「大豆ミートの力で地方創生と地球環境問題の解決に貢献します」ー食の力コーポレーション 福原和輝
食の力コーポレーション 福原和輝 (画像=経済界)

福原鮮魚店を運営する食の力コーポレーション(本社・山形県新庄市)が、大豆を原料とする代替肉を使った総菜を販売して話題を集めている。大量の穀物や水を使用する畜産業は環境への負荷が大きく、SDGsの観点からも多くの課題を抱えている。“食の力で世界を変えていく”を経営理念に掲げて新事業に挑む福原和輝社長に今後の戦略を聞いた。聞き手=清水克久(経済界電子版より転載

食の力コーポレーション社長 福原和輝(ふくはら・かずてる) 1975年生まれ。山形県新庄市出身。桜美林大学卒業後、2000年物語コーポレーションに入社。「焼肉きんぐ1号店」のエリアマネージャーなどを経て07年にっぱんに入社。10年に家業である「海鮮問屋 マルハ福原鮮魚店」に入店。14年食の力(チカラ)コーポレーションを設立して社長に就任。

耕作放棄地に大豆類を栽培して地域課題を解決へ

―― 1945(昭和20)年に祖父が創業した家業を引き継ぎ、一方で代替肉を使った事業に挑戦した理由は何ですか。

福原 2010年に故郷の山形県に戻る前は、物語コーポレーションに勤務して「焼肉きんぐ」第1号店のエリアマネージャーなどをしていました。そして2代目の母親から家業を継ぎ、14年に建屋を改装して鮮魚店、飲食店、仕出しの3部門で運営していました。

 最近はコロナ禍で厳しい経営でしたが、私の中では何か物足りない部分があり、そんな時に出合ったのが大豆ミートです。地方の会社でも、SDGsや地域活性化の観点で経営を考えないと、事業の継続が厳しくなるという話を聞く機会があり、自分なりにいろいろ調べた結果、大豆ミートの事業は収益性と山形県が抱えている地域課題の解決に貢献できると思ったのです。

 山形県の人口は現在106万人で45年には76万人まで減少するという予測があります。総人口に占める農業従事者の比率は1975年の15・1%から2015年には4・8%まで落ち込みました。県内の耕作放棄地は後継者不足でどんどん増え続け、東京ドームの1820個分にあたる8372ヘクタールもあります。この耕作放棄地を使って大豆を生産して、それを原料に代替肉を作れば地域活性化や地方創生に貢献できると考えたことが大豆ミートの事業を始めた原点です。夢は大きく、〝食の力で世界を変えていく〟を経営理念に掲げました。

―― 具体的にはどのような事業を行っていますか。

福原 大豆ミートを作って、ハンバーグなどの総菜にして個人や法人向けに販売しています。将来的には学校給食や老人介護施設向けに販路を広げようと思っています。当社は自前で凍結機を持っていますので、〝世界を変えるお弁当〟という切り口で県内外にお弁当をお届けできると思っています。

 地方創生の観点から、大豆ミートの原料となる豆を県内の耕作放棄地で栽培する予定です。新庄市がある山形県最上地域には10種類以上の豆や伝統野菜があり、その中から大豆ミートに適した材料を収穫します。大豆ミートの製造にはエクストルーダーという大型機械を使うのが普通ですが、独自製造のめどが立ち、工場も廃校になった小学校などを改装して使う予定です。

―― 代替肉は環境対策に適合しているという観点や消費者の健康志向の高まりもあって注目されていますが、同時に競合企業も少なくありません。採算性も含めて、いつ頃、成功する確信を持ったのですか。

福原 今、作っているハンバーグは代替肉製造のDAIZ社(熊本市)から発芽大豆の代替肉を調達、それにうま味として米沢牛の牛骨エキスを加えた「GRANDEミート」です。メニューとしては他にパエリア、キーマカレーなどがあります。販売先は企業や家庭向けにお弁当や総菜として届けるサブスクリプション(定額制)サービスがメーンです。4月からは大手通販会社での取り扱いが始まりましたが、大手を含めたいくつかの競合製品の中からうちが選ばれました。調理方法やレシピが評価されたのだと思います。弱点としては、他社は乾燥した大豆ミートを使っているので原価率ではかないません。また、地域課題の解決と言っているのに外国産の原料をいつまで使うのかという疑問が自分の中にありました。それで県内で大豆を生産するという決心をしたのです。

―― 大豆は外国産を輸入した方がコスト的にはいいですよね。

福原 輸入に頼った場合、いざというときに安定的に調達できるのかが不安です。また世界人口が今の70億人から将来的に100億人を突破すると予測されている中で、食糧が足りなくなれば生産国は自国への供給を優先するはずです。輸入ができても価格は相当上がるでしょう。それならば自国で作った方がいいし、地域の人にとってもプラスになると思います。実際に協力してくれる農家さんが地元にいて、収穫物は全量買い取るので、安心して作っていただけます。

学校給食への提供は、環境問題を考える学習教材になる

「大豆ミートの力で地方創生と地球環境問題の解決に貢献します」ー食の力コーポレーション 福原和輝
あべのハルカス近鉄本店(大阪市)の催事に出店、大豆ミート惣菜を販売した(3月23日から29日)/(画像=経済界)

―― 大豆ミートがおいしくて健康にも良く、価格が手頃であれば人気になると思いますが、どんな営業戦略を立てているのですか。

福原 スタートして1年もたっていませんが、今は応援してくれる個人や会社の方に依頼して販売促進のお手伝いをしていただいております。販売代理店や外部委託の形で東京、神奈川のほか福岡にも広がってきましたが、将来的にはすべての都道府県に販路を広げたいと思います。

 あと期待しているのが学校給食のルートです。ある政令指定都市の市長さんを訪問して提案させていただきました。この市では大豆ミートを一部の食材に混ぜ入れて使っているそうですが、それだけです。私は食べる学習教材として提案しました。まだ構想段階なのですが、午前中の最後の授業時間の後半15分で、肉や穀物などの食糧が抱えている環境問題の現状やSDGsに関する動画を流す。それを見た上で大豆ミートを原料としたハンバーグなどを食べれば、子どもながらにいろいろなことを考えるきっかけになるでしょうし、食べる学習教材になると思います。

―― 食育の観点からもユニークなアイデアですね。大豆ミートが普及する鍵は、おいしさです。いいものであっても、高くてまずければ売れないでしょう。

福原 他社に勝つか負けるかは、結局はレシピです。自社で商品化したガパオライスやキーマカレー、ボロネーゼなどもありますが、給食向けには50グラムから60グラムに成形したハンバーグを凍結して配送し、現場の調理スタッフが焼くなり蒸すなりして提供します。

―― 今後の方針はどうですか。

福原 現状ではパートさんを含めて15人くらいで回していますが、私の理念に共鳴してくれる方が少しずつ増えており、将来的には海外展開も考えています。地域課題の解決も重要なので本社を山形県新庄市から移転するつもりはありません。地域の人たちと事業を作っていきたいと思っています。