社会保険の計算・負担で押さえておきたいポイント

ここまで保険料の計算方法を解説してきたが、他にも押さえておきたいポイントがいくつかある。より理解を深めるために、特に経営者の方は以下のポイントも確認しておこう。

1.ボーナス(賞与)の扱い方は?

賞与にかかる社会保険料については、1,000円未満の端数を切り捨てた「標準賞与額」をもとに、以下の計算式で算出される。

社会保険料=標準賞与額×料率

基本的な計算方法はこれまでと同じだが、ボーナス支給月には社会保険の負担額が増えるたので注意したい。また、社会保険料を支払う義務がある賞与の定義は「労働の対象として支給されるもののうち、年3回以下支給されるもの」だ。

つまり、結婚祝金など労働の対価ではないものや、年4回を超えて支給される金額については、賞与と見なされない。なお、賞与に含まれないものは、標準報酬月額として扱われる。

2.端数の処理方法は?

健康保険・厚生年金保険・介護保険は、企業と従業員が折半するための計算で端数が生じることがある。この端数についても、以下のように処理方法が細かく定められている。

・従業員の負担分は、50銭以下の場合は切り捨て、50銭を超える場合は切り上げで処理される
・会社側の負担分は、合計金額から1円未満の部分を切り捨てる形で処理される

もう少し理解を深めるために、以下の表で詳しく見てみよう。

従業員 厚生年金保険料 保険料の半額 従業員の負担分 企業側の負担分
A 18,000.30円 9,000.15円 9,000円
B 16,001.00円 8,000.50円 8,000円
C 19,001.98円 9,500.89円 9,501円
合計金額 53,003.28円 26,501円 26,502円
納入告知額 53,003円

従業員の負担分は、保険料の半額から端数を処理(50銭未満は切り捨て、50銭超えは切り上げ)して計算される。企業側の負担分は、厚生年金保険料の合計金額から1円未満の部分を切り捨て(納入告知額)、「納入告知額-従業員の負担分の合計金額」で計算される。

基本的には切り捨てる処理が多いものの、すべての端数を切り捨てるわけではないことを覚えておこう。

3.休職期間はどう扱う?

従業員が休職をした場合も、基本的に社会保険の支払い義務は課せられる。社会保険料は「標準報酬月額」をベースに算出されるため、仮に従業員の給料が減ったとしても、標準報酬月額に変化がなければ負担額も休職前と変わらない。

ただし、産休や育休によって従業員が休職をする場合は、「産前産後休業保険料免除制度」の適用を受けられる。この制度は、「産前42日・産後65日」のうち休職した期間について、企業側・従業員側ともに健康保険と厚生年金保険の保険料が免除されるものだ。

日本年金機構

この制度を利用するには、従業員からの申し出を受けた企業側が、「産前産後休業取得者申出書」を日本年金機構へ提出する必要がある。事業主本人にも適用される制度なので、産休・育休の予定がある方は概要を確認しておこう。

4.従業員が副業をしていた場合の負担額は?雇用保険や労災保険はどうなる?

従業員が副業をしていた場合、本人が支払う社会保険料はもちろん増加する。では、本業の企業が支払う保険料も、同じように変動してしまうのだろうか?
結論から言えば、答えはノーだ。従業員が副業をする場合は、以下のような流れで社会保険料が支払われる。

【1】従業員が「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を、本業の会社を管轄する年金事務所に提出する。
【2】年金事務所が社会保険の合計金額を計算し、その金額を本業・副業の会社の報酬月額で案分したうえで、それぞれの保険料を決定する。
【3】管轄の年金事務所から、それぞれの会社に通知が届く。
【4】毎月の給料から、それぞれの会社で社会保険料が天引きされる。

つまり、社会保険料は勤務先ごとに計算されるため、従業員が副業をしていても、企業側の負担額が増えることはない。

また、雇用保険は本業の会社でのみ加入するが、労災保険は勤務先ごとに加入できることも覚えておきたいポイントだ。従業員が各勤務先で労災保険に加入していれば、どの勤務先で労災が発生しても給付を受けられる。

5.雇用形態は影響する?

雇用形態がアルバイトやパート、派遣社員、契約社員であっても、社会保険料の計算方法は変わらない。社会保険の加入条件を満たしている従業員は、雇用形態に関わらず同じ方法で社会保険料が計算されている。

正社員以外の雇用形態でも、給与が高いほど社会保険料も増えることを理解しておこう。

社会保険の仕組みやポイントを理解し、慎重に計算をしよう

社会保険料は標準月額報酬をもとに計算されるが、保険ごとに計算方法が少し異なる。業種によっても料率が変わるため、具体的な金額を出すには細かい計算が必要だ。もし概算金額を把握したいなら、「報酬月額×16%(介護保険を含む場合)」と計算すればいい。この計算式は、覚えておくと便利だ。

一方、1円単位で金額を把握しい場合には、賞与や休職期間の扱いにも注意しなければならない。ここで解説した内容を参考にしながら、慎重に保険料を計算してほしい。

文・THE OWNER編集部