経済界
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崖の上から飛び降りながら、飛行機をつくる?

多くのDX担当は悩み続けている。優秀であればあるほど、悩む。これは長年続いた絡まった糸を解くような作業だからだ。何十年も続いた絡まった糸をデジタルの力で魔法のように解決するなんてことは不可能だ。しかも、経営者のコミットも引き出さないといけない。「おいおい、どうしたらいいんだ。」そんなふうに頭を抱えることもあるだろう。しかし、あえて言おう。会社経営というものはそもそもそういうものなのだ。

LinkedInの創業者 リード・ホフマンは「スタートアップとは、崖の上から飛び降りながら、飛行機をつくるようなものだ」という言葉を残している。その言葉を借りると、「DXとは、崖の上から飛び降りながら、飛行機を作り、その飛行機に飛び乗りながら、曲芸を披露し続けるようなものだ。」なんてことが言えるかもしれない。

良い変化とは何か?

本連載の第1回で話したように、DXは1回で終わりなのではなく、常に変化をしていかないといけない。そう考えると、どんな変化をよしとするか、という軸が必要になる。

例えば、変化自体が良いと考えることは出来るだろうか。具体的な例で言うと、「私は社長のご機嫌を取り、営業部長のご機嫌を取り、経理部長のご機嫌も取っております。そういう意味では真に変化し続けております。」という人はDXにおけるトランスフォーメーションの定義に当てはまるのだろうか。いや、それはただの迷走だ。

「ふわふわしてんじゃねーよ」と言いたくなるような判断のブレは、良い変化ではない。では、良い変化とは本質的にどんなことなのだろうか。

答えはやはり顧客そのものである。顧客の潜在的ニーズや顕在ニーズを拾い上げ、丁寧に満足度を向上させることが重要である。では、お客様の意見が対立している場合はどうだろうか。

「佐藤さんというお客様は赤がいいと言っています!加藤さんは青がいいそうです!」

こんなシチュエーションを考えてみよう。その場合、赤を試して、青を試すべきだろうか。上司が言っていることだからと言って、変化するべきことと変化してはいけないことがあるように、お客様が言っていることだからと言って、変化するべきことと変化してはいけないことが明確にあることがわかるだろう。

今はTの時代

私たちがDXを考える時、お客様のことを深く考えなくてはならない。しかし、その際に、お客様が言ったことを全て正解だとみなして、思考停止するのは実は非常に良くない。例えば、改善要望があったとしても、その本質的な課題はなんだったのか、他の方法では解決できないのか、ということに向き合う必要がある。

いきなりプログラムを作らないことがむしろDXには求められる。顧客からの要望があったとして、それをそのまま実装するというよりは、その顧客の要望を分解して、その要望の中で、より多くの顧客の共通の痛みは何か、を見つめる必要があるのだ。そうじゃないと、無駄な機能がいっぱい出来上がり、機能だけはてんこ盛りになる。そして、わかりづらい操作体験になってしまう。シンプルさが失われ、美しさが失われる。

恋愛とかでも「いいやつなんだけどさ、私にはちょっと…」と言われる人がいる。「いいやつ本当はどうでもいいやつ」の法則である。なんでもできます、と言ったところで、個性は埋没してしまい、どんどん弱くなってしまう。これは他社に任せる、ここは自社が絶対に負けない。そんな風に尖る箇所と任せる箇所を明確に分けておく必要がある。

これをBOXの経営者である共同創業者兼会長のアーロン・レヴィは「とにかく製品はカスタマイズをするな。徹底的にシンプルにしろ」と言っている。そして、自社はここはやらないということを明確にするべきだと語っている。

これをTという文字を使ってアーロンは表現する。オープンイノベーションは、Tの横部分で作る。そして、自社サービスはTの縦部分で深く掘るのが大事だと言うのである。さて、自社はやることやらないこと・深く掘るべき顧客の課題を定義できているだろうか。当てずっぽうにデジタルを使い、変化という名の迷走はしていないだろうか。DXには悪い変化は必要ない。「良い変化」を見定めることが何よりも大切なのだ。(経済界電子版より転載

DXなのに変化をするな?意識しておきたい「Tの時代」の方程式
窪田望(くぼた・のぞむ)
株式会社Creator’s NEXT、CEO & Founder。米国NY州生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。15歳の時に初めてプログラミング開発を行い、ユーザージェネレーテッドメディアを構築。スペイン・香港・シンガポール・ルクセンブルクでデジタルマーケティングについての登壇、ハッカソン優勝等実績多数。グッドデザイン賞受賞、KVeCS 2018 Grand Finaleで優勝しニューヨーク招聘、IE-KMD MEDIATECH VENTURE DAY TOKYOで優勝しスペイン招聘される。2019年、2020年には3万7000名の中から日本一のウェブ解析士(Best of Best)として2年連続で選出。東京大学工学系研究科技術経営戦略学専攻グローバル消費インテリジェンス寄附講座/松尾研究室(GCI 2019 Winter)を修了。マサチューセッツ工科大学の「MIT Sloan & MIT CSAIL Artificial Intelligence: Implications for Business Strategy Program」修了。グローバルマーケティングにおけるスケーラビリティーの実装に強みがあり、マーケティングやA/Bテストに関する教科書の執筆や、のべ3000名以上のマーケティング担当者の前での登壇・育成に携わる。
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