みずほ銀行でシステムトラブルが相次いでおり、金融庁が立ち入り検査を行う方針を固める事態となった。そこで、みずほ銀行の「トラブル史」をまとめてみると、システム障害などが春先に偏っていることが分かった。「魔の春先」に起きたこれまでのトラブルを振り返る。
みずほ銀行の「トラブル史」を振り返る
みずほ銀行は、2002年と2011年に大規模なシステム障害を起こした。その後、再発防止に向けた取り組みを銀行内で進めたが、2021年2月に再びシステムトラブルが発生し、3月になっても繰り返し障害が起きる状況となっている。
2002年4月:新たなスタート早々に大規模システム障害
みずほ銀行は2002年4月に会社分割と合併によって新たなスタートを切ったが、その後の営業初日から大規模なシステム障害が起き、各メディアに「大失態」などと報じられることとなった。
このときのシステム障害では、一部のATMが使えなくなったほか、顧客口座からの二重引き落としや記帳の際の支払い誤記載、水道やガスなどの公共料金の口座振替の遅延などが起きた。最終的にシステム障害が完全に収束するまで、数ヵ月間かかった。
2011年3月:「東日本大震災」発生後に大規模システム障害
東日本大震災後の発生後の2011年3月14日から24日かけても、みずほ銀行では大規模なシステム障害が発生している。この障害では、給与振込などにおける為替送信が遅延したほか、ATMが利用停止になった。
原因は、東日本大震災の複数の義援金口座に大量の振込が集中したことだ。これにより起こったシステム異常に対して膨大な量の手作業が発生し、手動処理による人為的ミスもトラブルの状況を悪化させた。当時、みずほ銀行は「お客さまをはじめ、広く社会の皆さまに大変ご迷惑をおかけいたしましたことを、深くお詫び申しあげます」と謝罪している。
2021年2月:カードがATMに取り込まれる!大規模トラブル再び
その後しばらくは、大規模なトラブルは起きていなかったが、2021年2月28日に再びみずほ銀行でシステム障害が発生した。キャッシュカードや通帳がATMに取り込まれる事象が発生したほか、ATMそのものが使えない状況だった。さらには、インターネットバンキングサービス「みずほダイレクト」で一部の取引が利用できなくなった。
みずほ銀行は公式サイトで「再発防止策の策定・徹底をすることで、役職員一同、信頼回復に努めてまいります」とお詫びした。
2021年3月3日:28拠点29台のATMが停止するというトラブル
再発防止に努めることを強調したみずほ銀行だが、そのあとすぐの3月3日にまた障害が起きた。28拠点29台のATMが停止するというトラブルで、その原因についてみずほ銀行は「ハードの不具合によりシステムセンター間のネットワーク瞬断が発生」したことを挙げている。
ちなみに、2月28日のシステム障害は定期性預金のデータ更新作業に起因するもので、3月3日のシステム障害とは別の原因で発生したことになる。みずほ銀行の体制・システムにさまざまな問題点や脆弱性があることが鮮明になった。
2021年3月7日:定期預金の預け入れができない事態に
さらにみずほ銀行のトラブルは続いた。3月7日には、ATMやインターネットバンキングで定期預金を預け入れることができなくなった。不具合は少なくとも午前8時から午後1時半ごろにかけて発生し、再度みずほ銀行は顧客などに対してお詫びする事態となった。
この日は日曜日だったが、2~3月にかけてシステム障害が続いていたこともあり、みずほ銀行は全国の支店などで社員を待機させていたことも明らかになっている。
2021年3月11日:外貨建て送金に遅れが発生
そして最新のトラブルが、3月11日深夜に発生した外貨建て送金の遅延だ。原因となったのは装置の故障だった。結果としてみずほ銀行は2週間で4回もトラブルを起こしたことになった。
みずほ銀行にとっての「魔の春先」
みずほ銀行のシステムトラブルはなぜか2〜4月の春先に集中している。これは偶然かもしれないが、結果的にみずほ銀行にとっては春先がトラウマ的な季節となってしまっている。
また、システム障害の原因はトラブルごとにさまざまで、みずほ銀行が多くの「爆弾」を抱えていることが見てとれる。もし、これまでの原因が氷山の一角ならば、みずほ銀行が顧客にお詫びしなければならないトラブルがまだまだ続くかもしれない。
金融庁もみずほ銀行の一連のトラブルを重く受け止め、3月中にみずほ銀行に立ち入り検査を行う方針を固めたようだ。場合によっては、2002年と2011年に続いて、みずほ銀行に対して業務改善命令が下される可能性もある。まずは金融庁の立ち入り検査の結果に注目したいところだ。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)