんなエネルギー?
再生可能エネルギーとは、自然界に存在する枯渇しないエネルギーである。どのような場所にも存在しており、CO2を排出しない発電等が可能であるため、SDGsやESGにつながるエネルギー源として注目されている。
Q2.再生可能エネルギーの仕組みは?
再生可能エネルギーを使った発電等では、太陽光や風力、水力、バイオマスといった永久的に使用できる資源を活用する。これらの資源は、比較的短期間で再利用できるため、化石燃料のような枯渇リスクがほとんどない。
Q3.再生可能エネルギーの例は?
再生可能エネルギーの例としては、太陽光や風力、水力、地熱、太陽熱などが挙げられる。また、生物由来の有機性資源(※化石燃料は除く)であるバイオマスも、環境にやさしい再生可能エネルギーとして注目されている。
Q4.再生可能エネルギーのデメリットは?
再生可能エネルギーのデメリットには、発電量が不安定になりやすい点や導入コストの高さ、設備の設置スペースの問題がある。また、観光業など別の用途で利用されている地域では、既存事業者との紛争やトラブルに発展するリスクもある。
Q5.化石燃料はいつ枯渇する?
一般的に石油や天然ガスは約50年後、石炭やウランは130年以上後に枯渇すると言われている。ただし、これは確実な予測ではなく、化石燃料には温室効果ガスを排出する問題もあるため、現在では世界中で再生可能エネルギーへの転換が重視されている。
エネルギー転換に対応できる体制づくりを
SDGsやESG投資などの影響で、再生可能エネルギーの導入に向けた取り組みは日々加速している。その波は世界的に広がっているため、化石燃料から完全に脱する日も遠くないかもしれない。
どのような時代になっても対応できるように、自社事業に関わる最新技術はこまめにチェックすることを意識しよう。