信頼を利益に変えるネットワーキング
(画像=Na/stock.adobe.com)

(本記事は、アイヴァン・マイズナー、マイク・マセドニオ、大野真徳(著者)の『リファーラルマーケティング』=アチーブメント出版、2015年6月30日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

アイヴァン・マイズナー
著:アイヴァン・マイズナー
世界最大級のビジネスリファーラル組織であるBNIの創立者兼CVO(チーフ・ビジョナリー・オフィサー)。1985年にBNIを創立。BNIは、現在、全世界に数千のチャプターを有し、毎年メンバー間で何百万ものリファーラルが交わされ、約1兆円ものビジネスがメンーにもたらされている。アメリカのニュース専門放送局(CNN)から「現代ネットワーキングの父」との異名を取り、「ネットワーキングの権威」とも呼ばれている。

強力な人脈を構築するうえでの3つの段階

利益の段階(Profitability)

成熟した人間関係とは何か、それは、私生活においてもビジネスにおいても、利益の観点から定義することができます。お互いに実りある人間関係になっているか。お互いがその人間関係から満足を得ているか。その人間関係は互恵性によって維持されているか。もし、人間関係の継続を支える相互的な恩恵がないなら、おそらくその関係は長続きしません。

人間関係がこれらの発展段階を経るのに必要な時間には大きなばらつきがあります。どれくらいで互恵的な人間関係が構築されるのか、一概に言うことはできません。1週間かもしれませんし、1か月かもしれませんし、1年かかることもあります。急な案件が生じた際には、クライアントとの人間関係を一晩で認知から信頼まで進展させる必要があるかもしれません。利益(P)の段階についても同じことが言えます。すぐに実現できるかもしれませんし、1年かかるかもしれません。多くはその中間くらいです。必要な時間は、その人との接触頻度やその質によっても違ってきます。なかでも、人間関係を進展させたいというお互いの気持ちに左右されます。

目先のことばかりに気を取られていると、人間関係の十分な発展を妨げることになりかねません。あなたが顧客の側だとしましょう。数カ月間ある業者と断続的に取引をしたとします。その後、その業者が提供してくれたサービス、時間、善意、信頼性といった価値を顧みず、小銭を節約するためにもっと安い業者を探し回る、という場合を考えてください。これで人間関係から恩恵を享受することができるでしょうか? むしろ、人間関係の成熟を妨げているのではないでしょうか? 一方、もしあなたがこの業者に自分が依頼できるすべての仕事を任せたとしたら、両者に恩恵をもたらす条件を見いだすことができるかもしれません。

安さばかりを追求しているようでは、恩恵を享受することはできません。第6章でお話しした狩猟と農耕の対比を思い出してください。恩恵とは、自ら育む必要があるのです。それは農耕と一緒で忍耐を必要とします。庭にリンゴの木を植えたとしましょう。まずは苗木に肥料と水を与え、それが若い木へと成長するのを見守る必要があります。それから、その木が実を結ぶのを待ちます。ところが、3年経ってもまだリンゴが実らなかったとしましょう。あなたはその木を抜き、裏庭に植え替えるかもしれません。ところが、その木が新しい土になじむには、さらに2年の歳月が必要になるのです。その木はまだ実を結ばないでしょう。あなたは、その木をもう一度別のところに移そうとするかもしれません。ご想像のとおり、これでは、たとえ木が枯れてしまうことはなくても、この木がリンゴを実らせることは決して無いでしょう。

このように、リファーラルマーケティングのための人間関係の構築においては、認知と信頼(C)の段階が重要なのです。

さて、相手との関係が利益(P)の段階にあるといえるのは、相手が積極的かつ恒常的にリファーラルを提供してくれていて、かつ自分も同じことをしている場合に限られます。ここから言えることは、利益(P)の段階にある関係とは、たんに過去に仕事をしたことがある、あるいは、リファーラルを提供してくれたことがあるというだけでは不十分だということです。とはいえ、幸いにも利益(P)の段階にある関係がいくつかあれば、十分にビジネスを成功に導くことができます。

ここで重要なのは、これらつの段階が表しているのは、「リファーラルプロセス」であって、「営業プロセス」ではないということです。はじめは混乱するかもしれません。相手が自分から何かを購入した時点で、相手との関係が利益(P)の段階にあると考える人もいるでしょう。しかし、そういうことではありません。ここでお話ししている利益(P)の段階にある人間関係とは、相手があなたに恒常的にリファーラルを提供してくれているような場合に限られるのです。

人間関係を認知、信頼、利益に分類してみましたが、今度はネットワーキングにおける行動様式について、このVCPプロセスを使って考えてみましょう。あなたがどのようなネットワーキング行動様式をとっているかは、交流会のような場で、あなたがほかの参加者とつくっている人間関係によって決まると言えます。

次の例を考えてみましょう。あるネットワーキングイベントに参加したとします。参加者の中に知っている人はいません。あなたは部屋の中を回って、自己紹介をし、名刺を集め始めます。さて、その後1週間も2週間も連絡を取らずに過ぎた場合、出会った人があなたの名字、名前、職業をおぼえていてくれる可能性はどの程度でしょうか? もし、彼らがあなたのことをおぼえていなかったり、あなたが彼らのことを覚えていなかったりするなら、前述のとおり、人間関係は認知以前(pre-v)の段階だといえます。

これは多くの事業者が陥りやすいネットワーキングにおける大きな落とし穴です。事業者が行っているネットワーキングの効果を検証したところ、認知以前と認知のネットワーキングに時間を投資している人が多いことがわかりました。彼らが落とし穴にはまってしまう原因は、時々前に会ったことがある人物に再会するという体験です。この体験が、あたかもネットワーキングがうまくいっているかのような錯覚を生み出してしまうのです。つまり、同じ人物に繰り返し出会うことで、この調子で新しい人と知り合いになっていけばよいと考え、同じ段階のネットワーキングを続けてしまうのです。ところが、実際には認知以前や認知(V)の段階にある人々からリファーラルをもらえる可能性は非常に低いといえます。

あなたなら、人間関係がどの段階にあるとき、自分の評判をかけて他人を紹介する気になるでしょうか。ほとんどの事業者は、「少なくとも信頼(C)の段階にあることが確信できる必要がある」と答えるはずです。相手にリファーラルを提供してくれるよう頼む際にも、このことを念頭に置いておくとよいでしょう。

VCPプロセスで陥りやすい誤りは、相手との関係を過大評価することです。思い出してください。ここでは、「リファーラルプロセス」における人間関係について話をしています。取引の相手になったというだけで、人間関係が信頼や利益(P)の段階にあると誤解してしまう傾向があります。しかし、「営業プロセス」をそのまま「リファーラルプロセス」に置き換えることはできません。信頼(C)の段階になくても、相手から購入することは可能です。しかし、リファーラルのために自分の評判を相手に預けるには、信頼(C)の段階に達していることが必要です。

自分の評判を預けることに比べれば、自分で購入することの方が、はるかにたやすい。
― マイク・マセドニオ

ここでクイズです。あなたがある交流会に参加したとします。新しい人に出会い、挨拶をして回ります。ひと晩で数十枚の名刺を集めました。イベントが終わったあと、あなたは彼らを自分の連絡先データベースに追加します。以降、彼らの元には、あなたからの宣伝メールやニュースレターが届くようになります。この段階は認知でしょうか、信頼でしょうか、それとも利益でしょうか?

答え: どれでもありません! これは「迷惑」ネットワーキングと呼ばれます。彼らは、あなたからのメールで受信箱をいっぱいにしてほしいと頼んだおぼえはありません。忘れないでください。ネットワーキングとは、ほかの人を手助けすることを通じて、自分の売上を増やすことを意味します。努力してほかの人を手助けし、その結果として、人間関係を認知以前から認知へ、そして信頼へ、それから利益へと進めていくことで、あなたのネットワーキングは、より成功に近づいていきます。

最大限の効果を得るためのカギは、認知以前を認知に変えるネットワーキングに使っている時間を、信頼を利益に変えるネットワーキングに投資し直すことです。

アクションアイテム
1. あなたの人脈の中でトップに入る相手をリストアップしましょう。

2. データベースを参照せずに名字、名前、職業を言える人を、認知に分類しましょう。

3. 自分がどのような手助けをした相手なのか明確に分かっている人を信頼に分類しましょう。

4. 恒常的かつ積極的にリファーラルを提供してくれていて、かつ自分も相手に同じことをしている人を、利益に分類しましょう。

5. 人間関係が強い順番に並べ、リストの上から一人ひとりに会って人間関係をVCPプロセスの次のレベルへ進める計画を立てましょう。
リファーラルマーケティング
【著者】アイヴァン・マイズナー、マイク・マセドニオ、大野真徳 【訳】小川維
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【世界の「ビジネス書」著者も絶賛!】
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