矢野経済研究所
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4月24日、日本製鉄の三村明夫名誉会長が議長を務める人口戦略会議は「全国1729自治体の4割、744自治体が消滅の危機にある」との報告書を発表、人口減少問題にあらためて警鐘を鳴らした。同会議は2020年から2050年までの30年間でこどもを生む中心年齢である20~39歳の女性が半数以下となる自治体を “消滅可能性自治体” と定義、最新の “地域別将来人口推計”(国立社会保障・人口問題研究所)をもとに自治体ごとの消滅可能性を算出した。

10年前の2014年、人口戦略会議の副議長でもある増田寛也氏が座長を務めた日本創生会議は「全自治体の5割、896自治体に消滅可能性がある」とした。一方、今回の “更新版” では239自治体の “消滅可能性” が消滅した。自治体存続に向けての行政施策や地域の地道な取り組みに一定の成果があったことが伺われる。しかしながら、福島第一原発事故の影響が残る福島の33自治体をはじめ99自治体が新たに消滅可能性自治体に認定されており、「少子化基調は変わっていない」というのが報告書の本意である。

実際、総人口の減少は予想を越えるスピードで進行している。2023年の年間出生数は75万8631人と8年連続で過去最低を更新、婚姻数も48万9281組と戦後はじめて50万組を割り込んだ(厚生労働省)。国立社会保障・人口問題研究所の昨年4月時点における予測では “2023年の出生数は76万2000人、その後、緩やかに減少しつつも76万人割れは2035年” とされた。そう、わずか1年で「12年早まった」ということだ。すなわち、“消滅可能性自治体の減少” が意味するところは、人口の移動、言い換えれば、限られたパイの奪い合いということになる。

人口減少は内需の縮小に直結する。加えて、既に顕在化しつつある社会の歪みを加速させる。2018年時点で長期放置された空き家は349万戸(住宅・土地統計調査、総務省)、このペースで増えれば2040年には倍増する。買物困難地域の拡大は食品アクセスにおける物理的な困難者を急増させるだろう。公共インフラなどユニバーサルサービスの品質劣化も心配だ。就業、教育、文化における地域格差も深刻化する。要するにすべての国民に保証されるべき “健康で文化的な最低限度の生活”(憲法25条)が脅かされる。人口戦略会議は “2100年に8000万人で人口を定常化させる” ことを提言する。それをどう実現するか、その時、社会はどうあるべきか、一人ひとりが自分事として考えるとともに社会全体として備える必要がある。

今週の“ひらめき”視点 4.21 – 4.25
代表取締役社長 水越 孝