中小企業庁は2023年秋に「中小M&Aガイドライン」を改訂し、M&A支援機関による提携仲介契約時の重要事項説明が義務化されました。また、業界自主規制団体「一般社団法人M&A仲介協会」も国の要請に合わせて自主規制ルールを設け、「契約重要事項説明規程」など4規程を制定しました。

協会幹事会員である日本M&Aセンターは、これまでもお客様に対して、M&Aの流れや提携仲介契約における注意点を丁寧に説明してきました。M&A仲介のリーディングカンパニーとして、今回の重要事項説明の義務化に対応するべく、社内プロジェクトを発足させて、お客様への説明方法を一部変更しています。当社の取り組みについて、M&A仲介協会事務局として自主規制ルールを取りまとめた横井伸法務部長と、当社で全コンサルタント向けの研修を担っている品質本部の齋藤秀一副本部長に聞きました。

重要事項説明資料

なぜ今、中小M&Aで重要事項説明が義務化されたか

中小企業によるM&Aが急速に広がるにつれてトラブル等も増加していることから、中小企業庁は2023年9月、「中小M&Aガイドライン」を改訂して、M&A支援機関に対して重要事項説明の義務化を盛り込みました。M&A業界では中小企業庁に登録するブティック(仲介会社等のM&A支援機関)が700事業者(2024年3月時点)と急増し、実稼働する数百社で過当競争となっています。2021年に当社などが中心となって発足させた自主規制団体よりも、国の問題意識が先行した形と認識しています。そのため自主規制団体でも国の要請に応えるために、契約重要事項説明、倫理、コンプライアンス、広告・営業の4つの自主規制ルールを2023年12月に策定しました。

自主規制ルールの効力を高めるために、協会の会員数増加の誘致活動も進めて、この1年で18社から100社近くまで増やすことができました。協会の会員は大半が中小企業庁登録のM&A支援機関であるため、中小M&Aガイドラインと自主規制ルールの遵守が必須となりました。官民で中小M&Aの推進に取り組み、我々としてはお客様の権利を守り、業界発展のために誠心誠意、対応していくことが求められています。

横井伸弁護士 日本M&Aセンター法務部長の横井伸弁護士

重要事項説明のポイント

M&Aプロセスの入り口に当たる提携仲介契約締結時に、M&A支援機関がお客様に対し重要事項を説明するものです。重説は顧客保護の仕組みで、契約の内容が複雑かつ多岐にわたる場合に、初めての契約事項のリスク等をしっかりと認識してもらうことが目的となります。不動産売買時にも重要事項説明がありますが、不動産という”商品”における重要事項説明とは異なり、M&Aの場合は提携仲介契約に伴う契約重説です。

個人的な話になりますが、入社15年目を迎えたM&A仲介会社の法務担当者として、経営者の譲渡後のリスクをいかにして減らすかに注力してきました。今回、譲渡後のリスクについて説明する内容を自主規制ルールの広告・営業規程12条に盛り込みました。これからもお客様である経営者の権利保護はM&A支援機関にとって生命線となります。