生徒に愛される女性校長を抜擢〝お客さま視点〟で生まれ変わる 学校法人明泉学園 百瀬義貴
明泉学園 百瀬義貴 (画像=経済界)

百瀬義貴理事長は学園創設者である故百瀬泰男の孫で、昨年8月、3代目の理事長に就任した。少子化で厳しい経営環境に直面している私学経営。幼稚園・保育園から高等学校、短期大学までを擁する明泉学園では百瀬理事長を先頭に改革に着手しているが、今回は鶴川高等学校の取り組みに焦点をあてた。(雑誌『経済界』2022年9月号より)

キリスト教の信仰を基盤にした建学の精神が脈々と

東京都町田市にある鶴川高等学校は長年、地域に親しまれてきた女子高校で、現在は497人(5月1日現在)が在籍している。しかし少子化の影響は避けられず入学者数は年々減少し、百瀬理事長は常務理事だった時代から危機感を募らせており、今回、選ばれる学校づくりへの改革に着手した。

改革の初年度で、まずは校長以下の副校長、教頭を一新、新三役は全員女性教員を抜擢した。

「これまではベテランの男性教員が執行部を統括しており、それに倣い私が校長を兼務する選択肢もあったのですが、それは避けたいと思いました。適任者の中から女性を起用したのは、『鶴川高校は変わりますよ』という対外的なメッセージにもなります。新校長はもともと学年主任を経験するなど長く務めてきたベテランで、本校をよく知っており、生徒想いで生徒に愛情を注ぎ、生徒さんからも愛されている人物です。この人なら適任だと思っています」

生徒はお客さまであり、顧客満足度の高い人がトップになるべきとの視点で選ばれたのが現執行部だ。生徒からの評判も上々で、校内の風通しも良くなり活気も出てきたという。

自己肯定感を授けたい希望制ながら「0時間目」が好調

明泉学園は、建学の精神の基幹となした「愛の教育」をもって、女性の活躍支援を掲げてきたが、今回鶴川高校においては教育改革の一環として通常授業の前の時間を活用する「0時間目」を作った。これは学び直しのカリキュラムで「義務教育で積み残してきた学びを、もう一度立ち返ることで苦手意識を取り除いてあげたい」という気持ちから生まれた。「0時間目」とは、通常の1時間目の前に設置された特別授業だ。あえて1時間目を10時開始に繰り下げて、9時開始の「0時間目」を設けた。希望制なので、当初は少人数になるとみていたが、予想以上に参加者が多かったという。

カリキュラムは、事前アンケートで希望の多かった英語と数学で実施。少人数制にし、一人一人の「わかった」「できた」を大切にしている。

「蓋を開けてみれば、英数のどちらか、または両教科を履修したいという生徒が、1年生の3分の2もいました」

この0時間目も、1年生の単位になり、旧カリキュラムの2、3年生は漢字検定や英語検定、パソコン検定など資格取得の時間に充てられる。

「1時間目から来てもいいのにこれだけ希望者が集まったのは、もともと学びたい生徒さんが多かったからでしょう。本校では、分からないことは分からないと素直に言える雰囲気づくりと楽しい授業を心掛けています」

新教育課程に変わる今年度に向け、昨年度にさまざまな検討を行った。その中で、いろいろなことを学んでほしいと生徒を想うがゆえに、単位修得の科目数が増えてしまうという課題があったという。

「しかし、科目の多さから授業に付いていけない生徒も出てきました。生徒への負担が大きいことは事実です。科目数を減らし、1科目、1科目の理解を深めさせ、試験で良い点数を取ることができれば、自信につながる。生徒の自己肯定感を得られる方が大事なのではないか、という道筋が見えました。今年度は苦手を克服するための『0時間目』をスタートしたので、今後はカリキュラムの見直しをさらに進め、生徒さんの満足度を上げられるように、現場の先生方と議論を重ねていきます」

同校は、来年度に学校名を「フェリシア高等学校」へ変更し、新体育館が完成する。さらに、30年の歴史があり、今もなお人気の高い制服デザインも一新するという。

「できる限りご家庭の負担が減るように現在の制服よりも価格を安価に設定する予定です。制服はリボンかネクタイを選ぶことができ、また、スラックスかスカートも選択可能に。ファッション性の向上やジェンダー・フリーの流れを受けての変更です」

また、普通科のコースを「総合」と「保育」の2つに分けて「生徒が将来の夢を実現しやすい体制」を整えた。両コースとも、併設校である、フェリシアこども短期大学の授業を一部先取りで受講することができ、条件を満たせば短大の単位を修得できる。今年4月開始の保育コースには66人が入学。順調な滑り出しだ。

改革はまだある。

「教職員のモチベーション向上を強化するためにも新しい人事評価制度も導入しています」

生徒をお客さまと捉えて顧客満足度を高める視点を持っている百瀬理事長は「中身の伴う改革で評判を得たいですね」と語る。

生徒に愛される女性校長を抜擢〝お客さま視点〟で生まれ変わる 学校法人明泉学園 百瀬義貴
明泉学園 百瀬義貴 (画像=経済界)
法人概要
創立 1960年1月
本部 東京都町田市
職員数 216人(2022年5月現在)
事業内容 フェリシアこども短期大学、鶴川高等学校、フェリシア幼稚園、鶴川フェリシア保育園、成瀬フェリシア保育園などを運営
https://www.meisen.ac.jp/